2012年11月28日水曜日
女工萌え
おくのほそ道に迷いこんだけれど
MK夫婦宅での読書談議に戻る。
Sさんが提供した話題は
『本屋さんで待ちあわせ』。
このチョイスは
わが意を得たりという感じ。
なぜなら,Sさんも広い意味で文筆業
話題やキャラもかぶっている。
三浦しをんを読んでいるといつも
頭のなかでSさんと混線してしまうぐらいだ。
『本屋さんで待ちあわせ』は前に書いたように
本のレビュー(書評)集である。
それはよい。
問題はそのチョイスだ。
冒頭いきなり
『女工哀史』(細井和喜蔵,岩波文庫)から。
タイトルも,期待にたがわず
「『女工哀史』に萌える」だ。
念のため解説しておくと『女工哀史』は
1925年(大正14年)の刊行。
紡績工場で働く女性労働者の生活実態を
克明に記録したルポルタージュだ。
いまの人には紡績工場もピンと来ないだろうが
近代日本の経済発展を担ったのである。
ボクは大阪の岸和田出身だが,子どものころ
近所には紡績・織布工場がいっぱいあった。
そんなの知らんよという人も,ニチボー貝塚が
女子バレーで強かったこととかは覚えているかな?
(ニチボー=大日本紡績で
貝塚は岸和田のお隣だ)
「萌え」ってなんだ?というのは
三浦さんじしんが解説している。
「とにかくモヤモヤジレジレして
たまらない気持ち」だ。
『女工哀史』に「萌える」
って,どういうこと?
と,三浦さんの仕掛けにまんまと
冒頭から引き込まれるわけである。
萌えたのは
三浦さんの友人Aちゃんだ。
いつ萌えたかというと
Aちゃんが小学校のときというからさすがだ。
さすが作家の周辺には
はんぱない読書猛者が結集している。
ぼくも小学校の友人に
アオナシくんというのがいた。
かれもそうとうな
読書家だった。
われわれが遊びほうけていたときに
ひとり読書をしていた。
『ジーキル博士とハイド氏』(新潮文庫)などを
読んでいたのが印象に残っている。
(ボクもすこしは読んだが,そんな本は
世界名作全集で読むもんだと誤解していた。)
さすがのかれも『女工哀史』や『日本の下層社会』
までは読んでいなかったのではなかろうか?
(アオナシくん
読んでいたのなら,ゴメン。)
一般の大学生となると,『女工哀史』を読んだ人は
数パーセントいるかいないかであろう。
じゃ,なぜAちゃんは
読んだのか?
それはそのころの彼女が
「女工萌え」だったかららしい。
微笑ましいが
それだけで終わらせてはいけない。
たぶん三浦さんは
そう思ったに違いない。
このエピソードは
読書について重要な問題を含んでいる。
と,ここまで書いたところで
予約のお客さんが見えた。
つづきはまた。
2012年11月27日火曜日
塚も動け
本屋さんでの待ちあわせに遅れそうだ。
が,『おくのほそ道』についてもうすこし。
江戸を出た芭蕉らは,埼玉を経て
栃木県の室の八島に参詣する。
曽良が旅前のリサーチの結果だろうか
室の八島に関する由来や縁起を披露する。
1 この神は木の花咲耶姫の神と申して
富士一体なり。
2 (姫は)無戸室に入りて焼きたまふ,誓ひの御中に
火々出見の尊産まれたまひしより,室の八島と申す。
3 煙をよみならはしはべるも
このいはれなり。
4 このしろといふ魚を禁ず。
縁起の旨,世に伝ふこともはべりし。
(それぞれ面白いエピソードだが
きょうは割愛する。
例の角川文庫
ビギナーズ・クラッシクスを参照されたい。)
古事記,藤原実方(『実方集』),地元の伝承などからなり
曽良の博識,リサーチの徹底ぶりがうかがえる。
そのつもりで
読むと曽良の句も結構ある。
日光男体山にて
剃り捨てて黒髪山に衣替
那須野にて
かさねとは八重撫子の名なるべし
白河の関にて
卯の花をかざしに関の晴れ着かな
などなど。弟子というより
文字どおり同行者の扱いというべきだろう。
さてKさんは自分を曽良になぞらえたわけだが
こういう読みはむしろ一般的なのかもしれない。
考えてみれば,芭蕉のような天才は
むしろごくごく少数派である。
それを陰でささえる
縁の下の力持ちこそが多数派である。
曽良に自己を投影して
涙する人も少なくないであろう。
そういえば,2014年の大河ドラマは
岡田准一主演による黒田官兵衛らしい。
官兵衛は,豊臣秀吉の天下取りを
縁の下でささえた右腕,参謀である。
秀吉ではなく,官兵衛に
感情移入できる人が多数いることが前提だろう。
そういえば,2009年の大河ドラマ『天地人』
直江兼嗣もそうだった。
衰運いちじるしい上杉家をけなげにささえる
妻夫木くんにみな涙したんだった。
何ごとかを為し遂げる人は発想が常人とちがうので
仕えにくい人もおおい。
信長がその典型だろう。
光秀ならずとも共通認識だったようだ。
その点,部下に対する配慮をかかさぬ
すぐれた上司もすくなくない。
芭蕉は後者だったようだ。
見習いたい。
早世した愛弟子を追悼して
塚も動けわが泣く声は秋の風
2012年11月11日日曜日
『お友だちからお願いします』
糸井重里さんが監修した『言いまつがい』
(新潮文庫)というシリーズがある。
たとえば
○忠告
おとなっぽいともだちが,「そんなことしたら,
壁の上塗りだ」と言ってました…カベかよ。
○関心
友だちが,年配の人の話に共感して思わず,
「さすがは生き地獄ですね」と言ってました…生き字引だろ。
○へこみっぱなし
仕事を失敗して落ち込んでる私に,先輩が
「人生,谷ありミゾありだって」となぐさめてくれました
…山がないよ!
というやつども。これらを
一般の投稿から集めたアンソロジー。
題名の「言いまつがい」も
もちろん「言いまちがい」の言いまつがい。
この本,読んでいると
何度も吹きだしてしまう。
電車のなかで読むと
まわりから白い目でみられることうけあい。
ちゃんとご丁寧に
編集部からのお願いつき。
不特定多数の人々が集まる場所
真剣さが必要な場所では読まないように,と。
例としあがっているのは
電車内,会議中,授業中,図書館…。
さて本代
いや,本題。
三浦しをんさんの『お友だちからお願いします』
(大和書房)。
さきの『本屋さんで待ちあわせ』と姉妹編となる
エッセイ集。
これも
数行ごとに笑える。
わけあって
週末のJR線で読んでいた。
なんども吹きだしてしまった。
まわりの目が気になったが,それより先が読みたい。
三浦さんの行く末が心配
30代なかごろにして,かなりオヤジ化が進行か。
笑いのツボやセンスが
ほぼボクと一致。(いいのか,そんなんで)
ちゃんと「オヤジギャグのマナー」
と題する論考(?)もある。
聞くものに氷点下の世界を体験させる発言。
それが俗に言う「オヤジギャグ」だ。
「新聞でよんだんだが,コンクラーベ(ローマ教皇を選出する選挙)
ってのは,まさに根比べだなあ,田中くん」
などと部長に話しかけられた日にゃあ,「いやあ,ははは」と
愛想笑いをするほかない。
職場に吹き荒れるブリザード。…
という具合だ。
まったく同感だ。三浦さんじしん,オヤジギャグを連発
自分でツッコミを入れなければならないので,いそがしい。
ボクがガンで入院したら
だれか三浦さんのこの本を届けてほしい。
笑いで免疫が超・活性化し
たいがいのガンは死滅しそうな気がするから。
2012年11月8日木曜日
え~! ま,いっか
(13番山 鯱
シャチってこんなんだっけ?)
『本屋さんで待ちあわせ』のなかに
すごく妬けるレビューがあります。
さて
どれでしょう?
妬けるとかいうからには
恋愛小説?
それがちょっとちがう。
答えは
『筑豊じん肺訴訟 国とは何かを問うた
18年4か月』小宮学・著
なんでや~!?
しをんさん,なんでボクやないねん。
これは
妬けます。
まったくの他人なら
別世界のことと受け流すことができます。
でも小宮弁護士は
福岡の1期先輩。
よく知っています。
なので,なんか激しく嫉妬。
いいな
いいな~。
でもこのレビューよく読むと
他のレビューとちょっとちがう。
うん,いつものように
本にたいする愛の表明がない。
そっかそっか
他の書評委員の先生がたから押しつけられたか。
などと
自分をごまかしたのでした。
ボクもしをんさんに
レビューしてもらいたい。
でも本を書いてないから
さすがのしをんさんでも無理か。
(冒頭の答え
鯱とクジラの仲間のシャチは別ものです。)
2012年11月7日水曜日
『本屋さんで待ちあわせ』
(12番山 珠取獅子)
読書ばなれ
がいわれて久しい。
まわりでもたしかに
若い人たちが本を読んでいない。
まえにも書いたが,本を読んでいない人は
長じてから物足りない気がする。
そうしたなか,明日9日まで
読書週間。というわけで
三浦しをんさんの『本屋さんで待ちあわせ』
(大和書房)を読んだ。
レビュー集なのだが
信じられないくらいおもしろい。
「はじめに」を読んだだけで
お代のもとがとれた気がする。
三浦さんは,はんぱない読書家だ。
依存症,中毒といってもいいぐらいだ。
それはそうだ
ほとんどの本を愛している。
どのレビューでも
その本への愛を惜しげもなく絶叫している。
これぐらい本を愛することができれば
本望であろう。
心配になるのは(彼女じしんも認めているが)
本にのめりこみすぎて,実際の恋愛がおろそかになることだ。
たしかに(彼女じしんも欲しているが),どこまで深いりするかは
別として,週1で会って本の話をするのは楽しそうだ。
というわけで
『本屋さんで待ちあわせ』ということになる。
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