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2023年6月27日火曜日

指示代名詞急増中!まだ笑うところじゃないから!

 
(ちくし法律事務所1階執務室風景)

 わが事務所の秘書さんたちは優秀だ。「あの人の記録あるかな?」と言っただけで、その記録がでてくる。指示代名詞だけで通用する。阿吽の呼吸とはこのことだ。

ときどき「なんでわかったの?」と尋ねたくなる。こちらの頭のなかが正確に読まれているということだ。かのじょたちは連想ゲームに強いにちがいない。

最近は「あれ誰だっけ?」とか、「あの資料のことだけど?」など、当職の指示代名詞が急増している。かかる状況に対し、さすがに対応しきれない事態もときに発生している。

先日も、ある事件の相手方の弁護士の名前が思い出せなかった。いつもどおり「あの相手方の弁護士は誰だったっけ?」と問いかけたところ、「石井先生でしょうか?」との回答だった。

一瞬頭のなかが空白となったものの、「そうそう梅田先生だったね。」と返した。すると、事務所の1階フロアが大爆笑につつまれた。

医療問題研究会という弁護士グループに所属している。医療過誤訴訟は難しいので、みなで知恵を出し合い乗り越えていこうという会である。薬害エイズ、らい予防法違憲、薬害肝炎など困難な集団訴訟も中核はみな研究会所属弁護士がになっている。

なかでも小林弁護士は医療にくわしい。医者よりくわしい。あるとき、かれが虫垂炎になったことがあった。

腹痛をおぼえて済生会病院を受診したところ、医師はただの腹痛だから帰宅するように言った。しかし、かれは虫垂炎であると訴え、がんばって入院させてもらった。翌朝なんと、かれの自己診断が正しかったことが判明した。

かれが自己診断の根拠にしたのは、ブルンベルグ徴候である。普通の腹痛は押すと痛い。しかし、虫垂炎のときは、押すときは痛みはなく、離すときに痛みを感じる。人間の体は不思議だ。

さいきんのわが記憶もそうだ。なんだったっけ?と、意識的に記憶のネットワークをさぐっているときは、きまって思い出せない。しかし、他のことに意識を向けた瞬間、記憶が蘇ってくるのだ。

このときもそうだ。「あの相手方の弁護士は誰だっけ?」という問いかけに集中していると、いつまで経っても思い出せない。しかし、「石井先生でしょうか?」と返しがあったために、「それはちがうな。」と頭が反応した。その結果、あら不思議!?梅田先生の名前が浮かんできたのだ。間接アプローチという、そうとう高度な阿吽の呼吸。

翌日。れいによって「あれ誰だっけ?」と問いかけたら、他の秘書さんが早くもクスクス笑い出した。「ちょっと待てよ。」(キムタクふうに)「まだ笑うところじゃないから!」

2022年2月6日日曜日

ある医療過誤事件


  ある医療過誤事件が結審した。体調を考慮せず、無理なリハビリ訓練をつづけたために筋筋膜性疼痛症候群に罹患させ、発病後も診断・治療を怠り、より重症化させたのではないかという事案である。

先にトミーが「あちらにおられましたよ」で紹介した案件。その日は原告本人、相手方病院の理学療法士と主治医の証人尋問がおこなった。トミーは剣道の気合いもかくやという迫力で証人を追及し、おおくのポイントを獲得した。

結果がでたら(勝訴したら)、またお知らせしたい。判決予測についてはいろいろ書きたいことがあるが、相手方弁護士をはじめとする病院関係者や裁判官が本ブログを読んでいる可能性がゼロではないので、いまは自粛しておく。

きょう書きたいのは夫婦愛。原告は女性。複数の疾患をわずらい、目はほとんど見えず、特殊な車椅子がなければ移動もできず、全介助が必要な状態である。それを夫が献身的に介護している。

毎年約70万組が結婚、その3分の1が離婚し、残る夫婦の半分は仲がいまひとつという。そうしたなか、病気で目が見えず全介助が必要となったときに、配偶者をささえる連れ合いがどれだけいるだろう。週一回は離婚相談に応じる職業柄、悲観的にならざるをえない。

そうしたなか、本事件における夫婦愛は感動的。相手方病院入院中も医師が診断をつけられなかったときに、インターネットで検索して正確な診断名にたどりついたのだからすごい。

われわれ医療過誤をおおく取り扱っている弁護士であっても、自分で診断するとなるとそう簡単ではない。

(ただしK弁護士を除く。S病院を受診したものの、単なる腹痛だからと返されそうになった。でもブルンベルグ兆候(腹部を押したときではなく、離したときに痛みがある)があるから盲腸だと訴えて、念のため入院することになった。するとやはり盲腸だったらしい。)

日常的な介護だけでもたいへんだろう。治療は大分の専門医まで連れて行かれている。裁判の打合せは当事務所でおこなう。夫は車椅子を押して来られる。妻の状態に配慮しつつ、集めてきた文献を紹介しつつ、相手方書面への反論を協議する。

証人尋問の際も制約が多かった。しかし、夫がいろいろと世話をしてくれたため、大過なく終えることができた。

やはり暗闇でしか見えぬものがある。暗闇でしか聞こえぬ歌がある。

2018年4月11日水曜日

感染症の見落とし医療過誤事件の解決


 医療過誤事件が交渉で解決しました。
 感染症・敗血症の見落とし事案です。

 感染症は,細菌やウイルスなどの病原体が感染して生じる病気のこと,敗血症は,それがコントロールできないほど重篤になり命が危なくなることです。

 われわれに馴染みのある感染症は風邪です。
 風邪は,ウイルスによる上気道感染症です。

 風邪は喉の痛みや発熱によって気づきますね。
 一般に,感染症の症状は痛みや発熱です。

 痛みや発熱をひきおこす病気は,感染症にとどまりませんから,痛みや発熱という症状からただちに感染症とは診断できません。

 血液検査をして白血球数やCRPという検査項目が基準値より多いと炎症反応があるとして,感染症の疑いが強まります。

 あとは培養などして原因菌の特定に努めます。ですが,原因菌がはっきりしないままに,射程の広い抗生物質を投与することが一般的でしょう。

 本件では,風邪ではない発熱が長く続き,血液検査の結果,炎症反応が見られたにもかかわらず,感染症を疑わず,抗生物質も投与しないまま経過観察を指示し,重大な結果をひきおこしてしまっています。

 相手方ドクターに事情を聴きに行ったところ,きっぱりと責任を否定しました。感染症の見落とし事案に決まっていると思っていたので動揺しましたが,有責と判断し,内容証明郵便で損害賠償の請求書を送付しました。

 医師は損害保険に加入していることが一般的ですので,このような賠償請求に応じるかどうかは,保険会社の審査会が判断します。東京新宿の高層ビル街で開かれた審査会に一度おじゃましたことがあります。医師,弁護士,学者ら10数人で合議するのです。損保の社員は事務局をするだけです。

 本件では有責回答が来て,損害額について数回やりとりをしましたが,ほぼ請求額どおりの和解(示談)が成立しました。

 交渉による示談解決は,訴訟になるより,時間,労力,経済的負担などがおおはばに節約でき,満足できる結果になりました。

2013年12月1日日曜日

霧が晴れるように


先日,
医療問題の研究会があり,
参加してきました。


医療現場では,
日々,お医者さんと看護師さんを
はじめとして
多くの関係者の方々が
必死に闘っておられます。

もっとも,
どうしてもミスや事故が
生じることもあります。



そういった医療過誤の事件を多く手掛けた
先輩弁護士の話を聞きながら,

医療過誤裁判とは何なのか…
弁護士は何ができるのか…
弁護士は何を目指すべきなのか…

ということを
考えさせられました。


こうやって第一線で執務してきた
先輩の話を聞き,
意見交換をしていくことは,
まだまだ駆け出しの若い弁護士にとって
とても大切ですね。


どこかスッと気持ちが晴れた気がします。


さて,今日は月曜日。
気持ちの良い一週間になりますよう。



今日の筑紫地域は,
西鉄電車が遅延するほどに
なにやら霧がかっていますが…(笑)

2013年8月27日火曜日

学び


弁護士として執務していると,
興味深い新しい世界に
接する機会が多くあります。


不動産に関する紛争,
家族に関する紛争,
交通事故の問題などは
日常,舞い込んでくる相談ですから,
もちろん知識を有しています。


ただ,
ときどき相談がある
建築瑕疵,医療過誤などは
それ相応の専門知識を必要とします。

また一口に「建築瑕疵」といっても,
福岡市内の高層ビルと
郊外の一軒家と
橋などの建築物とでは,
用いられている素材も技術も全く違いますから,

それに応じた知識が必要です。


医療過誤も
歯科,耳鼻科,内臓,脳など器官によって
専門知識を必要とします。



これら新しい世界は,とても興味深いです。

日々これ勉強ですね。


ぜひ,皆さんのお悩みも
遠慮なさらずお寄せください。


2012年4月16日月曜日

脳梗塞の見逃し事件 by.山歩きの好きな福岡の弁護士



 去る3月27日、福岡地方裁判所において,医療事件で
 原告の請求を一部認める判決が出されました(4月11日確定)。

 事案は,福岡市内の被告病院が,同市の70代の女性(原告)の
 脳梗塞の診断・治療を怠ったもの。

 原告は、飲食店での支払いの際、何度も硬貨を落とすなどしたため
 店員が脳梗塞を疑い119番通報し、被告病院に救急搬送されました。

 当直医(消化器科)及び翌日診察した主治医(循環器科)が、TIA
 (一過性脳虚血発作。脳梗塞の前駆症状であることが多い)を誤診。

 TIAではないとし、治療(専門医への転送)をしなかったところ
 2週間後に脳梗塞を発症、右半身麻痺等の障害を後遺することに。

 被告病院の診断義務違反等を理由に
 8000万円の損害賠償を請求をしました。

 被告が,非専門医は,TIAを診断すべき義務はないなどと主張したものの
 裁判所は,被告病院の過失を認めました。

 TIAの診断方法等は一般的な医学文献に記載されており
 その程度の知識は非専門医であっても認識しておくべきとの判断です。

 被告医師らがTIAに関する誤った知識に基づき適切な問診を行わず
 TIAについて否定的な診断をしたことは不適切であったとしました。

 しかしながら裁判所は,
 相当因果関係について否定しました。

 ①TIAを疑って入院させ、心電図がなされたとしても
 心房細動が発見されたとは限らない。

 ②抗凝固療法が開始されていたとしても
 100%脳梗塞の発症を防ぐことはできない。

 それゆえ,被告病院医師の義務違反がなかったとしても
 本件脳梗塞を防止し得た高度の蓋然性は認められないというのです。

 ただし,被告医師がTIAを診断等していれば、後遺障害が生じなかった
 相当程度の可能性はあるとして、慰謝料等440万円を認めました。

 本判決は、非専門医であっても、一般的な医学文献に記載のある事項
 については知識を得ておくべきであるとしました。

 専門分野以外についての診断義務違反の判断方法の基準を示した点で
 大きな意義を有しています。

 脳梗塞を含む脳卒中という疾患は、日本人の死因でも上位を占め
 多くの人がなる可能性がある病気です。

 その重大さを考えれば、非専門医であっても
 適切な診断・治療を行うことが期待されます。
 
 本判決は,損害評価が低きに失するものの,この期待に応えるもので
 市民感覚に合致するものではないでしょうか。

          ちくし法律事務所 弁護士 浦田秀徳

2011年10月5日水曜日

 肺炎・多臓器不全で亡くなった事案で和解



 入院中の母親が肺炎による多臓器不全で亡くなったとされ
 原告はその子どもたち、被告は入院先の医療機関。

 診療義務違反があったとして損害賠償を請求していたところ
 昨日、和解が成立しました。

 咳症状がつづき、胸の痛み、食欲なし、倦怠感、黄色の痰が出ていて
 死亡診断書には肺炎→多臓器不全→死亡という機序が記載されていました。

 他方、剖検がされず、レントゲン検査等の結果によれば
 重症の肺炎像が見られなかったことなどから、機序が争点になりました。

 この点、故人にはコントロール不良の糖尿病が基礎疾患としてあり
 後医に転送されたさい重度のアシドーシスになっていました。

 糖尿病患者は、感染症(肺炎を含む)が重症化する危険があり
 糖尿病の悪化はアシドーシス、昏睡、多臓器不全になる可能性があります。

 こうしたことから
 裁判所は和解案において当方の主張する機序を支持しました。

 進行がはやかったことから
 診療義務違反と死亡との間の因果関係も争点になりました。

 喀痰細胞診検査で強い炎症背景が認められた時点で、血液検査を実施し
 抗菌剤投与、インスリン療法を開始すれば死亡が回避できたはず。

 この点も裁判所はわれわれの見解を支持しました。
 こうしてわれわれの請求を基本的に認める和解案が示されました。

 これを医療機関側も受け入れ
 昨日の和解成立となりました。

 医療過誤裁判は人の生命、医療という専門分野にわけいって
 真相をさがし、あきらかにするという非常に困難な訴訟です。

 でもご遺族たちの和解後のお顔を拝見すると
 取り組んでほんとうに良かったなと思いました。
 

2011年9月1日木曜日

 脳梗塞の診断ミスですが…



 日本人の3大死因はガン、心疾患、脳血管。
 脳血管のうち出血ではなく、つまるのが脳梗塞です。

 3大死因の一角ですからポピュラーな病気です。
 ですが、うまく診断してもらえないことが少なくありません。

 脳梗塞の前触れをTIA(一過性脳虚血発作)といいます。
 脳梗塞とおなじ症状が短時間あらわれて消えます。

 たとえば、お店でお金を払おうとしたら硬貨をとりこばしたとか
 顔の表情がおかしいということになれば、片麻痺の疑いがあります。

 さあ大変だということで、お店の人が脳梗塞を心配して
 救急車をよんで救急病院にはこびこまれます。

 でも残念なことに、当該病院では脳梗塞と診断せず
 そして治療がうけられませんでした。

 脳梗塞の原因にも3種類あるのですが
 心臓が細かく動いてしまって血栓がとび脳血管がつまる場合があります。

 このような場合、後日ふたたび脳梗塞を生じ
 片麻痺の重篤な後遺障害をのこすことになってしまいます。

 医療過誤の裁判になると、病院側は
 専門医ではなかったので誤診はやむをえないと逃げをうちます。

 心臓に原因がある脳梗塞ですから
 循環器科の医師は自己の守備範囲だとおもうのですが、違うといいます。

 なんの病気かわからない症状について誤診することはありえます。
 でも脳梗塞の疑いとして救急搬入された場合はちょっと違うと思います。

 専門外だというのなら
 なぜ、脳梗塞の疑い患者を受け入れたのでしょう?

 (脳梗塞のようなポピュラーな病気でさえこうですから
 マイナーな病気の誤診についてはいわんやおやです。)

 それならそうと、専門医でないから誤診ありですよ!と
 ホームページにでもインフォーメーションしていてほしいと思います。