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2023年9月18日月曜日

ぬいぐるみの運命

 


 顧問先の社長からたくさんの「ぬいぐるみ」をいただいた。クレーンゲームが好きで、あちこちのゲームセンターを荒らしているらしい(笑)。

あまりにもたいさんいただいたので、うちの孫だけでなく、秘書さんたちともわけさせていただいた。

秘書さんの子どもがぬいぐるみを抱きしめて寝ている画像がラインに送られてきた。うちの孫もぬいぐるみを抱きしめて寝ている写真があったので、それを送り返した。

すると、それに対する秘書さんのコメントは「ぬいぐるみの運命」だった。これはちょっと意外だった。自分ならまず思いつかないコメントである。秘書さんはなぜ、このようなコメントを書いたのだろうか。

そのような見解に触れたことはないのであるが、ぬいぐるみは自立への一里塚、自立への杖だと思う。生まれてからしばらく子どもは母親にべったりと依存している。母子一体。

やがて、ぬいぐるみが大好きに。いつも引き連れてまわるようになり、夜は一緒に抱きしめて寝るようになる。そしてそのうちぬいぐるみがなくても独り寝ができるようになる。このような発達段階をなしているのではなかろうか。

弁護士をしていると、自立に失敗し、なにかに依存している方々に接する機会が多い。覚醒剤や大麻等の違法薬物、パチンコ等のギャンブル、アルコール・飲酒。いずれもやっかいな対象に依存されている。

子ども時代をやり直せるのなら、彼ら彼女らにぬいぐるみを差し上げたい。そうして、うまく自立への道を歩んでほしいと願う。

話変わって、どこかで書いた気がするが、映画『ニュー・シネマ・パラダイス』。中年の映画監督が、映画に魅せられた少年時代の経験と青春時代の恋愛を回想するストーリー。少年のワクワクドキドキ感がすばらしい。各所にちりばめられた名言もよいし、背景を流れる音楽もすばらしい。

もちろん、映画の主役は、映画監督である。冒頭からその監督が出てくるし、少年時代も、青年時代もその監督の若いころである。映画を見る者、その監督に感情移入するよう作られている。

ところがである。息子さんがいらっしゃる別の秘書さんとこの映画のことを話し合ったとき。彼女は、監督の母親に感情移入してしまうという。

なるほど。たとえ、この映画を作った人が映画監督を主人公とし、彼に感情移入するように作ったとしても、観るほうの立場の磁力が強ければ、そちらに引き寄せられて感情移入してしまうということも十分にありうるわけだ。

さて、ぬいぐるみの話。子どもがぬいぐるみを抱きしめて寝ているところを見れば、ふつう幸せな夢でも見ているのだろうなと子どもの立場になって考えるものだと思っていた。

しかし日々子育てに追われる母親からすれば、ぬいぐるみのほうに感情移入してしまうこともあるのかもしれない。それが「ぬいぐるみの運命」。

2021年1月23日土曜日

薬物事犯の控訴審弁護活動


覚醒剤取締法違反の刑事事件で、控訴審の国選弁護人となり活動しています。


覚醒剤取締法違反の検挙人員の推移は、近年おおむね横ばいから減少傾向であり、令和元年には8730人と、昭和50年以来、44年ぶりに1万人を下回りました。

他方、覚醒剤取締法違反の成人検挙人員のうち、同一罪名再犯者率(同法違反の成人検挙人員に占める同一罪名再犯者の人員の比率)は、近年上昇傾向にあり、令和元年は、66.9%となりました(令和2年版犯罪白書)。

薬物への依存から、多くのケースで再犯にいたり、抜け出せなくなっていることがうかがわれます。


刑事司法における薬物事犯の処遇は、同種前科・前歴によって量刑の相場がおおむね決まっているといわれます。行為責任主義の観点から、量刑は、行為・結果・動機から量刑の大枠が決まるといわれますが、薬物事犯においては薬物の使用方法という行為類型にあまり大きな意味はなく、自己使用の場合は被害者もいないため結果も重視されません。そのため、裁判官も同種前科・前歴をみて、おおむね過去の量刑傾向にしたがって刑を決めることが多く、量刑不当となるケースは多くありません。


また、民事裁判とは異なり、刑事裁判における控訴審は、事後審といわれ、事件の審理をやり直すのではなく、第1審判決の当否を事後的に審査することが主になります。第1審の裁判官の判断が間違っていた、不合理だったといえなければならず、破棄判決のハードルは高くなります。実際に、令和元年度の覚醒剤取締法違反について被告人側からの控訴申立件数は1220件ありましたが、第1審判決が破棄されたのはわずか47件でした(令和元年度司法統計)。


さて、担当することとなった事件は、量刑不当を理由とする被告人本人による控訴事件。上述のような厳しい見通しを伝えつつ、「やれるだけやってみましょう」と8ページにわたる控訴趣意書を書き上げました。控訴趣意書とともに、薬物依存症の民間リハビリテーション施設であるダルクの連絡先一覧などが記載された書籍を被告人本人に差入れ。後日、被告人から「一生懸命やって下さった事は十分伝わってきました。」「社会復帰後、自分が薬物依存症である事をしっかり認識し、しっかり生き直していきます。」とお手紙をいただきました。


判決をとることだけが弁護人の役割ではないと実感しました。被告人が更生して薬物依存と向き合い、自分の人生を生き直してくれることを願ってやみません。


富永