2026年2月26日木曜日

『山姥(上・下)』(坂東眞砂子著・新潮文庫)(7)

 板東版『山姥』には山姥、旅芸人、小作人、遊女のほか、瞽女(ごぜ。江戸時代から昭和初期にかけて、盲目の女性たちが集団で各地を旅し、三味線を弾きながら歌を披露した旅芸人)、鉱夫、山師、山の民(渡り又鬼・マタギ)など社会の底辺に生きる人々の逃げ場のない苦しみと悲しみが描かれている。

 かれらの多くは、明治になったとはいえ、出自と借金でがんじがらめにされ、他の人生を選びようもない。小説で述べられているとおり、別の人生を選びとりようもなく、ただそこにある逃げ場のない状況へ押し込められていくだけである。

 現代日本で「幸せを感じる」と回答した人の割合は、概ね6割前後で、世界平均の7割と比較して低い傾向にある。世代が上がるにつれ減少傾向にあり、主な理由として経済状況への不満や、自己肯定感の低さが挙げられている。

 置かれた状況はさまざまなので、一概には言えないのであるが(言えば、上から目線といわれかねないが)、経済状況への不満や自己肯定感の低さから幸せを感じられない人には、ぜひとも板東版『山姥』を読むことをお奨めしたい。

 あと目をひいたのは巻末の参考文献である。雪国・越後魚沼の暮らし、瞽女、銀山・鉱山、村芝居、歌舞伎、遊女、明治の劇団のほか、マタギ関係が並んでいる。

 『狩猟伝承』『山に暮らす』『山の神』のほか、『マタギー森と狩人の記録』『マタギ』『秋田マタギ聞書』『阿仁銀山と友子』『阿仁鉱山跡探訪』。

 マタギがなにかについては小説中に紹介がある。

 「渡り又鬼だら、北のほうからずうっと山伝いに獣を追いかけてくる猟師だ。捕った獣の皮や薬を里に降りてぎて売りながら、旅しているがんだ。・・」

 北のほうがどこかは記載がないが、参考文献からすれば、阿仁のマタギだろう。阿仁は昨年10月に登った秋田・森吉山の南麓である。

 新潟県魚沼から秋田県阿仁マタギまで鉄道を利用しても長時間を要する(新幹線利用で7~8時間、在来線利用だと13時間かかるようだ。)。山伝いに旅をしたとすれば、気が遠くなるような時間を要したことだろう。でもなぜか、うらやましい気もする。

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