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2021年11月29日月曜日

ある遺産分割調停事件

 きのうはある遺産分割調停事件が解決した。裁判所における調停条項のほかに、調停外で合意書を締結した。昨年4月に受任しているので、解決までに1年半以上かかっている。

依頼人の関係者が自分の関係者の知りあいであったりして、気をつかう事件だった。地域に根ざして長らくやっていると、こういう事件が増えてくる。

正式に調停の土俵にのっている被相続人は一人だが、最終的には3人の被相続人の相続事件について全面解決した。兄弟姉妹間の争いであり、実家に相手方の経営する会社の住所があったりして、いろいろと複雑な権利関係にあった。

調停は基本的には話合いであるので、当事者が納得すればどのような解決でもOK。しかし話合いがまとまらなければ決裂し、審判や裁判になる。

審判や裁判になったらどうなるという見通しを北極星として、そこを着地点として見据えて話合いをすすめていくことになる。審判や裁判は裁判官がすることなので、予想が100%正答するということはない。ときに、外れることもありうる。そこが難しい。

むろん、証拠の有無が大事で、最後はものを言うことになる。本件でもやはり証拠の有無が問題になりなった。同じ事案について双方に弁護士がついて見解がわかれるのは、この証拠の評価が異なるからであることが多い。

相手方からは5,000万円もの請求がなされたけれども、それを裏付ける証拠はうすいようだった。それで、相手方の要求は、一部をのぞき、つっぱねる方向での話合いを続けた。

結果、5,000万円の支払いはしないで解決することができた。一部をのぞき、ほぼ完勝。めでたし、めでたし。

※写真は先日のほぼ皆既月食。

2017年12月4日月曜日

『水戸黄門』のように,なぜ正義が勝たないのか?筑紫野市の弁護士の回答


          (嵐山・亀山の紅葉)

 「正義は必ず勝つ」といわれる。たしかに『水戸黄門』や『遠山の金さん』などではそうなっている。しかし,実務ではそうならないことも多い。みなさんは,日ごろから『水戸黄門』や『遠山の金さん』などをご覧になっていて,「正義は必ず勝つ」世界観になじんでいられるので,そのギャップに唖然とされることが多い。このギャップはどこから来るのだろうか。

 たとえば,1週間前の午後9時,家の前の暗がりで,Bに殴打され,全治2週間の怪我を負わされたとする。民事裁判でBに対し損害賠償が認められるには,上記殴打の事実について,(Bが否認すれば)こちらが証明しなければならない。たまたま目撃者がいればよい。でもいないことが多い。たまたま目撃者がいたとしても,どこの誰だか分からないことも多い。どこの誰だか分かっているのに,関わりあいになることを恐れて協力してくれないことも多い。そうすると,たかだか1週間前の事件なのに,正義が実現されないことになってしまう。

 では『水戸黄門』や『遠山の金さん』では,なぜ「正義が勝つ」ことになっているのであろうか?それにはこのようなカラクリがある。すなわち,『水戸黄門』では,風車の弥七が天井裏にひそんでいて,悪代官と越後屋の悪だくみを目撃している。『遠山の金さん』ではなんと,裁判官じしんが庶民のふりをして事件現場を目撃している。

 しかし,実際の裁判ではこのようなことはありえない。裁判官が事件の現場に偶然いあわせることは100%ありえないし,みずから捜査みたいのことをすることもありえない。また,仮に風車の弥七みたいな手下がいたとしても,悪代官の天井裏にいる時点で住居侵入罪で逮捕である。

 そうなると,悪事や事件を証明することができない。すなわち,正義が勝つことが難しい。みなさんは,ほかならぬ自分が見聞きし,体験した事実であるから,証明は十分と思っておられる。残念ながら,民事裁判では当事者の証言は証拠価値が著しく低い。加害者が嘘をついていると被害者が言っても,裁判官にはどちらが嘘をついているかの判定が難しいのである(このことも理解していただくことが難しい。でも自分が裁判官であったとして,Aが赤信号だったといい,Bが青信号だったといったときに,どう判定するのか想像していただきたい。)。

 かくて今日も正義が必ず勝つとはいえず,『水戸黄門』的世界観からして不満な人々が事務所をあとにしていかれることになる・・・。

2016年2月20日土曜日

契約書がないんです・・・

民法のおはなし
このブログをお読みの皆さん
朝起きてから、今の瞬間までに、あなたはどんな契約をしましたか?

妻に朝食を作ってあげた
子どもを保育園に預けた
自動販売機で、缶コーヒー買った
職場まで、電車とバスに乗った
会社のために、一生懸命働いた
居酒屋で飲んで、カラオケにも行った

これって、全部、契約ですね
契約って、どんな内容でもよいという原則があります
(老婆心ながら、殺人契約とか、不倫の契約なんてのはだめですよ)
”こうして欲しいな”と言う人がいて、”そうしてあげるよ”と言う人がいれば、契約は完全に成立しています
口約束でいいんです
それどこか、自動販売機とは口もきいていないくらいですね

そうやって、私たちの日常は、ものすごい数の契約で成り立っています

懐かしい再会~トラブル発生
10代後半のある青年のお手伝いをしたことがありました
あれから15年
33歳 2人のかわいい子どもたちをもつお父さんになった彼が、事務所に来ました
一人前の大工として日々忙しくしている
なんて話を聞くと、まるでわが子の成長をみるかの思いになります

おっと、弁護士なんて因果な商売なひとのところに、そんな素敵な話だけをしに来られたはずはないですね
トラブル発生です
「いい仕事をしたのに、元請が代金を支払ってくれない!」
「契約書もないんです!」
とあわてた様子

さてさて、民法のお話からすれば、どうでしょうか。
元請から”仕事やってくれ”と言われて、元青年が”はいよ”って言って仕事したんだから、請負契約は完全に成立しています

神様がいてくれたら、これで、元青年の勝利確定

ところが
神様のいない悲しいこの世では、どうなるんでしょうか。

さてどうする?
まずは、弁護士として、元青年の代理人となって、相手方と交渉をすることができます

それでも相手方が応じなければ、裁判をするほかありません
裁判では、裁判官に、契約のあるなしを決めてもらうことになります
残念なことに、裁判官は神様ではなくて、私たちと同じ人間にすぎません
そこで、登場するのが「証拠」です
もちろん、必要事項が全部書かれている契約書があれば、元青年の勝利が確信できます
でも、契約書がなくても、あきらめることはありません
相手方とやり取りをした請求書、見積書、手紙、ファックス、メモ用紙
残っているありとあらゆるものを「証拠」として使うことができます
契約書がないというだけで、あきらめることはないのです

教訓ちくし法律事務所では多数の請負代金請求の事案を扱ってきました
逆の言い方をすれば、大工さんの世界は、口約束をひっくり返されるというトラブルが多い職場であるということですね
裁判で勝負をつけることができるとはいえ、できればスムーズに支払いをしてほしいところ
です
是非、契約書をもらうことを心がけてください

ついでに注意~時効請負代金は、3年という短い期間で時効にかかってしまいます
是非、早期の解決をお勧めいたします