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2016年1月14日木曜日

従業員が競合会社を設立できるか?



【賃貸管理等を行う不動産業者の従業員が在職中競合会社を設立し,従来の顧客を奪ったことにつき不法行為が肯定され,管理委託費用相当額の逸失利益の損害が認められた事例】

 判例時報平成28年1月11日号に掲載された東京地判平成27・3・30の事例判決です。

 X会社社長が信頼していた右腕社員Yが他の社員と顧客をごっそり引き連れて隣で商売をはじめたときに,X会社はYに対し差止めや損害賠償請求ができるのか?

 中小企業の社長によくある誤解ですが,なんとかできると考えられている方がおおいと思います。しかし,原則として差し止めや損害賠償請求はできません。理由は,自由競争の範囲内だから。

 もちろん例外はあります。自由競争の範囲を逸脱した場合,損害賠償請求ができます。
 本判決は,この例外を認めた事例判決です。

 本件では,Yが在職中から開業準備行為を行っており,顧客に対する営業活動を行っていたものと推認し,引継物件のパソコン内のデータを消去するなどしたことから,違法な態様でXの営業活動を妨害し,顧客に対しても虚偽の説明をして勧誘したものであり,社会通念上自由競争の範囲を逸脱したものであるとしました。

 逆に言えば,これだけの違法な態様,虚偽の説明を立証しないかぎり,自由競争の範囲内に収まってしまい,X会社側の敗訴となってしまうわけです。

 それでは,X会社としては,なんの防御もできないのか?
 この点,競業避止契約を従業員と結んでおくことで,一定防御することができます。

 ですが,これも万能ではなく,従業員の独立・競業を100%シャット・アウトすることはできないことになっています。

 そこから先は,従業員が反旗をひるがえさないよう,どこまで良好な労使関係を結んでいけるかという経営者としての力量が試される領域となります。

 ご参考まで。

2010年10月12日火曜日

 独立は裏切りか自由か?



 水嶋ヒロさんが所属事務所を退社。
 ところが今後のことは「藪の中」となっています。
 事務所側は「執筆活動に専念するため」と発表。
 ところが水嶋さん側は俳優業を続ける意向で、他の事務所には所属せず独立して活動するという(「めざましテレビ」等)。

 このような紛争になっている原因としては、水嶋さんの雇用契約のなかに退職後の活動を制約する条項が含まれており、その解釈について見解の相違があることが考えられます。

 これほど有名でなくとも似たような紛争はよくあります。
 美容室を経営して10年になり顧客もついてようやくこれからという時期に、ナンバー2ができるスタッフ数人を引き抜いて独立し顧客も多くを奪われた!受けた被害について損害賠償を請求したいなどと。
 みなさんはどう思われますか?

 従業員が退職した後に競業を禁止するためには、原則として、退職後の競業避止義務を定めた就業規則や特約が必要とされます。
 私も最近、中古自動車販売業をめぐる紛争を経験したところ(経営者側)、そのケースではこのような特約がありました(ま、特約があっても、特約の解釈をめぐって争いにはなるのですが)。

 特約がない場合であっても、なにをやってもいいというわけではありません。
 退職後の競業の態様等のいかんによっては不法行為が成立することがありえます。

 最新の判例集に最高裁の判決事例が紹介されています。
 金属工作機械部品の製造等を業とする会社を退職した従業員が同種の事業を営み、その取引先から継続的に仕事を受注した事案(退職後の競業避止義務に関する特約等の定めなし)。

 判断基準は「自由競争の範囲を逸脱したかどうか」。
 一審が不法行為に当たらないとしたものを二審が不法行為に当たる(逸脱)と判断しましたが、最高裁は不法行為に当たらない(逸脱していない)として再逆転。
 ことほどさように「逸脱したかどうか」の判断は難しい。

 それは背景に重要な問題が横たわっているから。
 日本国憲法22条1項は「何人も、公共の福祉に反しない限り、…職業選択の自由を有する。」と定めています。
 最高裁の判断は憲法の定めるこの自由権を尊重したものといえます。

 水嶋ヒロさんを応援することは、憲法22条の定める職業選択の自由を応援することにも知らず知らずつながっているかもしれないんですね~。

 この問題は奥がふかいのでつづきを書きたいと思います。
                                   to be continued