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2023年5月30日火曜日

『街とその不確かな壁』と『ニーベルングの指輪』と『ユリシーズ』(2)

 
 NHK・eテレで「クラシックTV」を毎週見ている。

クラッシック音楽のビギナーに贈る音楽教養エンターテインメント番組。ピアニストの清塚信也と歌手・モデルの鈴木愛理が、ゲストとともに幅広い音楽の魅力を「クラシック音楽の視点」でひもとく。とされている。

さる事情があって見始めたが、いまではすっかり清塚信也と鈴木愛理、あるいは番組スタッフたちの術中にはまってしまっている。

先日のテーマは「リヒャルト・ワ-グナーの魅力」だった。ゲストは音楽プロデューサーの蔦谷好位置と指揮者の沼尻竜典。ゲストの選定も絶妙で、彼らの立ち位置も好位置である。『ニーベルングの指輪』の解説が竜典というのは偶然にしてはできすぎている。

リヒャルト・ワグナーを一言でいうと、アガスペらしい。アガペーとスペクタクルの略。強烈な個性のワグナー作品の全部を30分番組に詰め込むのは無理がある。そのため、『トリスタンとイゾルデ』と『ニーベルングの指輪』の触りだけ紹介。

『ニーベルングの指輪』は、断片的に聞いたことがあるだろう。しかし全部聴いたという人はそう多くなかろう。もちろん筆者もない。なにせ、普通に演奏すると全部で15時間、4日間を要する大作である。

『ラインの黄金』、『ワルキューレ』、『ジークフリート』、『神々の黄昏』からなる。ラインの黄金でつくられた、世界を支配できる(しかし、手にした者を不幸にする)指輪の争奪戦。争奪戦に参戦するのは神、巨人、英雄、竜たち。つまり、要約すれば、映画『ロード・オブ・リング』と同じ話である。

英雄ジークフリートは、折れた魔剣を鍛え直して竜(大蛇)を退治し、指輪を手に入れる。番組で、その竜退治の場面が紹介された。15時間のなかでそこだけ切り取るのだから、有名な場面なのだろう。ジークフリートの決めゼリフはこれ。

 ノートゥングがお前の心臓にささったぞ!

ノートゥングはもちろん魔剣の名。ワーグナーの楽劇の素晴らしさはおくとして、この場面にはちょっと感動してしまった。わが心臓にもささったぞ!

なぜなら、『ユリシーズ』の15章「キルケ」のなかに、この場面を下敷きにしたくだりがあるから。ただし、魔剣を振るうのはスティーブンである。

スティーブンは、『ユリシーズ』の3人の主役の1人。ジョイスの分身といわれる。

当時、アイルランド・ダブリンは、大英帝国の植民地であり、かつ、ローマカトリック教会の精神的奴隷であった。スティーブンは、小説家となることにより、あるいは、ヨーロッパ大陸に脱出することにより、そのような状況から状況から脱出し、自由を獲得しようとしている。

スティーブンは、臨終の床で、カトリックを信奉する母親から、祈りを唱えるよう迫られるが、これを断ってしまう。それが心の傷になっている。

スティーブンが祈りを拒んだのは、カトリックの信仰や体制が、自分やダブリンの人々の精神的自由を支配し、麻痺させていると考えていたから。彼にとって、カトリックの信仰を強要する母は、カトリック体制の手先でもある。彼は母を愛してもいるから、いわば義理と人情の板挟みである。

ベラの娼家で、スチーブンもいろんな幻覚を見る。最後のほうで、亡き母親があらわれる。そして、やはりここでも彼に信仰を強要しようとする。

 (ゆっくり両手をよじり合わせ、絶望の呻きをあげて。)
 おお、イエスの聖心よ、この子を憐れみたまえ!この子を地獄から救いたまえ、おお、神の聖心よ!

これに対し、スティーブンは両手でトネリコのステッキをふりかざし、シャンデリアを打ち砕いて、叫ぶ。

《ノートゥングだ!》

スティーブンは、カトリックや母の束縛から自由をめざすため、魔剣ノートゥングを振るったのである。尾崎豊が自由をめざすため、盗んだバイクで走り出したようなものだ。

ワーグナーは、ライトモチーフを創案した。キャラクターごとのテーマ音楽のようなものだ。キャラクターが登場する前でも、音楽が流れればその登場が予告される。いまやRPGなどで、われわれには馴染み深い。

http://konton.cside.com/midi/ring.html

剣にもライトモチーフがある(ジークフリート6)。それは音階が上昇していくものだ。先の指揮者の沼尻竜典によれば、剣は「あれ」の象徴でもあるそうだ(eテレゆえか、詳しい説明はない。)。「あれ」って、あれのことだろうか?気になる。

ライトモチーフは、繰り返し変奏され、『ラインの黄金』、『ワルキューレ』、『ジークフリート』、『神々の黄昏』の各話を結んでいる(らしい)。もっと音楽の素養と忍耐力があれば、21,103円でDVDを購入したいところだ。われこそは音楽の素養と忍耐力ありというかたは、どうぞ存分に楽しんでくだされ。

https://www.amazon.co.jp/%E3%83%8B%E3%83%BC%E3%83%99%E3%83%AB%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%81%AE%E6%8C%87%E7%92%B0-%E6%A5%BD%E5%8A%87-DVD-%E3%83%A2%E3%83%AA%E3%82%B9-%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%83%BC%E3%83%A0%E3%82%BA/dp/B00005FHG2/ref=sr_1_7?keywords=%E3%83%8B%E3%83%BC%E3%83%99%E3%83%AB%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%81%AE%E6%8C%87%E7%92%B0&qid=1685490982&sr=8-7

2013年2月19日火曜日

夢のような幸福





三浦しをんさんの
『夢のような幸福』(新潮社)。

読了してしまいました。
寂しい。

残るエッセイも
あとわずか。

最新刊からさかのぼって読んでいっているので
順に読んだ人にとっては逆走。

わかりにくくて
すみません。


あいかわらずすごい生活で
読んでいて,手に汗にぎったり,電車のなかで吹きだしたり。

映画や漫画への没頭,熱愛ぶりも並大抵ではないので
すべての作品がとても魅力的に思えます。


『ロード・オブ・ザ・リング』はもちろん観ていましたが
こんかい,三浦さんにあおられてDVDを観てしまいました。

むろんヴィゴ・モーテンセンの
アラゴルンを中心に。

たしかに“ヴィゴさま”からながめる
『ロード・オブ・ザ・リング』はまたちがう世界。

「男ばかりの旅の仲間」
がいやに気になりました。


そんなある日(ことしのバレンタインデーのころ)
うちの秘書さんが意味深な顔をしてちかよってきました。

すわチョコレートかとおもいきや
差しだされたのは,なんとBLマンガ。

ガク。
ムク。

(ガクはチョコレートではなかったので
ムクはBL世界への手がかりをつかんだので)

ボクがブログであまりにBLの世界に興味を示したので
差しいれてくれたわけです。

ありがとう~。


さっそく
読んでみました。

なんやこれ?
つまら~ん。

ボクはまったく
その世界の趣味がないことが検証されました。

安心したような
残念なような。

おもえば
幸福な夢をみていただけなのでした。

三浦さんがあまりにその世界を
魅力的に紹介するものだから。

おしまい。