2019年1月17日木曜日
松と梅のめでたさ
成人式は能楽師・今村嘉太郎さん主催の能楽新春コンサートにいってきました。新年を言祝ぎ,とても晴れやかで楽しい会でした。
演目は,『高砂』,『老松』,『東北』など。いずれも松や梅がでてきて目出度い,新年の門出にふさわしいもの。江戸城では正月,必ずこの3曲を演っていたそうです。
『高砂』は結婚式の定番なので,みなさんご存知でしょう。相生の松によせて夫婦愛と長寿を愛で人生を言祝ぐめでたい曲です。ワキは九州阿蘇宮の神官ですから,九州とゆかりがあります。舞台は播磨国の高砂の浦。高砂の松と住吉の松の精がでてきます。松は冬でも枯れず緑であることから,人は古来,その生命力に憧れ,あやかりたいと考えてきたんですね。
『老松』は,地元太宰府ゆかりの曲です。福岡県民ならずとも,大宰府にながされた菅原道真公を追って京都から飛んできた「飛梅」の話はご存知でしょう。天満宮のむかって右手にいまも花を咲かせていますね。昨日書いた原田マハさんのトークショーにでてきた猫の名も「飛梅太」でした。飛梅の話にはつづきがあって,松がそのあとを追ってきたのです。その名も「追松」。曲名では『老松』となっていますが,「追松」と表記したほうがもとの話とあいやすい。高砂は松と松のカップルでしたが,この曲では梅と松のカップルです。梅もまた冬のさなかに,他の花に先駆けて花を咲かせるので,生命力,さきがけとしての魅力,凛とした姿勢,希望などを感じさせます。松ととも古来愛されてきたゆえんでしょう。
『東北』(「とうほく」ではなく,「とうぼく」と読むそうです。)は,前2曲とちがい,九州とのゆかりはありません。筆者はむかし岸和田に住んでいたのですが,そちらとゆかりがあります。岸和田はむかし和泉国と呼ばれていました。百人一首のなかに,和泉式部という女流歌人がいることはご存知でしょう。式部は夫が和泉守だったことから,和泉式部と呼ばれるようになったそうです。岸和田には「和泉式部ゆかりの恋の淵」なるものがあります。
さて式部は,これまた有名な中宮彰子につかえていました。藤原道長の娘で,『源氏物語』を書いたことでも有名な紫式部もつかえていました。道長の没後,彼が建立した法成寺の東北に建てられたのが東北院です。その庭には,和泉式部が手植えした梅があります。その名は「軒端の梅」。
謡曲『東北』には和泉式部の霊があらわれます。式部は歌舞の菩薩になっています。生前の思いでを語り,和歌の徳,仏教のありがたさを説いて舞をまいます。
あらざらむ この世の外の 思ひ出に
今ひとたびの 逢うこともがな
和泉式部
2012年9月24日月曜日
『謡曲・狂言』
能は,豊臣秀吉がパトロンとして
保護したことがきっかけで近世に隆盛したらしい。
信長につかえ,ひとたらしの天才といわれた秀吉こそ
人の表情のかすかな動きを読みとる芸のパトロンとしてふさわしい。
「能のかたち」展がおもしろかったので
博物館の売店で,関連本を買い,読みました。
例の「ビギナーズ・クラッシックス 日本の古典」シリーズの
網本尚子編・『謡曲・狂言』(角川文庫)。
謡曲として
『高砂』 初番目物(脇能)
『敦盛』 二番目物(修羅物)
『井筒』 三番目物(鬘物)
『隅田川』 四番目物(雑物)
『鵺』 五番目物(切能)
以上5作品が収められています。
初番から五番目まで,この順に演じられるらしい。
初番目物を序曲と考えれば
起承転結,交響曲の構成に似ています。
やはり人間を飽きさせず
舞台に引きつける工夫なのでしょうね。
『高砂』は結婚式でおなじみ
高砂と住吉の松の精の仲良くおめでたいお話。
『敦盛』は平家物語の有名な段
『井筒』は伊勢物語に材をとられています。
『隅田川』も伊勢物語の
例の都鳥の話をベースにしています。
『鵺』は,ご存知
源頼政の鵺退治の話です。
いずれもおなじみの話なので
さっと読めました。
修習生時代にいちど
国立劇場に連れていかれ,能を観ました。
当時,歌舞伎は楽しめたけれど
能はさっぱり(寝てしまいました)。
その後も,歌舞伎については博多座に
ご招待を受けたりして,観劇の機会がありました。
でも能はそのまんまに。
今回を機にいちど観劇してみたくなりました。
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