このところ、日曜に一週間分の録画予約をして、すきま時間に録り溜めた番組を見ている。油断すると、あっという間に溜まってしまい、録画容量をオーバーしてしまう。結果、修行のようにしてすきま時間に見て消化していっている感じだ。毎日、ネットフリックスで『The Closer』をシーズン7まで見なければならないので、そのプレッシャーは半端ない。
そうしたなか、NHKのBSで放送されたものと思うが、録画した映画『パーフェクトデイズ』を見た。役所広司が平山という中年のトイレ清掃員をやっている。すきま時間に斜め視聴をしていると、なにをいっているか全く分からないような作品だ。にもかかわらず、この3日間で3回見た。
以下ネタバレ。
平山の日常生活を淡々と描いていく。平山はスカイツリーの近くのぼろ屋に住んでいる。視聴者の感情を揺さぶる殺人事件も起きなければ、大災害も起きない。朝起きて、歯をみがいて、自販機の飲み物を飲み、車を運転して仕事にでかけ、トイレを清掃する。小学生の下手な日記のようである。
平山という名前には意味がある。『東京物語』や『秋刀魚の味』で笠智衆が演じた登場人物をはじめ、小津安二郎監督の作品に繰り返し使われる名前である。文字どおり、富士山でもなければ、槍ヶ岳でもない。
そうした日常のなか、仕事の同僚(後輩)、その彼女、その友だち(子ども)、トイレの利用者、ホームレス、中古カセットテープ屋の主人、古本屋の主人、仕事の派遣主、新しい同僚、姪、その母(妹)、居酒屋のママ、その客、その元夫らがあらわれては、それにともなう交流があるだけである。
さらに、仕事へ向かう車のなかで(カセットテープで)流す音楽、読書をしている最中の本、神社境内の樹、そのひこばえ、飲食街、都市風景、隅田川、様々な影などとも交歓している。
平山は無口である。自分の過去や心情を一切語らない。朝の出勤風景や公衆トイレ掃除のていねいさにおいて、謹直な性格を表現する。カセットテープ音楽や読書本のチョイス、人々と交流する態度、交流する人々の態度、撮影する樹影や夢が、かれの人生の一端、過去、それへ向ける複雑な思いを垣間見せる。
あとは表情だけ。言葉は話さないが話題や状況に対する寂しい視線だけで感情を表現する。とりわけエンディングの長いショット。車を運転する平山の表情だけ。それだけで人生に対する満足と後悔を表現している。
かくて殺人事件や大災害のなかでの人間の崇高な行為などは一切描かれないが、平山の『PERFECT DAYS』が腹に落ち、胸にひろがったのである。
0 件のコメント:
コメントを投稿