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2023年1月11日水曜日

ある委任契約無効確認訴訟(勝訴)

 

 ある委任無効確認訴訟事件について勝訴(確定)したので報告する。

まず前哨戦があった。父が亡くなって、母Yと子どもたち(A、X)で遺産分割調停事件となった。母YとA対Xの争いであった。当職はY、A側から依頼を受けた。

その際、Xが母から預かった遺産資料の返還になかなか応じなかった。そのため、調停が終了した後、YはAに対しXとの間の面会について、いつ、どこで、どのくらいの時間会うのかを調整する権限を委任した。そしてその面会にはAを立会人とする条件をつけた。

Xはこれに反発し、Xは子どもとして母Yと自由に面会することができる、そのためYがAに対して行った上記委任契約は無効であることの確認を求めるとの裁判を提起した。

本件でもY、Aから依頼を受けて応訴した。Xは子どもが母と面会を自由におこなうことができると主張した。裁判例も数例援用した。

高齢化社会の反映だろう。子が親と面会を求める裁判例が数件あった。どれもが認知症等により親の判断能力が疑われる事案であった。

たしかに、国家や自治体が母子の面会を理由なく制限すれば、それは人権侵害だろう。しかし、とうの母親が子と会いたくないと思っているときに、子が母と会うことは自由だといえるだろうか。それは逆に母の自由を不当に拘束することになるだろう。そう論旨を展開した。

さらに、本訴はXがYに会うことを請求するという方法ではなく、過去にY・A間で締結した委任契約の無効確認を求めたことが議論をややこしくした。

500万円を払えとか、家の登記手続をせよとか、相手方に給付を求める請求訴訟をおこすことが一般的である。しかし、前哨戦での経過から、本件ではY・A間に上記委任契約が締結されていたため、その無効確認を求める裁判となったのである。

さきにも報告したとおり、遺言無効確認訴訟というのは認められている。遺産のそれぞれについて給付を求めるのは煩雑であり、遺言の無効を確認できれば一括して紛争が解決できるからである。

本件ではどうだろう。当該委任契約の無効を確認したところで紛争の解決になるだろうか。つまり、われわれの言葉でいう「確認の利益」の有無が争われた。

結論。当方が勝利した。裁判所は本訴について確認の利益がないとした。相手方も控訴せず、一審で確定した。

当然のことながらまだ続きがある。確認の利益がないことの理由として、上記委任契約はXを拘束するものではないとの説示があった。相手方はそれを根拠として面会の自由があると主張した。

物件と異なり債権は第三者を拘束しない。これは債権の一般論である。判決はこの一般論を述べたにすぎない。そのことからただちにXがYと自由に会えるとの結論を導くことはできない。そう反論した。

とりあえず、この論争がつづくことを避けるため、当職が上記とおなじ内容の委任を受けた。

弁護士が受任した以上、その頭越しに本人と交渉をすることは許されない。このことは弁護士法が存在する以上、一般的に認められているところである。

さて、この問題はこんごどうなるであろうか。いまだ進行中である。

※写真は大垣おくのほそ道むすびの地の芭蕉と木因。

2022年10月12日水曜日

ある遺言無効確認請求訴訟(勝訴)


  ある遺言無効確認請求訴訟について、勝訴判決を得た。高齢化社会のなか、遺言の有効/無効を争う事件も増えた。そうしたなか、相手から遺言の無効を訴えられた。こちらは遺言の有効を主張して防戦した。

相手方が無効を主張する理由は、本件遺言作成当時、遺言者に遺言能力が存在しなかったというにある。

当時遺言者が認知症に罹患していたことは争いない。しかし、認知症に罹患イコール遺言能力の喪失ではない。

民法は遺言能力について、15歳に達した者は、遺言をすることができると定めている(961条)。つまり、成人でなくても、中学3年生程度の能力があれば、遺言能力があるということである。

また、精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者については、家庭裁判所は、・・後見開始の審判をすることできる(7条)。精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者については、家庭裁判所は、・・保佐開始の審判をすることができる(11条)と定めている。さらに、成年被後見人が事理を弁識する能力を一時回復した時において遺言をするには、医師二人以上の立会いがなければならないともある(973条1項)。つまり、事理を弁識する能力≒遺言能力であり、事理を弁識する能力が著しく不十分であっても、遺言能力はただちには否定されないということである。

認知症にも程度がある。長谷川テストを知っているだろうか。今日は何日ですか、あなたの誕生日はいつですか、さっきこの紙の下に隠したのはなにですか・・などと30問質問する。正解が20点を切ると軽度認知症、12点程度になると重度認知症である(他に、画像診断を行い、脳の萎縮を確認したりもする。)。

認知症も重度になると遺言作成能力がないとされる。むかしは、遺言書の無効が争われても、医学的な理由で無効になることは少なかったのではなかろうか。

最近は増えていると思う。介護保険の導入により、要介護度を判定するようになったからである。その際、主治医意見書が作成されている。要介護度は裏を返せば自立/自立できないの程度を判定するものである。自立できない理由には、身体障害による場合と精神障害による場合がある。精神障害により自立できないとされていれば、遺言書作成能力も否定されることになる。

本件事案の中身は詳しくは書けないが、上記のような事情、証拠により攻防が行われた。その結果、遺言能力の存在が認められたわけである。よかった、よかった。