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2023年1月26日木曜日

ある交通事故損害賠償請求・交渉事件(車両価格、後遺障害認定、整骨院治療費)

 


 ある交通事故による損害賠償請求事件について、示談解決の運びとなった。主な争点は3つ、車両価格、後遺障害認定、整骨院治療費である。

追突された側で受任。責任は追突した側が100%、過失相殺はない。医療過誤などと比べて交通事故の話が容易であるのは自賠責法があるから。追突の場合はその議論も必要ない。

問題は損害論。まず物損。修理代が車の値段より高くなると、保険会社は車の値段しか認めない。そうすると、車の値段はいくらかということになる。保険会社はレッドブック(中古車の価格本)にしたがい損害額を提示。

むかしはこれで終わりだったけれども、最近はネットの発達により中古車市場が形成され、われわれも簡単に検索することができる。当方はこれで提示。保険会社もこれを認め、依頼者の納得も得られたので、物損はこれで解決。

つぎは人損。整骨院の治療費が問題となった。保険会社は、整形外科の治療費は3か月以内であれば原則としてこれを認める。しかし、整骨院の治療費は整形外科医の処方がないとこれを認めない。整骨院だって、柔道整復師法によるれっきとした国家資格であるが、一段低くみられているのである。

本件では、仕事帰りに通院するのに、整形外科の診療時間に間にあわず、やむを得ず整形外科医の「許可」を得て、整骨院で治療を受けていた。

ところが、保険会社の照会に対し、整形外科医が「許可」はしたが「指示(処方)」はしていないなどと回答したらしく、紛争化した。保険会社は整骨院への支払いをしないまま推移し、依頼人は焦燥した。

最後に問題になったのは後遺障害認定。整形外科医は腰椎捻挫等の症状がなお残っているとして後遺症診断書を作成した。事前認定はいったん後遺障害の認定を否定。

不服申し立てをおこなった。当初救急搬送された病院、その後の整形外科、またその後の整形外科などから診療録等をとりよせた。また医師の意見書もとりつけた。・・結果、後遺障害14級の認定となった。

さてこれに基づく示談交渉。保険会社もせからしいと思ったのか、整骨院治療費も認めてきた。依頼者も喜んでくれた。「先生には感謝しかありません。」と。

2022年4月20日水曜日

ある刑事事件


  ある刑事事件をひきうけた。他県に在住する先輩弁護士の紹介である。近時裁判のオンライン化が進み、民事であれば他県でも受任することができないではない。でも刑事となるとやはり現場でないとできない。

罪名は暴行罪。酔余の犯行である。本件被疑者は犯行のことを覚えていない。飲み過ぎて記憶がなくなるということは日常的に経験したり、聞いたりすることだろう。

しかし、刑事事件ではこの弁解は許されていない。否認と同視される。ほんとうに記憶がなくなったのか、記憶があるにもかかわらずなくなったふりをしているのか、外形的に判断できないからである。

朝、警察官に起こされて、飲み屋を出たところまでしか覚えていない被疑者・被告人はよくいる。しかし、飲み屋から確保地点まで防犯カメラの映像をつなげて飲酒運転を立証されることになる。本件でも、被害者の証言のほか、防犯カメラの映像など証拠はそろっていた。

将来はアップルウォッチが進化し、犯行当時の記憶がないことが証明できるようになるかもしれない。しかしそれで刑事責任能力がなくなるわけではない。刑事責任能力がなくなるには心神喪失まで証明できなければならない。刑事責任能力の有無と記憶の有無とは別問題である。

さて弁護人の仕事は一般に、テレビでやっているほど華々しいものではない。被害者に対し被疑者・被告人に代わって謝罪し、被害弁償の努力をすることがほとんどである。

謝罪や被害弁償の努力、その結果としての被害感情の沈静化は情状に影響する。本来は、被疑者・被告人が行うのが望ましい。

しかし、被害者は、事件を思い出したくない、あるいは、再被害にあうことを恐れているなどの理由で、被疑者・被告人に会いたくないことが多い。被疑者・被告人の身柄が拘束されていることもある。そのため、弁護人が代わって行うことになる。

殺人事件で、県南にある遺族のお宅を伺い、お線香をあげさせていただいたこともあった。遺族のかたはよくぞ了承していただいたと思う。被告人にはお金がなく、焼香しか手立てがなかった。

性犯罪の謝罪や被害弁償はさらに難しい。弁護人だから謝罪しなくてもよいと言っていただくこともある。でも弁護士の立場や役割が理解できない方もいる。

被害者が複数だとなおさらだ。関係者にお願いしても、全員が納得するような金策ができたためしはない。足りない分は頭をさげるしかない。

本件でもなんとか示談に応じていただいた。被害感情はおさまらなかったようだが、堪忍していただいた。担当刑事から電話があり、事件終了を告げられた。紹介者である先輩にもその旨報告することができた。

※ほかに書きたいことはあるが、事案の性質からこれ以上書くことは差し控えたい。

2018年12月21日金曜日

住居侵入,窃盗未遂事件(2つの刑事事件報告②)


(西穂高岳独標から望む八ヶ岳赤岳からのご来光)

 住居侵入,窃盗未遂事件が終了しました。

 最初は当番弁護士として呼ばれました。博多臨港警察署です。珍しい。あまり行かないところです。

 法テラス窓口の人が女性ですと言ってましたが,面会すると男性でした。たしかにどちらでもありうる名前でした。

 逮捕段階。翌日には送検され,裁判所の決定で勾留になりました。勾留されると,被疑者国選弁護人としての対応になります。

 検察官と協議し,被害者と示談協議することになりました。
 初犯ですし,窃盗は未遂事件なので,被害者が納得すれば,起訴されないと見込まれました。

 被疑者に謝罪文を書いてもらい,被害者に送り,家族には金策をお願いしました。

 被害者と協議しましたが,捜査では未遂かもしれないが,被害はあると言われ,難航しました。被疑者による被害かもしれません,被疑者以外の者による被害者かもしれません。

 勾留は最初が10日で,あと10日だけ延長できることになっています。できれば最初の10日以内に示談をしたかったのですが,勾留延長になってしまいました。

 結局,示談はできませんでしたが,延長4日目に釈放になりました。国選弁護人としての仕事は終了です。

 民事の賠償問題がのこり,すっきりしないものの,刑事事件としては終了になります。
 あとは被疑者の更生を願うばかりです。

2018年4月11日水曜日

感染症の見落とし医療過誤事件の解決


 医療過誤事件が交渉で解決しました。
 感染症・敗血症の見落とし事案です。

 感染症は,細菌やウイルスなどの病原体が感染して生じる病気のこと,敗血症は,それがコントロールできないほど重篤になり命が危なくなることです。

 われわれに馴染みのある感染症は風邪です。
 風邪は,ウイルスによる上気道感染症です。

 風邪は喉の痛みや発熱によって気づきますね。
 一般に,感染症の症状は痛みや発熱です。

 痛みや発熱をひきおこす病気は,感染症にとどまりませんから,痛みや発熱という症状からただちに感染症とは診断できません。

 血液検査をして白血球数やCRPという検査項目が基準値より多いと炎症反応があるとして,感染症の疑いが強まります。

 あとは培養などして原因菌の特定に努めます。ですが,原因菌がはっきりしないままに,射程の広い抗生物質を投与することが一般的でしょう。

 本件では,風邪ではない発熱が長く続き,血液検査の結果,炎症反応が見られたにもかかわらず,感染症を疑わず,抗生物質も投与しないまま経過観察を指示し,重大な結果をひきおこしてしまっています。

 相手方ドクターに事情を聴きに行ったところ,きっぱりと責任を否定しました。感染症の見落とし事案に決まっていると思っていたので動揺しましたが,有責と判断し,内容証明郵便で損害賠償の請求書を送付しました。

 医師は損害保険に加入していることが一般的ですので,このような賠償請求に応じるかどうかは,保険会社の審査会が判断します。東京新宿の高層ビル街で開かれた審査会に一度おじゃましたことがあります。医師,弁護士,学者ら10数人で合議するのです。損保の社員は事務局をするだけです。

 本件では有責回答が来て,損害額について数回やりとりをしましたが,ほぼ請求額どおりの和解(示談)が成立しました。

 交渉による示談解決は,訴訟になるより,時間,労力,経済的負担などがおおはばに節約でき,満足できる結果になりました。