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2023年3月22日水曜日

岩沼@おくのほそ道

 



 岩沼は、阿武隈山地の北側に位置する。阿武隈川が福島から北にむけて流れてきて、阿武隈山地の北で突如向きを変え、南にむけて流れ太平洋にそそぐ。そのため、岩沼は道が2つに分かれる分岐点となっている。

1枚目の写真は、岩沼駅の高架橋から南をのぞんだもの。中央の山影が阿武隈山地。阿武隈川は右奥から流れてきて、山地の迂回し、左奥へ流れている。

写真右奥へむかって東北本線・中通り、左奥へむかって常磐線・浜通りである。中通りのむこうに福島、浜通りのむこうに福島第一原発がある。

岩沼駅前を15分ほど南下すると、竹駒神社がある(2枚目の写真)。日本三大稲荷。アニメ「バクテン!!」の聖地らしい。知らなかった。


神社の北に古歌で有名な武隈の松がある。根もとから幹が二つに分かれているので、またの名を二木の松という(3枚目の写真)。

その珍しい形状から古来、歌枕になっている。

 武隈の松は二木(にき)をみやこ人いかがと問はばみきと答へむ 橘季道

「にき」と「みき(見き)」のシャレである。

江戸をでるとき、芭蕉の弟子の挙白が餞別の句を詠んだ(かれはこの地方の出身だといわれている)。

 武隈の松見せ申せ遅桜

これらを踏まえて芭蕉が詠んだ句はこれ。

 桜より松は二木を三月越し

桜と松、二木と三月のとりあわせである。いまなら、地震・津波・原発事故を喚起されるところである。

2021年6月7日月曜日

武隈の松ー千歳の形

(浅香山の松)
 


きのう述べたとおり、笠島に先回りしたかたちになっているので、きょうは国道4号線を戻って岩沼へ。

岩沼は阿武隈川が仙台湾にそそぐ河口の北にあります。阿武隈山地の北麓で、福島県の中通りと浜通りの合流点です。仙台空港が近く、東北本線と常磐線も合流しています。

司法修習生時代、日暮里(湯島までは千代田線経由で)から千葉県の松戸・馬橋まで常磐線を利用して通勤していました。常磐線は柏くらいまでのイメージだったので、岩沼まで延びてきていたことに感慨を覚えます。

そこに武隈の松という有名な歌枕があります。おくのほそ道には、有名な松や松の名所がたくさん登場します。武隈の松、末の松山、松島、姉歯の松。むかしは1000年生きるという長寿にあやかりたいと人気があったんですね。

武隈の松の特徴は、「二木(ふたき)に分かれて」いることです。東北本線と常磐線が合流するところで、松は逆に分かれているんですねぇ。

そのため古来、松の特徴をシャレた歌が詠まれてきました。

まずは橘季通。

 武隈の松は二木を都人 いかがと問はば見きと答へむ

二木→見き(三木)というシャレです。ダジャレじゃありませんよ。

つぎに能因法師。みちの國にふたたび下りて後のたびたけぐまの松も侍りざりければよみ侍りける。

 武隈の松はこのたび跡もなし 千歳をへてや我は来つらむ

陸奥の旅は2回目だけれども、前回とちがって武隈の松は跡もなくなってしまっているなぁ。あれから1000年も経っちゃったかなぁ。

武隈の松の跡がなかったのは、往昔、陸奥守にて下りし人(藤原孝義)、この木を伐りて名取川の橋杭にせられたることなどあればにや。

名取川はつぎの宮城野(仙台)との境を流れています。芭蕉が笠島の段と岩沼の段をひっくり返した理由の一つはここにありそうです。

能因法師は奥州に2度も旅をした歌人ですから、西行や芭蕉の大先輩です。おくのほそ道でも、ここのほか、すでに白河の関で登場していますし、のちほど象潟でも登場します。

当然、西行も歌を詠んでいます。

 枯れにける松なき宿の武隈は 見きといひても効なからまし

こうして武隈の松は代々、伐られたり、枯れたりして、いけば必ず出会えるというものではなかったようです。でもあらたに植えられたりして、新しい代の松に出会えることもあったよう。西行の訪問から500年後、芭蕉のときはどうだったのでしょうか。

ありました!そのことに芭蕉は大感激しています。

 武隈の松にこそ目さむる心地はすれ。根は土際より二木に分かれて、昔の姿失はずと知らる。・・・代々、あるは伐り、あるいは植ゑ継ぎなどせしと聞くに、今はた千歳の形整ひて、めでたき松の気色になんはべりし。

昔の姿失はずとか、今はた千歳の形整ひとか、諸事流行し滅していくなか、不易でありつづけることに感激しておられます。

そして江戸を立つ際、弟子の挙白が餞別にくれた句。

 武隈の松見せ申せ遅桜

これに答えて芭蕉が詠んだ句。

 桜より松は二木を三月越し

挙白が詠んだ桜の季節から3月経ってしまったけど、ようやくだ。松→待つ、二木→三月、三月→見つなどシャレておられます。