ラベル 武士の家計簿 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 武士の家計簿 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2011年1月19日水曜日

 「武士の家計簿」と教育


 きょうは「大寒」
 節季がこれほどぴったりと感じられるのも稀な今日このごろ。

 「武士の家計簿」で、堺雅人さんが債務整理・家計改革のあと
 取り組んだのが子どもの教育でした。  

 ソロバンに忠実な生き方から
 子どもにたいしてもソロバンという技能を愚直に教え込みます。

 買い物の際に硬貨を一枚落としたことから帳尻があわなければ
 雨のなかであっても硬貨を探させます。

 硬貨を一枚拾ってきたときも、これを家計に入れることを
 許さず拾った場所(川)へ捨てに行かせます。

 ここまで徹底すればもう単なる技能訓練、職業訓練ではなく
 生き方を含み、求道、修行、一子相伝の世界です。

 千尋の谷底にわが子をつき落とす獅子のごとし
 この場面では、ここまで厳しくする意味があるのか?との疑問も。

 でも時代が激動化していくなかで、「意味」が浮上してきます
 「オウエンのために祈りを」(J・アービング)のように。

 父と子のあいだには激しい葛藤と反発を生じ、維新の激動のなか
 子は父の意に反し、一時はソロバンを捨て武に生きようとします。

 ところが親幕の加賀藩は、幕府軍が鳥羽・伏見の戦いに敗北したのち
 「かが逃げた。」(加賀と蚊がを掛けた駄洒落)と揶揄される始末
 武に生きる試みは挫折してしまいました。

 維新の変革期に武に忠実に生き、散っていったのは「新撰組」の面々
 かつての堺さんは大河で山南敬助を演じ、最後は切腹してしまいました。

 こうして時代は武ではなく「数字に明るい人」を求めていました。
 堺さんの子はこの時代の要請にぴったりあった技能を持っていたのです。

 数字に明るい堺さんの子を取り立てたのは大村益次郎
 長州の村医者から倒幕司令官になった「花神」です。
 彼もまた自己のもつ技能について頑固さを最後まで貫く人でした。

 変革期を生き抜くには、他にぬきん出る特殊技能や
 時勢に流されない強い信念が必要である、そういうことなのでしょう。

 堺さんのソロバン教育は時代の追い風と「花神」の眼力のたすけもあり
 りっぱな花を咲かせました。
 

2011年1月18日火曜日

 「武士の家計簿」と家計改革


 享保・天明・天保と大飢饉があいつぎ
 江戸時代末期、幕府・加賀藩の財政も火の車。

 火車は、仏教用語で地獄の責め苦のひとつ
 転じて、財政や家計が火であぶられるように苦しい状態。

 宮部みゆきさんの小説に「火車」とあったとおり
 多額の負債で身動きがとれない状態でもあります。
 
 世間がこのような状況のなか
 加賀藩の下級武士である堺雅人さんの家庭だけ安泰
 ということはありえません。

 やはり債務超過、破綻(支払不能)寸前の状態です。

 破産法は、支払不能または債務超過にある債務者の財産等の
 清算に関する手続を定めています(1条)。

 堺さんの家も債務整理をおこない、収支を均衡させて
 借金にたよらない家計への財政改革を断行する必要がありました。

 まずは、債務を整理するための資金を捻出するため
 価値ある家具・家宝類をすべて売却して整理資金をつくることに。
 
 とはいえ、これまで慣れ親しんだ贅沢な暮らしを
 武士の体面もあり、変えることはなかなかむずかしい…
 抵抗勢力の筆頭は、父・中村雅俊と母・松坂慶子。
 
 改革の試金石となったのは、大事な長男の元服祝いの席
 堺&仲間夫婦は画に描いた餅、ならぬ画に描いた鯛を供して
 内外に改革姿勢をしめそうとします。

 抵抗勢力の不満顔のなか
 堺さんは中間さんの父・西村雅彦さんの支持をとりつけ
 なんとか祝いの席を乗り切ります。

 抵抗勢力も堺さんの本気を得心し
 以後、そのリーダーシップにしたがっていきます。 

 堺さんは、家財を売って捻出した整理資金を懐に
 金貸し業者と債務整理の交渉をおこないます。

 整理資金を返済してもなお残る借金について
 整理案は、将来の利息(18%のようでした。)をカット
 元金のみを分割で支払っていくというものでした。

 いまなら弁護士に交渉を依頼するところですが
 そこは計算に強い堺さん、自分でやります。

 金貸し業者も、ふつうの武士にみられぬ
 一本筋のとおった交渉を評価し、整理案を受諾。

 じつは、それからの日常の家計運営こそ大変
 家計簿をつけながら、やりくり生活を送ることに。

 個人再生事件や破産事件でも、裁判所から家計簿をつけるよう
 指導されます。

 その日食べたものを書き留めるだけのダイエット法がありますが
 それとおなじで、出費を書き留めるだけで無駄な支出を減らす
 効果があります。

 ふつうは「金の切れ目が縁の切れ目」「火車から火宅の人へ」
 借金で家計がおかしくなると、夫婦仲もおかしくなるところ。

 そこは仲間さんの「内助の功」が光ります。

 そういえば、仲間さんは大河ドラマ「功名が辻」でも
 山内一豊の妻・千代として「内助の功」を演じていました。

 苦難にあるときこそ、幸せと不幸の分かれ目の「辻」に
 立っているわけです。

 堺&仲間夫婦は苦難にめげるのではなく
 「鯛じゃ、鯛じゃ」と喜びに変え
 家族のきずな・結束を強める契機としていました。

 「仲(間)」がいい夫婦はここがちがいます。
 

2011年1月17日月曜日

 「武士の家計簿」と貧困対策


 「武士の家計簿」は江戸時代後半~維新における
 加賀藩の下級武士とその家族の生活を描いたもの。

 原作は同名の新書
 実話をベースにしています。

 主役の堺雅人さんは加賀藩で代々の御算用者
 いまでいえば石川県の県庁マン、会計課職員です。

 江戸時代の幕藩体制は軍人政権で
 職業技能は武道、仕事道具は刀だったわけですが
 御算用者のばあい、会計学とソロバンが生計の道具です。

 私も昔岸和田にいたころ
 ソロバンを習っていたので懐かしかったです。

 森ブーというあだ名の人がいて
 ソロバンをはじいている間
 しょちゅう屁をこくのに閉口(へいこう)しました。

 堺さんの妻は仲間由紀恵さん
 父、母は中村雅俊さん、松坂慶子さん
 みなさん達者です。

 加賀藩の祖は前田利家
 NHK大河「利家とまつ〜加賀百万石物語〜」(02年)の
 唐沢寿明さんです。
 
 前田家は外様ながら徳川将軍家との姻戚関係が強く
 江戸藩邸は本郷に上屋敷があり
 現在、東京大学本郷キャンパスになっています。

 東大の赤門はこの上屋敷の御守殿門で
 1827年に、第12代藩主前田斉泰が徳川将軍家斉の娘
 溶姫を迎える際に造られました。

 堺雅人さんの父・中村雅俊さんは、このときの責任者
 この造作にあたり、藩財政が窮迫していたことから
 門の表側だけ赤に塗って経費を節減したことが手柄となり
 いつも食事のときに自慢話をして家族に煙たがられています。

 赤門建造の6年後は1833年(天保4)、天保の大飢饉がはじまり
 1837年まで続きました。
 (坂本龍馬はこの間、天保6年に生まれています)
 
 享保・天明に続く江戸三大飢饉の1つ。
 主な原因は洪水や冷害で、各地で餓死者を多数出しました。

 幕府は救済のため、江戸では市中21か所に5800人収容の御救小屋
 を設置し、救済者は70万人を越えたとされます。

 現代でいえば、生活保護その他の社会保障制度がこれにあたるでしょう。

 それでも米価急騰も引き起こしたため、各地で百姓一揆や打ちこわしが頻発
 大阪では大塩平八郎の乱の原因にもなりました。

 こうしたなか、加賀藩でも救済米を供出するわけですが
 藩の役人には悪いヤツがいて、何割か抜いて横流ししています。

 堺さんは御算用者のなかでも誰より数字に忠実で
 数字があわないことが許せない性格(ときに妥協を知らぬKYな性格)から 
 不正を告発します。

 演技がコミカルなのでつい笑ってしまいますが
 実話だとすると、実際はそうとう勇気ある行動だったでしょう。

 現代でいえば、特捜部内での証拠ねつ造を告発した検事の勇気にあたる
 でしょうか。

 しかし告発は握りつぶされて、新婚早々、輪島に左遷されることに…
 その寸前、別ルートで悪事が摘発され、事なきを得ます。

 それどころか、この功が認められて御蔵米勘定役に大抜擢
 さすが、加賀藩、度量があります。

 ところで、飢饉の原因は洪水や冷害(天災)なので
 多数の餓死者を出したことはやむを得なかった=不可抗力と
 いえるでしょうか?

 裏を返せば、政府や藩の施策に過失(落ち度)があったかどうか?

 過失とは、結果予見可能性(予見義務)+結果回避可能性(回避義務)
 からなります。

 天保の大飢饉は文字どおり江戸3大飢饉の3番目の飢饉ですから
 享保・天明に続き「2度あることは3度ある」ということで
 結果を予見することは可能でした。

 それでは結果を回避することが可能だったかというと
 不可能ではなかったようです。

 結果回避措置のメニューとしては、役人の綱紀粛正と倹約、給与改革
 義倉の整備、救荒食の手引書配布など。

 実際、救荒対策をきちんとやって犠牲者を一人も出さなかった藩も
 あるようです。

 こうしてみれば、救荒対策をきちんとやっておけば
 被害の拡大を防げたという意味で、人災の側面もあったでしょう。
 (ただし、江戸時代に国賠責任は問えません。憲法17条参照)

 薬害肝炎でも薬害の発生はともかく
 その後の行政の無為・無策が被害を拡大した点に憤りを覚えました。

 現代日本の会計簿も赤字がいっぱいですが
 政府の無為・無策ゆえに餓死者が続出する事態は
 願い下げにしたいと思います。