2017年12月20日水曜日
『熊野』
(祇王寺)
写真は祇王寺の庭です。竹林と広葉樹が接しています。竹林は嵯峨野らしいですし,紅葉も小倉山らしい。両方のハイブリッドです。祇王寺の名前は平家物語にある祇王の悲しい話に基づいています。祇王は平清盛に寵愛された白拍子でした。あるとき飛びこみ営業にきた仏御前に情けをかけたことから追い出されることになりました。嵯峨野で出家・隠棲しますが,清盛からさらなる辱めをうけます。世をはかなんで仏事にはげんでいたところ,仏御前がたずねてきて和解します。寺は,このような祇王や仏御前らの像などをつたえています。
先日,能を鑑賞する機会がありました。大濠能楽堂で。知人のご招待です。演目は『熊野』。これを「くまの」と読んだら,能の知識がないこを暴露することになります。「ゆや」と読みならわしています。熊野は宗盛の愛妾の名前で,能の主役・シテです。
この謡曲のもとネタはやはり平家物語で,「街道下」の巻のなかにあります。
一の谷で捕らわれた平家の重衡が鎌倉に連行される途中のエピソード。重衡は単なる戦争犯罪人というだけでなく,奈良の東大寺などを焼き討ちした重大犯罪人であり,鎌倉では死刑を言い渡されることが見込まれています。
道中池田の宿で,重衡は,熊野と宗盛の由緒をきかされます。ときは平家の全盛期,東国(池田の宿)に住む母が病気になったので帰りたいと熊野が申し出たにもかかわらず,宗盛はこれを許しません。そのとき,熊野が詠んだのがこの和歌。
いかにせん 都の春も 惜しけれど
馴れし東の 花や散るらん
この和歌はこれだけで平家の貴公子・重衡の境遇に照らし,涙をさそうものがあります。
でも,この和歌で詠まれ,花や散るらんと心配されているのは病気の母のことです。作者はこのエピソードをふくらませて,『熊野』の世界をつくりあげています。京都,清水寺に至る春爛漫の情景,それが華やかであればあるだけ熊野の内心の苦悩がいっそう際立つという構成です。
見事というほかありません。
2012年2月19日日曜日
『ビギナーズ・クラシックス 平家物語』
(雲仙・国見岳)
ここのところ日曜の帰りが遅く
きのうも大河ドラマ『平清盛』を見損ねました。
いったいどうなっているのか?ふつうのドラマだと
2回も見損ねると,筋がわからなくなります。
そんな方にお奨めなのが
『ビギナーズ・クラシックス 平家物語』(角川書店=編)。
角川文庫1冊で,平家物語の全ストーリーを現代文で
読みどころを古文と現代文の両方で味わえます。
読みどころにはもちろん,梶原景季と佐々木高綱による
宇治川の先陣争いを描いた「宇治川」や
熊谷直実が息子ほどの平家の貴公子・敦盛を涙ながらに討つ
「敦盛最期」なども含まれています。
私のまわりにも梶原さん,佐々木さん,熊谷さんらが
おられますが,このころからの名族なんですねぇ。
これら読みどころは,中学校だったかで習ったわけですが
こんな面白い話が学校で習うとなんであんなに退屈なのでしょう?
京都に行くとよく嵯峨野にいくわけですが
仲国が想夫恋を奏でる小督を発見する「小督」(渡月橋北に小督塚),
怨念を超えた祇王と仏御前の友情物語である「祇王」(祇王寺),
『滝口入道』の題材となった「横笛」(滝口寺)などのエピソードも。
乱世にあっても美しく生きることの大切さをあらためて
教えられます。
みなさまもどうぞ。
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