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2026年4月22日水曜日

【不動産賃貸・コラム】用法遵守義務違反による解除① 騒音

 【事例】

 木造アパートの賃貸人であるXは、昭和42年1月以降同年4月末頃までの間、賃借人Yが居室で少なくとも一晩置き位に、毎回午前1~2時頃まで、時には徹夜で麻雀をやっており、他の賃借人からその騒音のために睡眠を妨げられているとの苦情が寄せられた。Xは、Yに対して、賃貸借契約の解除をすることができるだろうか。


【解説】

 不動産賃貸業において、賃借人の騒音によるトラブルは多い。隣人の騒音について賃借人の1人から相談されると、騒音を出している隣人もまた賃借人であるため、オーナーからみるといわばどちらも顧客であるから、対応に苦慮する場面も多いだろう。

 賃借人が「用法」(民法616条、同594条1項)の遵守義務に違反した場合、賃貸借契約の解除事由となる。

 もっとも、「賃貸借における信頼関係を破壊するおそれがあると認めるに足りない事由が主張立証された」場合には、解除が認められない(判例①)。要するに、退去は一筋縄ではいかない。

 裁判例では、騒音の種類、程度、時間帯、頻度や地域性、他の賃借人の騒音への敏感さ等が考慮されている。

 【事例】では、4か月間で少なくとも一晩置き位に深夜まで麻雀が行われていたこと、騒音のため睡眠を妨げられてXの妻は通院していたこと、数回にわたる停止要求にも応じず継続されたこと等が指摘され、賃貸借契約の解除が認められた。




【発展】※専門職向け


【判例・裁判例】

■最高裁判所

①最小判昭和41年4月21日・民集20巻4号720頁

■高等裁判所

②東京高判昭和50年8月21日・判タ333号204頁(解除有効、深夜の喧噪な行動等)

■地方裁判所

③東京地判昭和47年12月5日・判時709号56頁(解除無効、バーでの深夜の歌声(近隣住民の抗議を受け防音装置を設置))

④東京地判昭和54年10月3日・判タ403号132頁(解除有効、夜に放歌・大声)

⑤東京地判昭和54年11月27日・判タ416号162頁(解除有効、一日中ラジオ大音量等)

⑥横浜地判平成元年10月27日・判タ721号189頁(解除有効、公害防止条例違反の深夜カラオケ騒音)

⑦東京地判平成13年5月10日・WL(解除有効、尋常でない喧嘩口論・言動・足音等)

⑧東京地判平成17年2月28日・判例秘書L06030847(解除有効、深夜の大声等)

⑨東京地判平成19年3月7日・WL(解除有効、何かを叩くような騒音等)

⑩東京地判平成22年1月20日・WL(解除無効、隣室の騒音)

⑪東京地判平成22年8月6日・WL(解除無効、同居人との口論等)

⑫東京地判平成22年11月19日・WL(解除有効、大音量のラジオの音等)

⑬東京地判平成23年1月31日・WL(解除有効、夜中の大音量での音楽等)

⑭東京地判平成27年2月24日・判時2260号73頁(解除無効、6歳児のいたずら)

■簡易裁判所

⑮東京北簡判昭和43年8月26日・判時538号572頁(解除有効、深夜麻雀、事例)


【参考文献】

■調査官解説

■条解・コンメンタール等

■裁判官・元裁判官

①岡口基一『要件事実マニュアル第2巻 民法2(第7版)』(2024、ぎょうせい)313~316頁

■立案担当者見解

■学説

■弁護士・その他

②太田秀也『賃貸住宅管理の法的課題2 ー迷惑行為・自殺・サブリースー』(2014、大成出版社)5~6頁

③渡辺晋『建物賃貸借-建物賃貸借に関する法律と判例-(改訂3版)』(2022、大成出版社)191~192頁


富永

2023年4月25日火曜日

賃借人から騒音被害を訴えられた件(和解解決)

 
 賃借人から騒音被害を訴えられた裁判が和解で解決した。

これまで被害者側から依頼を受け、4件ほど解決した経験がある。こんかいは、家主側、つまり「加害者側」から依頼を受けた初のケースである。

騒音被害訴訟として有名なのは、空港や基地、それに新幹線騒音訴訟だろう。自身が経験したのは、工場騒音や鉄道騒音であった。今回は生活騒音である。

場所は賃貸アパート。「被害者」はその住人の一人。騒音被害により、精神を病んだとして損害賠償を請求された。

当方は「加害者側」といっても、直接の加害者ではない。直接の加害者とされるのは他の住人たち。隣の住人が夜間に騒いでうるさい。

家主は賃貸人としてそれを止めさせる義務がある。それを怠っていたのだから、管理懈怠の責任があるという。

騒音被害については、行政法規ではあるが、騒音規制法や自治体の条例が重要である。

https://www.pref.fukuoka.lg.jp/contents/soushinsyu-top.html

地域、時間帯等により、許容される騒音の大きさ(単位デシベル)が決められている。行政や業者に依頼したり、騒音測定装置を借りてきて自分で測定したりする。本件ではアプリで測定したという。

本来は、測定の仕方、つまり測定する距離などが決められている。本件では、隣人が騒いだことが何度かあり、そのうち1日だけ測定し、何度か規制値を超えているという。

一般に、騒音被害といっても、そのような点の被害では弱い。一定時間継続した被害である必要がある。本件では精神を患ったとされるが、騒音との関係は微妙だ。

地域も問題である。当該物件はJRの線路横にある。賃料も低額である。隣人の騒音以上に鉄道騒音のほうが深刻なはずである。賃料が低額だと隣人被害に悩まされる可能性が高いとの一般論はネット上でも議論されていた。

そしてなぜか、家主だけが被告とされた。隣人たちは訴えの対象となっていない。なぜだろう。最後まで分からなかった。家主にも責任がないとはいえないが、副次的なものだろう。

あとは当方が対応を怠ったとの点であるが、苦情申入れの都度、加害者側の住民に注意を発し、そのことを被害者に報告していた。これらはメールでなされており、すべて立証することができた。

以上のような次第で、家主は1円も支払わないで本件を解決することができた。めでたしめでたし。(自身も騒音被害には弱いので、被害者には同情を禁じ得ないが、ここは家主から依頼を受けた弁護士の立場で。)