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2025年3月6日木曜日

ある損害賠償請求事件(解決)

 

 古くからの知りあいに「先生は離婚事件をされますか。」と訊かれて面食らうことがある。いつもハンセン病訴訟や薬害肝炎の話しかしないので、そういう国相手の大型事件しかしないと思っていらっしゃるのである。

 しかしそんなはずはない。二日市という福岡市郊外に位置する地方都市で事務所をかまえている以上、いろんな種類の事件が持ち込まれる。

  たとえば、ある損害賠償事件が解決した。こちらの依頼人Yは不法行為の加害者であるとして訴えられたほうである(一般に判例集では、訴えたほうをX、訴えられたほうをYと表記する。)。

 事案は、叔父Xと義甥Yの争い。Xの母、Yの義祖母が亡くなった斎場でのこと。以前からの因縁があり、XとYとの間で口論となった。売り言葉に買い言葉だったのだが、Yの言動だけがとらえられて脅迫行為とされ、慰謝料200万円の損害賠償を請求される裁判となった(民事裁判)。

 通例であれば喧嘩両成敗ですんだと思われる。ところがXが110番通報したため、Yの言動だけが脅迫であるとされ、刑事事件で有罪の罰金刑が確定していた。

 裁判では、当該事件に至る経緯について主張し、立証した。しかし刑事事件で有罪になっている事実は重く、なにがしかの解決金の支払いは免れない情勢であった。

 ちなみに、Xが東京在住であったので、事件は東京地方裁判所に係属していた。口論は博多弁でおこなわれた。標準語ではたいしたことのないやりとりでも、方言によってはドスが効いたりする(実際にドスを持っていたわけではない。)。

 諸般の事情を考慮して、裁判所は20~30万円の解決金をYが支払う旨の和解案を打診した。そして5回の審理期日を経て、Yが25万円を支払う旨の和解が成立した。

 書けないことが多くて、読者には勘所がつたわらないかもしれない。が、このような仕事もしてますよということで、ご報告まで。

2023年12月11日月曜日

機械の利用料を請求されたある事件(勝訴的和解)

 

 山行記・旅行記ばかり書いているが、事件もちゃんと解決している。きょうは機械利用料を請求されたある事件について報告しよう。

ある組合員、Aさんとしよう。Aさんはある機械利用組合から機械の利用料を支払えと訴えられた。その額は約800万円である。当職はAさんから依頼を受けた。

請求にかかる機械についてAさんは一切利用していない。したがって、そのような利用料は1円も支払う義務がないと争った(これだけではなんのことやら分からない。組合は全組合員に利用義務があることを前提としていた。)。

むこうには弁護士が2名ついていて、弁護士の数だけでいえば、劣勢である。

機械利用組合というのは、農業の集団化・合理化のため行政主導で設立されたものである。農業に使う機械を個人で購入・所有するのはムダも多いので、組合で購入・所有し、みんなで利用しようという目的である。

組合の請求根拠は当初、組合規約に基づくとのことだった。しかし、規約を熟読するも、どこにもそのようなことは書いていない。

そのように指摘すると、今度は組合設立時にそのような黙示の合意がなされたと請求の根拠を変更した。

その証拠の存否を尋ねると、それを明記した規約も議事録も契約書も存在しないという。情況証拠の積み重ねで当該合意の存在を推認できるという。

組合員に対し800万円もの大金を請求する裁判を提起しながら、その根拠は情況証拠の組合せであるという。むちゃだ。

そのように反論するも、組合側もなかなかあきらめない。結局、証人尋問がおこなわれた。いまどき珍しい。本格的な証人尋問はコロナ後、初ではなかろうか。

尋問終了後、裁判長から心証開示があった。当方の勝ちだという。組合側はそれでもあきらめなかった。往生際が悪い。

最終準備書面を提出することになった。心証開示の結果からすれば手を抜いてもよかったが、心血を注いで説得力のある自信作を完成させた。21頁の大作だ。

双方、最終準備書面を提出し、結審。判決日の予告がなされた。

・・・それから数日経って、山を歩いていると、組合側の弁護士から電話があった。和解したいという。最終準備書面の説得力のなせる技であろうか。その旨Aさんに連絡をしたところ、和解するとの了承を得た。

和解内容は、もちろんこちら側の全面勝訴である。めでたし、めでたし。

2023年7月20日木曜日

ビッグモーター契約不適合責任事件(勝訴的和解)

 


 今朝のニュース。俳優に迷惑がかかるからという理由で、ビッグモーターがCMを自粛すると報道していた。どうも違和感を感じる。

実際には5万円の修理代で済むところを、さらに板金を故意に凹まして修理代を10万円に増額して、保険金を請求していたと報じられている(5万円、10万円は話を分かりやすくするための仮の数字)。

これは立派な保険金詐欺である(詐欺に立派なという形容詞をつけることにも違和感があるが。)。犯罪である。金融機関に対するものであるから、日本の司法実務では重罪とされている。しかも組織的で悪質である。

いまのところ保険金の不正請求などとマイルドに呼ばれているが、実態は組織ぐるみの詐欺犯罪事件である。そのうち端的にそう呼ばれるようになるだろう。

それなのにビッグモーターの対応は甘い。企業の危機管理がなされていないと感じる。ただちに経営陣が謝罪して、経営体制を刷新し、営業をしばらく止めて、実態解明を行い、再発防止策を樹立したうえで営業を再開すべきである。

CMを自粛する理由も、「俳優に迷惑をかけるから」というのはズレている。「保険金詐欺に関する被害者や顧客、一般消費者に対する謝罪・反省」、「実態未解明、再発防止策の未樹立」などが理由のはずだ。

自身、ビッグモーターがらみでは2件ほど手がけた経験がある。1件は刑事事件の弁護、2件は民事損害賠償請求事件である。

刑事事件は、被疑者・被告人弁護。ビッグモーターの社員が人身事故を起こしたもの。被害者の怪我の程度が重かったか、過失の態様が悪かったかで、執行猶予がつくか実刑になるか微妙な事案であったと記憶する。

そうしたところ、同じ職場の同僚たちが減刑嘆願の署名を集めてくれた。刑事事件を起こした同僚に冷たい職場が多い。このときは、ビッグモーターは社員の結束が強く、よい職場なのだなと感じた。署名の効果かどうか分からないが、判決には執行猶予がついた。

民事損害賠償請求事件は、購入者側から依頼されて、ビッグモーターに対し契約不適合責任を問うたもの。依頼人が購入した中古車は、購入した翌日には動かなくなった。会社側の責任は明らかと思われた。

契約不適合責任は、文字どおり、販売/購入した商品が売買の契約内容と適合していないという責任である。以前は瑕疵担保責任と呼ばれていて、近時、民法改正がなされた。法改正から間もない時期の事件だった。

ビッグモーター側には大阪の弁護士がつき、責任を烈しく争った。理由は、中古車には点検により分かる瑕疵と点検によって分からない瑕疵(たとえば、エンジン内部の損傷)があり、本件は後者であるという。

また、ビッグモーターでは、このような場合のために購入者に損害保険契約を勧めていて、当方の依頼者がその契約締結を断ったのだから、こちらが悪いともいう。

物には特定物と不特定(種類)物がある。利休が愛した茶器などは2つと存在しないから特定物の典型。工業生産で多数製造されている自動車(新車)などは不特定物の典型。

では中古車は?従来の理解によると、中古車は他におなじものがないという理由で特定物だったと思われる。

民法改正の際の審議内容を調査してみた。現代社会において中古車などは探せばほぼ同等の代替品がみつかる。つまり、不特定物・種類物ではないだろうか。そのような場合に瑕疵担保という考えは馴染まない。そこから契約不適合責任という考えが導きだされた。このような審議議事録を証拠として提出した。そして、法改正過程の議論に照らし、本件中古車には契約適合責任が適用されることが予定されているはずだと主張した。

損保に加入しなかったから購入者側が悪いという議論も乱暴な議論だ。ビッグモーターのやり方は、会社が負担すべき契約不適合責任による損害を消費者側の保険料負担で回避しようと言うものである。不当である。

ビッグモーターは多数の中古車を転売して利益を得ているのであるから、そのなかに一定数含まれる不良品に対する対策をすることができる。しかし、いち消費者にすぎない原告にそれを強いるのは困難である。などと主張した。

結果、裁判官は、ビッグモーター側の言い分を一蹴した。ただちに和解が成立し、こちらの請求が全額認められた。

乱暴な商売のやり方に、義憤を感じるとともに、ビッグモーターの行く末に危惧を感じた事件だった。さいきんの報道をみていて、やはりこういう事態になってしまったなぁと思う。

2023年7月3日月曜日

ある共有物分割請求事件(和解)

 


 ある共有物分割請求事件が和解により解決した。

ある建物を兄弟が相続により、2分の1の持分ずつ共有取得した。そこで兄のほうが相続前から事業をしていた。弟のほうは無料で共有持分を譲ると言っていたが、相続のほうがもめたので前言を翻し代価として1600万円を寄こせと言い出した。

兄から依頼を受けて、共有物分割請求裁判を提起した。

各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる(民法256条1項本文)。共有物の分割について共有者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、その分割を裁判所に請求することができる(258条1項)。

この場合、分割のしかたは3通り(同条2項3項)。
①共有物の現物を分割する方法。
②一方の共有者に債務を負担させて、他方の共有者の持分の全部又は一部を取得させる方法。
③強制競売、競売代金の分配。

たとえば、共有物が宅地100坪とかであれば、50坪ずつ分筆して分けることができる。現物分割である。本件では建物だから、現物分割はできない。

競売は建物を強制的に第三者に売却して、代金を半分ずつ分ける方法である。本件ではそこで兄が事業をしているので、競売にもできない。

そこで残るのが②の代償分割の方法である。兄が弟の共有持分を取得する代わりに、代金を支払うというもの。弟の持分を買い取るようなものだ。

問題はその代金の額である。こちら(兄)は市町村が行っている固定資産税評価にしたがい80万円を主張し、相手方(弟)は1600万円を主張した。

弟は過去10年分の建物使用料も請求してきた。兄は使用貸借によるものであるから、使用料を支払う必要はないと反論した。

それならということで、こちらは建物の修繕代をこれまで3度負担しているので、それを負担せよと主張した。相手方は不要な工事であり、負担する必要はない。むしろ建物の構造を弱くしたなどと反論した。

簡単に終了するかと思いきや、10回ほど弁論や和解協議を重ねることなった。最後は、裁判所が書面による和解案を提示した。

書面による和解案は判決ではないけれども、ほぼ判決のようなものである。飲むしかない。蹴ったとしても、おなじ内容の判決がでるだけである。

裁判所の和解案は、①使用貸借の成立を認め、②修繕費の請求を否定し、③代償金250万円を支払うというもの。

こちらが考えていた額より高額だったが当方は受諾した。相手方は受諾を相当しぶった。いちばんのひっかかりは使用貸借の成立を認めた点だ。

その根拠として、被相続人に対する賃料の支払いが認められないかぎりというくだりがあった。そのため、過去にさかのぼって、賃料の支払いのないことの確認を求めてきた。

ふつうは、ないことの証明は「鬼の証明」といわれる。殺人事件で、殺したことの証明はできても、殺していないことの証明はできない(不在証明=アリバイの立証はできる。)。

よく捜査官が被疑者に対し犯人でないなら殺していないことを証明しろなどとやっているが、不可能を強いるものである。そのために立証責任が存在する。殺人を行ったことは捜査側が立証しなければならない。

本件では、兄の事業の確定申告書の損益計算書を提出することにした。損益計算書には賃料の項目があるから、賃料を支払っていれば、そこに記載があるはずだ。しかし、記載はなかった。

これによりようやく和解解決することができた。和解にも勝ち負けはある。こちらは80万円→250万円であるから3倍。あちらは1600万円→250万円であるから6分の1以下である。当方の勝訴的和解である。

2023年1月22日日曜日

ある不貞慰謝料被請求事件

 

 不貞を理由とする慰謝料の請求を受けたある事件。夫と子どもがいて共働きだったところ、妻が仕事先の男性と浮気。夫が妻と男性を訴え、慰謝料等440万円を請求した。

妻側で受任。裁判は和解で解決した。和解内容は、男性が夫に180万円を支払う。妻は男性に、そのうち90万円を支払う。ただし、月2万円ずつ45回の分割払いである。

こういう場合、妻と男性の行為は、夫に対する共同不法行為。慰謝料の支払義務は連帯責任・連帯債務である。どちらかが全額支払えばそれで終わり。ただし、内部的に求償の問題が残る。本件に即していえば、180万円の連帯債務、これを男性が全額支払い、妻が求償金90万円を支払うこととなった。

不貞慰謝料の金額は、浮気の結果として夫婦が離婚に至ったかどうかが大きい。離婚に至らなければ慰謝料も低くおさえられることが一般的である。その他、そもそもの夫婦関係(そもそも破綻していれば損害はない)、不貞に至った経緯(どちらが誘ったのか)、不貞期間・回数等が慰謝料額を左右する。

本件では、双方の主張がでそろった段階で、裁判所が一定の解決案を示し、それをめぐって和解協議が重ねられた。

依頼人が福岡に居住していなかったため、打合せがたいへんだった。DV案件で警察の介入もあったため、住所情報の秘匿にも苦労した。

弁護士費用は法テラスを利用されたので、着手金も報酬金も法テラスが決めた。依頼人は月1万円ずつほど法テラスへの返済義務も負うこととなった。

2022年11月28日月曜日

ある不当利得返還請求事件(和解)

 


 ある不当利得返還請求事件が和解により解決した。

X名義の預金通帳を母が管理し、いろんな使途に使用していた。そこには賃貸収入が入金されていた。

母は亡くなり、遺産分割協議を行った。公正証書遺言が見つかり、これに従い不動産の登記や相続税の申告がなされた。

その後も、Yが預金を管理し、いろんな使途に使用していた。6年後、通帳を返したところ、YはXから使途不明金6160万円を返すよう言われ、裁判を起こされた。Yが使途不明金を不当利得したというのである。

ちなみにXの代理人は、積極的にCMを展開している全国展開の某法律事務所の弁護士である。

Yから依頼を受け、およそ2年間裁判をたたかった。平成23年1月からの出金について使途不明だと請求され、11年も前からのことだから、当方も記憶も鮮明でないし、証拠関係も完璧とはいいかねる。

丹念に1つ1つの使途に関し証拠を収集し、使途をつきとめていった。それでも10%ほどの証拠について、もともと書証が存在しなかったか、これが散逸してしまい残っていない。

こちらは一切自己のために費消をした覚えはないので、1円でも支払うことはできない。ある意味幸いだったことに、当方にも反対債権が生じていた。

裁判所の強力な斡旋もあり、Yは1円も支払わなくてよいとの和解をすることができた。ふう。めでたし、めでたし。

2022年1月24日月曜日

ある労働事件

 


 ある労働事件が勝訴的和解で解決した(勝訴的和解とは、こちらの請求を大筋みとめた和解のこと)。・・・以上。

そういわれてもなんのことか分からないので、なぜそうなのかだけを解説する。 

和解条項のなかには、口外禁止条項というのがある。和解の内容を第三者に話してはいけないというもの。本件和解には、この条項が含まれている。なので内容は紹介できない。

労働事件というからには、労働者もしくはもと労働者であったものが会社を訴えるということだ。それが勝訴的に和解したからには、会社側になんらかの落ち度があったということになる。

会社には多数の労働者が働いているから、当該和解の内容が知れ渡ると、他の労働者からもつぎつぎと訴訟を起こされることになる。そこでこれを防ぐために、和解には応じるけれども、口外はしないでくれということになる。

数年におよぶ苦労話をしたいところだが、できない。残念。

などと思いながら、岩合光昭さんの「世界猫歩き」をみていた。猫に関するトリビア知識を紹介する「猫識」のコーナー。そこで、右手を挙げている招き猫と左手を挙げている招き猫のちがいを紹介していた。

右手を挙げている猫はお金を招き、左手を挙げている猫は人(人脈)を招くのだそうだ。ほう。知らなかった。

じゃ、左手を挙げて、右手に小判をもっている猫はどちらなんだろう?


2021年11月30日火曜日

ある損害賠償被請求事件


  いよいよ師走。マスコミは毎日、オミクロン株の小ネタの報道に忙しい。徒にこれら報道に振り回されず、われわれの人生を破壊されないよう行動するしかあるまい。

 きのうにひきつづき、ある損害賠償被請求事件。といっても、実態はやはり遺産分割事件。被相続人である祖母の遺産を使い込んだだろうと主張して、甥(祖母の長男の子)が叔母(祖母の次女)にたいし損害賠償を請求した事案である。

むかしはこのタイプの紛争はおおくはなかった。しかし、高齢化がすすみ、被相続人が認知症などで生前に財産管理能力を失う事例が増えた。そのため、財産管理能力を失った後の支出が違法な使い込みではないかとして争われるようになったのである。

わが事務所は地域事務所であるので、請求する側から依頼を受けることもあるし、請求される側から依頼を受けることもある。ケース・バイ・ケースであるが、まず一定期間の財産管理の事実を認めるかどうかが大きい。

裁判所の対応も当初、裁判官によって異なる印象であった。最近は、請求する側に厳しくなりつつあるように思う。それはそうだ。これは立証責任が請求する側にあるという原則の帰結である。またそうでないと、被相続人の老後のめんどうをみた人がバカを見ることになる。

本件でもそうだ。叔母が祖母のめんどうをみていた。生前、甥は何らのめんどうもみていなかった。ところが祖母が亡くなったあと突然、甥は祖母思いの孫に変身し、学生時代に祖母から電話できいた断片情報を拡大解釈してはじめたのである。

甥は埼玉県に在住していたことから、さいたま地方裁判所に訴えられた。おおむねオンラインで対応できたが、証人尋問の際は緊急事態宣言下、同地裁まで出張しなければならなかった。

このとき、叔母本人と証人とは福岡地裁に出張し、ビデオ尋問方式がとられた。結果的に、代理人の弁護士がコロナに感染するのはやむを得ないけれども、当事者が感染するのは困るという形になった。いまではよい思い出だが、当時は命がけの思いだった。

裁判所から何度か和解勧告がなされた。が、甥側はこれを拒否。その結果、こちらの勝訴判決がなされた(遺産が一部残るかたちになったので、その部分の不当利得返還請求、実質的な遺産分割請求は認められた。)。

甥は納得せず、東京高等裁判所に控訴。高裁からは細かい求釈明を受け、これに対応した。さすが東京高裁である。隅々まで目を光らせているという感じ。

結果は、ほぼ控訴棄却。当方のほぼ全面勝訴である。「ほぼ」とあるのは、先の細かい支出を指摘され、一審より数万円の増額となったから。

双方とも上告せず、東京高判は確定した。これで解決かと思いきや、相手方から不満をぶちまけた感じの手紙が届いた。困ったものだ。法治国家における裁判制度のことが分かっていない。しばらくは様子をみるしかあるまい。

2018年10月24日水曜日

2つの離婚事件


          (建仁寺,双龍図)

 2つの離婚事件について,ひとつは判決があり,ひとつは和解が成立しました。

 いちどは好きで一緒になった男女だけれど,うまくいかなくなると愛情は容易に憎悪に転化してしまいます。

 「法律は家庭に入らず」の原則から,離婚事件はいきなり裁判をすることができません。まず家庭裁判所で調停という話合いをする必要があります。

 調停で話がつかないときにはじめて裁判になります。裁判になっても,途中なんどか和解という話合いによる解決の試みがなされます。それでも解決できないときに判決の言い渡しがなされます。

 このたび,一件については和解が成立し,一件は判決の言い渡しとなりました。どちらも夫側で関与することなりました(別に夫側専門ではなく,たまたま相談・依頼されたのが男性側だっただけです。もちろん女性側で離婚事件をすることもたくさんあります)。

 一件は,新婚数か月の夫婦で,結婚式の準備をめぐって夫婦げんかが絶えず破局しました。離婚原因は夫側にあるとして慰謝料請求にこだわり,調停,裁判にいたったものです。双方の言い分と証拠をだしつくしたところで,裁判所が和解案を打診しました。慰謝料は認めず,婚姻費用の分担について,妻の離婚後の生活費を負担するとしてやや増額するという内容です。この理由なら問題ないので,当方も和解に応じることにしました。

 もう一件は,夫にDVがあったかどうか,財産分与の対象となる財産にはどのようなものがあるかについて厳しく争われました。調停段階から何度か話合いによる解決が模索されましたが,双方の見解のひらきが大きく妥結にはいたりませんでした。今般,判決がなされ,概ね当方の言い分が認められました。しかし,妻側は納得せず,控訴となりました。さらに高等裁判所で裁判がつづくことになります。

 双方が納得できる妥協点が早期に見つかることを願ってやみません。

2018年4月11日水曜日

感染症の見落とし医療過誤事件の解決


 医療過誤事件が交渉で解決しました。
 感染症・敗血症の見落とし事案です。

 感染症は,細菌やウイルスなどの病原体が感染して生じる病気のこと,敗血症は,それがコントロールできないほど重篤になり命が危なくなることです。

 われわれに馴染みのある感染症は風邪です。
 風邪は,ウイルスによる上気道感染症です。

 風邪は喉の痛みや発熱によって気づきますね。
 一般に,感染症の症状は痛みや発熱です。

 痛みや発熱をひきおこす病気は,感染症にとどまりませんから,痛みや発熱という症状からただちに感染症とは診断できません。

 血液検査をして白血球数やCRPという検査項目が基準値より多いと炎症反応があるとして,感染症の疑いが強まります。

 あとは培養などして原因菌の特定に努めます。ですが,原因菌がはっきりしないままに,射程の広い抗生物質を投与することが一般的でしょう。

 本件では,風邪ではない発熱が長く続き,血液検査の結果,炎症反応が見られたにもかかわらず,感染症を疑わず,抗生物質も投与しないまま経過観察を指示し,重大な結果をひきおこしてしまっています。

 相手方ドクターに事情を聴きに行ったところ,きっぱりと責任を否定しました。感染症の見落とし事案に決まっていると思っていたので動揺しましたが,有責と判断し,内容証明郵便で損害賠償の請求書を送付しました。

 医師は損害保険に加入していることが一般的ですので,このような賠償請求に応じるかどうかは,保険会社の審査会が判断します。東京新宿の高層ビル街で開かれた審査会に一度おじゃましたことがあります。医師,弁護士,学者ら10数人で合議するのです。損保の社員は事務局をするだけです。

 本件では有責回答が来て,損害額について数回やりとりをしましたが,ほぼ請求額どおりの和解(示談)が成立しました。

 交渉による示談解決は,訴訟になるより,時間,労力,経済的負担などがおおはばに節約でき,満足できる結果になりました。

2018年3月26日月曜日

和解成立



(谷川岳山頂・トマの耳)

 2月15日にアップした「ナイスな打ち返し」事案の和解が成立しました。

 同日の投稿では「次回までに裁判所から和解案が示される予定である。」としていました。

 3月5日,裁判所から和解案が示されました。相手方の請求額の3割程度を当方が支払う旨の案でした。

 理由が付されていて,概ね当方の請求が認められるも,当方にも問題がないわけではないというものです。

 われわれが事案を判断する際には,勝ち筋,負け筋,5分5分と分類します。神ならぬ人間が判断することですから,判決の予測にしかなりません。その場合,7~8割くらい勝ちそうな事案は勝ち筋,2~3割くらいしか勝ちそうにないときは負け筋,勝ち目が5割前後のときは5分5分です。

 本件については,勝ち筋であると予測していました。必ずしも同じ議論ではありませんが,請求額に勝ち目を積算した和解案が示されることは多いです。

 本件では予想どおり3割程度の和解案が示されたわけです。

 3月22日に和解期日が開かれました。和解案について,当方は了解をいただきました。相手方はなかなか納得できず,裁判官に自分たちの言い分を訴えていました。しかしながら,本人尋問も終了しており,裁判所の和解案は判決案とほぼ同じものです。
 それでようやく相手方も納得し,和解が成立しました。

 判決による解決は一刀両断であるのに対し,和解による解決は双方の実情が考慮される利点があります。本件解決も,なかなか妥当なものであると思います。

2018年2月14日水曜日

ナイスな打ち返し


(燕岳東面)

 きのうは民事裁判の証人尋問だった。
 事案は,遺産預金のなかから故人の生前の治療費を精算したところ,その精算は認めないとして,同金員の返還を求められたもの。つまり,こちら側が被告事件である(よく誤解があるが,民事の被告は訴えられた側という以上の意味はない。刑事事件のような容疑を受けているのとはちがう。)。

 原告2人,被告2人の4人の尋問で計4時間の長丁場だった。
 被告のうち1人はアラ70の女性。
 尋問前から,頭がまっしろになって立ち往生したらどうしようと本人も心配し,当職もあやぶんでいた。

 ところが,フタをあけてみると,案ずるより産むがやすし。当職の主尋問に対してしっかりした供述をされた。

 問題は,つづいておこなわれる相手方弁護士による反対尋問。
 これまたしっかりした受け答え。事前の心配がなんだったのかと思える充実の時間だった。

 原告側の主張の要点は,上記治療費は,故人によってすでに精算されていたのではないかということ。関連して,当方が立て替えた金員の出所も争点となった。

 その出所の一部がタンス預金だという当方の主張・供述に対し,相手方弁護士から追求がおこなわれた。

 相弁:いったいそのタンス預金はどこに保管していたのですか?
 当方:夫にわからないところに保管していました。
 相弁:だから,それは具体的にはどこですか?
 当方:いやです。それは教えられません。
 相弁:いや,答えてください。
 当方:藏です。
 相弁:・・・・。
 当方:冗談です。
 (法廷内,爆笑)

 30年以上弁護士をし,100回以上は証人尋問をしている。けれども,これほどナイスな打ち返しははじめて。
 このような顧客のサポートをすることができて誇りに思った。

 次回までに裁判所から和解案が示される予定である。
 結果はどうあれ,当職の尋問については,顧客さまにはたいそう満足していただいた。
 つかれたけれど,充実の1日であった。

2012年2月14日火曜日

『薬害肝炎裁判史』



 (霧氷。ライオンの親子にみえませんか?)

 きょうは午前10時30分から福岡地裁で
 薬害肝炎の個別救済に関する期日があります。

 私が担当していた原告さんの和解も
 成立する予定です。

 ながくかかりました。
 その理由はこうです。

 被害者はある大学病院で心臓の手術を受け
 その際に、フィブリノゲン製剤の投与を受けました。

 いわゆる糊としての使用で
 臓器の接着剤として使用されたケースです。

 おなじようなケースが
 その時期にもう一例ありました。

 問題は、これらの使用時期が新製品の販売時期と
 かさなっていたことです。

 新製品では加熱処理がなされていたため
 肝炎ウイルスに感染する危険性は少なかったとされます。

 そのため、被告の国と企業から
 新製品が使われたとの反論がなされました。

 当時の執刀医の大学教授も
 国や企業側に立って、新製品だったと証言しました。

 執刀医がそう証言したのですから
 絶体絶命の危機です。

 でもわれわれは、執刀医の証言が他のカルテの記載と
 矛盾することをつぎつぎに明らかにしました。

 その結果、裁判所から和解勧告がなされ
 本日、無事に和解が成立する運びとなったわけです。

 というわけで手前味噌ですが、きょうのお奨めは
 薬害肝炎全国弁護団による『薬害肝炎裁判史』(日本評論社)。

 私もⅢ 運動、第1章 全面解決を求めて
 第1節 集団訴訟における運動の意義(218頁以下)

 第2章 薬害肝炎救済法の制定(298頁以下)
 を書いていますし

 Ⅵ 座談会(366頁以下)にも参加していますので
 興味のある方はご一読くださいませ。

2011年12月21日水曜日

『クライマーズ・ハイ』(8)



 (あれ?どっかで計算まちがえたので、きょう2本目の記事)

 さて、2007年のきょう12月22日
 薬害肝炎弁護団は重大な岐路に立たされていました。

 同年9月7日、仙台地裁で敗訴
 大阪、福岡、東京、名古屋を含む5地裁の判決が出そろいました。

 われわれは司法解決を追求するため、同月11日
 一番先行していた大阪高裁に対し和解の場を設定するよう上申。

 これを受け、大阪高裁は同月14日、双方に和解解決の可能性を打診
 11月7日、和解勧告をしました。

 その間、大阪高裁を舞台に、あるいは、舞台裏で
 和解解決をめざして協議をつづけました。

 しかし、司法協議の道のりは
 どこまでいっても被害者を切り捨てる解決案でした。

 12月1日、われわれはやむをえず
 司法協議に見切りをつけ、全員救済の政治決断を求めることに。

 原告らは病をおして
 寒風吹きすさぶ街頭で全員救済を訴えました。

 それでも政治解決の扉は開かず、年の瀬も押しつまった20日
 原告団は年内の運動を打ち切り、それぞれの地域に帰郷することに。

 これを発表した厚生労働省司法記者クラブ室内には
 原告たちの嗚咽につつまれました。

 もちろん、われわれも
 原告とともに泣きました。

 各地に散った弁護団は2日後の22日
 テレビ電話会議をおこないました。

 その日の最大の論点は
 和解協議を打ち切るかどうか。

 より正確には
 和解協議を打ち切ったと社会に宣言するかどうか。

 協議継続派は、和解協議を打ち切った場合、政治決断がなされないと
 最高裁までのながく険しい道しかなくなるという危険を懸念。

 協議打切派は、和解協議を打ち切ったことを明らかにしないと
 政治決断をせざるをえない立場に政府を追い込めないという考え。

 そのころ、原告団はうちつづく運動に疲弊しきっていました。
 世論も潮目にあり全員救済されなくてもやむをえないという意見も。

 どちらも相当な困難がみこまれ
 難しい判断を迫られたのでした。

 甲論乙駁、怒号がとびかいました。
 (テレビ電話越しでしたが)

 私は協議打切派の急先鋒で
 怒号のおおくを分担してしまいました。

 われわれもクライマーズ・ハイ状態にあったでしょう。でも
 解決にとってどちらの道が適切かという問題意識は共通していました。

 結局、翌23日、福田総裁が全員救済を表明
 薬害肝炎のたたかいは全面解決へ向かったのでした。

2011年12月15日木曜日

『クライマーズ・ハイ』(3) by.山歩きの好きな福岡の弁護士



 弁護士になりたてのころ
 こんな事件がありました。

 ある男性(夫)からの依頼。妻が警察官と不倫したので
 慰謝料を請求したいとのことでした。

 相手が相手なので
 妻の証言だけでは弱い。

 証言の裏をできるだけ
 とることにしました。

 いっしょに入ったという
 ラブホテルにも行きました。

 保安上ラブホテルは自動車のナンバーを控えているので
 当日、証言どおりの自動車が出入りした裏付けが得られました。

 家出中の妻の仕事先をその警察官が紹介していたので
 そこへも行きました。

 中洲・南新地のソープで
 ま昼間から調査に行くのはちょっと気がひけましたが。

 当時は、キャナルシティ(96年オープン)が建つ前ですから
 いまよりずっと入りにくい雰囲気でした。

 かくして証拠を固めたうえ交渉しましたが
 ラチがあきません。

 そこで提訴しました。
 予想されたことですが、被告側は頑強に否認。

 それでも証人尋問が終わったところで
 裁判官が被告側に和解を勧告しました。

 「妻をソープ(受付ですが)に紹介していて
 男女関係が無かったという心証はとれない」と。

 その結果、被告側も観念して
 慰謝料を支払う話となりました。

 被告が金策をするのを待つあいだ
 もう一期日が必要になりました。

 その間、どこからか事件のことを聞きつけて
 ある記者くんが取材にきました。

 「慰謝料を払う以上、不倫を認めたことになりますよね?」
 「ま、普通そうでしょう。」

 ところがその後、記者くんは被告側の弁護士からも
 アホなことに、コメントをとろうとしたらしい…。

 しばらくして裁判所から、和解条項に「和解成立後、事件のことを
 口外しない」という1項を入れたいと連絡がありました。

 被告側の弁護士が裁判官に泣きついてきたそうな。
 ま、普通そうなりますよね。

 依頼人の意向を尊重して
 不本意ながら和解を成立させました。

 和解後、記者くんから和解内容の確認を求められましたが
 「ノー・コメント」。

 その対応えに、記者くんはプリプリしてましたが
 「お門違いでしょう。」といいたい気持ちでした。

 マスコミとのお付きあいの難しさを学んだ
 最初の経験でした。

 (注:相手方のコメントをとるなといっているのではなく
 時期が悪いといっていだけなので、念のため)

                ちくし法律事務所 弁護士 浦田秀徳

2011年10月5日水曜日

 肺炎・多臓器不全で亡くなった事案で和解



 入院中の母親が肺炎による多臓器不全で亡くなったとされ
 原告はその子どもたち、被告は入院先の医療機関。

 診療義務違反があったとして損害賠償を請求していたところ
 昨日、和解が成立しました。

 咳症状がつづき、胸の痛み、食欲なし、倦怠感、黄色の痰が出ていて
 死亡診断書には肺炎→多臓器不全→死亡という機序が記載されていました。

 他方、剖検がされず、レントゲン検査等の結果によれば
 重症の肺炎像が見られなかったことなどから、機序が争点になりました。

 この点、故人にはコントロール不良の糖尿病が基礎疾患としてあり
 後医に転送されたさい重度のアシドーシスになっていました。

 糖尿病患者は、感染症(肺炎を含む)が重症化する危険があり
 糖尿病の悪化はアシドーシス、昏睡、多臓器不全になる可能性があります。

 こうしたことから
 裁判所は和解案において当方の主張する機序を支持しました。

 進行がはやかったことから
 診療義務違反と死亡との間の因果関係も争点になりました。

 喀痰細胞診検査で強い炎症背景が認められた時点で、血液検査を実施し
 抗菌剤投与、インスリン療法を開始すれば死亡が回避できたはず。

 この点も裁判所はわれわれの見解を支持しました。
 こうしてわれわれの請求を基本的に認める和解案が示されました。

 これを医療機関側も受け入れ
 昨日の和解成立となりました。

 医療過誤裁判は人の生命、医療という専門分野にわけいって
 真相をさがし、あきらかにするという非常に困難な訴訟です。

 でもご遺族たちの和解後のお顔を拝見すると
 取り組んでほんとうに良かったなと思いました。
 

2011年9月20日火曜日

 店舗明け渡し請求事件(解決)



 店舗明け渡し請求事件
 和解が成立しました。

 こちらが賃料滞納で契約解除され
 訴えられていた側です。

 賃貸借契約は売買と異なって
 継続的な契約関係が生じます。

 それゆえ、賃料の不払いがあれば
 即アウトというわけではありません。

 それが家主と賃借人との間の信頼関係を破壊した
 とみられなければ契約を解除することができません。

 ただ本件では500万円以上滞納していたので
 文句なくアウトです。

 普通、店舗の明け渡し事件では
 できるだけ早く明け渡してもらうことが肝要です。

 営業不振により賃料を滞納していることから
 賃料や損害金の回収まではできないのが一般的です。

 本件では借主の親族が連帯保証人となっており
 その方が自宅を所有していたことが交渉を難しくしました。

 また貸主とその弁護士が大阪の方だったので
 面談ではなく主に電話を介しての交渉になりました。

 まずは滞納賃料や損害金をこれ以上増やさないよう
 明け渡しの期日と手順を決め、これを実行しました。

 残るは滞納賃料と損害金の減額交渉です。
 滞納賃料が500万円を超えていたことから難航しました。
 
 借主のみならず連帯保証人の資産・収入・負債の状況を
 洗いざらいオープンにし、貸主側の理解を求めました。

 裁判所を仲介者にした数度におよぶ粘り強い交渉の結果
 なんとか和解にこぎつけました。
 
 依頼者には心からほっとし
 感謝していただけました。ほんとうに良かったです。
 

2011年4月25日月曜日

 労災事故&交通事故&医療事故


 労災事故&交通事故&医療事故?という3重困難な事件が解決しました。
 作業中に交通事故に遭い、診断・治療が遅れ、障害が後遺した事案。

 労災保険は所得の一部と慰謝料等を補償するものではないため
 不足分の損害賠償を求めて雇主、車の所有者らを訴えたものです。

 損害保険と生命保険のちがいをご存じでしょうか?
 生命保険は加入している口数だけ保険金がおります。

 これに対し、損害保険は複数口加入していても1口しか出ません。
 それにより損害が補填されるからです。

 医療裁判のハードルのほうが高いこともあり
 労災・交通事故裁判に専念することにしました。
 (2兎を追うものは1兎も得ず、なので)

 福岡地裁で勝訴判決を獲得し、被告らが控訴したものの
 福岡高裁で和解が成立しました。

 一審では、労災事故・交通事故の発生そのものが争点に
 労災事故の性格上、目撃できる者は被告企業に集中し多勢に無勢。

 さらに、もととなった症状の診断がおくれたために
 障害をひきおこした事故の存在そのものも不安定に。

 (むかし短期間に3度交通事故に遭ったために、因果関係の証明が
 難しくなった事件がありました。複数の不幸に遭うとさらなる不幸が
 まっているというのが訴訟制度の難しいところ)

 それでも長期間にわたる治療実績があることや
 労災による障害認定を受けていたことから、一審勝訴。

 高等裁判所では、労災事故・交通事故の存在を前提に  
 主に、事故と障害との間の因果関係が争われました。

 障害の発生原因が他にあるという、いわゆる他原因主張です。
 他原因が医学的な論点であったことから、医学論争となりました。

 損保会社側からは、医師の鑑定書が複数提出されました。
 当方も、診療にあたった医師の鑑定書を2通提出しました。

 この段階で、高裁から和解勧告がなされました。
 和解案は、事故と因果関係を認めた上で、素因減額をするというもの。

 素因とは、損害の発生及び拡大に影響を及ぼす被害者側の事情
 その理由により、賠償額を減額するのが素因減額の考え方です。

 一審・福岡地裁が認めた賠償額が削られることに不服がありましたが
 高等裁判所の和解案であることを考慮して受諾、和解が成立しました。
 
 裁判は証拠によって事実を立証しなければならず
 複数の要因が重なると、すべての事実が存在しないことにも。

 そんな錯綜した事件でした。
 

2010年11月17日水曜日

 ひとりはみんなのために、みんなは?



 月曜は薬害エイズ事件の
 きのうは薬害肝炎事件の原告弁護団会議でした。

 こういうと、まだやってんの?
 とよくいわれます。

 薬害エイズ事件でいえば政府との和解は1996年
 ですから14年になります。

 たしかに当時厚生大臣だった菅直人さんが
 首相となって「予想外の」政権運営をしいられている
 ぐらいの時間が経っています。

 しかしエイズという病は
 今日明日に死に至る病ではなくなり
 慢性疾患となったとはいえ
 おおくの困難な問題をいまだ抱えています。

 ①治癒をもたらす特効薬がないこと
 ②症状の進行をおさえる服薬が著しく困難であること
 ③抗エイズ薬はやっかいな副作用がおおいこと
 ④感染症であること
 ⑤性感染による患者が増えていること
 ⑥差別・偏見がいまなお厳しいこと
 ⑦心理・精神的な傷に対するサポートが必要であること
 など。

 薬害被害者のばあい、つぎのような問題もあります。

 ⑧血液製剤による肝炎、肝硬変をほぼ合併してること
  その治療も難しいこと
 ⑨基礎疾患である血友病のコントロールが必要であること
 ⑩血友病にともなう整形外科疾患をほぼ合併していること
 など。

 さらに医療環境にも一般と異なる障害がおおいのです。
 患者をうけいれる医療機関が地域にまったくない
 という信じがたい状況ではなくなり
 熱心にとりくんでくれる医療関係者がふえたとはいえ。

 医療環境の整備・向上という課題解決のため
 九州の拠点病院、政府との間で毎年一回協議しています。
 
 差別・偏見の解消、薬害再発防止などの課題もあります。
 肝炎の原告らもほぼ同じような課題に取り組んでいます。

 彼・彼女らのねばりづよい運動の成果は
 薬害被害者以外の患者の利益にもなります。

 差別・偏見のない社会、薬害のない社会は
 われわれみんなのためになります。
 
 なので、まだやってんの?
 などと冷たいことをいわないで
 心からのご理解とご支援をお願いします。