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2022年3月23日水曜日

ある家明け事件ー左の頬を打たれたら


 7年前は山梨県にある二百名山、御正体山に登っていたようだ。Facebookがそう教えてくれる(写真)。まだ雪山で、ブナだろうか、春待ちげな古木である。

さてきのうは2件、事件が解決した。1件は賃貸マンションの明渡請求事件。賃料の滞納がつづいたため契約解除。裁判所も明渡しを命じた。

しかしこれに応じない。執行官に依頼して明渡しの強制執行を申し立てた。1度目は任意の明渡しを求める督促。それでも明け渡さない。

しかたがないので断行かと思いきや、前日になってあと少しとの連絡。執行官とも連絡を取り合い、裁判所に依頼して月末まで断行を延期してもらう。

その後も連絡が途絶えたり、いろいろあったが、ようやく鍵が返ってきた。鍵の所在は重要である。『ユリシーズ』でも、鍵こそがその塔や屋敷の主であることの象徴となっている。家屋の明渡しにおいても、家財を撤去し、部屋を掃除した上、鍵を戻してはじめて明渡し完了となる。

きのうはさらなるドラマがあった。マンション内部の状況を確認するため、家主の息子さんに立ち会ってもらった。その際、借主とはじめて対面がなされた。

これまでの約束違反、受けた迷惑の数々。普通であれば、暴言、叱責、苦情の連呼は避けられないだろう。しかし家主の息子さんが述べたのは感謝の言葉。「断行しないで任意に明け渡してもらい、ありがとうございます。」

これには驚いた。35年間弁護士をしていて初めての経験だ。右の頬を打たれたら左の頬を差し出せという教えは知っている。しかし実践するのは難しい。

でもやはり教えはすごい。深い知恵にもとづくものと実感した。というのも、感謝の言葉により、その場にいた人みなが幸せな気持ちになったのである。まさに魔法の言葉である。暴言、叱責、苦情の連呼だと、溜飲をさげることはできただろうけれども、嫌な気持ちがしばらく続いたと思う。

2022年2月20日日曜日

ある家の明渡し請求事件


  ひさしぶりに家の明渡し請求事件をやっている。家主さん側である。家主さんがあるマンションを賃貸したが、借主さんが賃料を支払わない。そのため契約を解除して出て行ってもらいたいという。

家の明渡しとなると、単なる金銭請求事件より生々しい。まず、明渡しを命ずる判決を取得する。つぎに、執行官にお願いしてこれを強制執行してもらう。

強制執行はたいへんだ。借主さんの引越を強制することになるから。家財を運び出して(引越)、倉庫に保管しなければならない。2度に分けて行われる。1度目は催告。2度目は実際の引越だ。

それでも昔はシンプルだった。しかしいまは高齢化社会の実情を反映していくえにもややこしい。まず、依頼者も高齢であり、依頼中に入院などなさっている。

相手方も高齢で、さらに高齢の母親が同居していたりする。高齢者二人では、引越するにもたいへんである。引越先を探そうにも新たな貸し手や連帯保証人がいなかったりする。

本事件ではないのだけれども、途中で相続が発生したりすると、相続人らが相続放棄したりする。そうなると、相続財産管理人を選任する必要がある。さらに、相続人のなかには後見人の選任が必要だったり、不在者財産管理人の選任が必要な人がいたりもする。いずれの手続も相当の費用と手間と時間がかかる。

テレビCMを見ていると、「わたしも大家さん」などとやっている。不動産投資の勧めなのであるが、リスクの説明はない。しかしかくて、大家さんもなかなかたいへんである。