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2018年3月14日水曜日

遺産分割調停が成立しました。


 ある遺産分割事件の調停が成立しました。
 相続人は,伯父と甥2人の3人です。

 ある相続人の手許で行方不明となった預貯金がありましたが,半分くらい返金することで合意ができました。
 被相続人の生前,死後を問わず,行方不明の預貯金の処理はむずかしい。争いになれば,地方裁判所でその存否を争わなければなりません。
 本件では,地裁での結論予測やそこに至るまでの手間・ヒマ・費用などの衡量をもとに,上記解決ができました。

 特別受益・寄与分の主張はなかったので,遺産を3等分することに争いはありませんでした。

 問題は,遺産のなかに不動産が存在し,そこにある相続人の子どもが住んでいることでした。
 関係者のなかに,不動産が欲しくて,かつ,現金が用意できる人がいれば,その人が不動産を取得し,その余の相続人に代償金を支払うという解決ができます。たとえば,3,000万円の不動産をAが取得し,その代償として,AがB,Cに対し1000万円ずつ支払うという方法です。
 本件ではこれによることができなかったので,不動産を売却し,経費を控除した残金を3分の1ずつ分配することになりました。現在,不動産業者に依頼して売却中です。

 というわけで,調停が成立したものの,紛争全体が決着をみるためには不動産の売却をまたなければなりません。が,とまれ一応の中間点は到達です。

2015年12月14日月曜日

法の不知はこれを許さず(顧問企業研修③)


「法の不知はこれを許さず」
あるいは,「法の不知は害する」。
という法格言があります。

主に刑法の分野で議論されます。
「法律を知らなかったとしても,そのことによって,
罪を犯す意思がなかったとすることはできない。」(刑法38条3項本文)

速度違反で捕まったときに,「この道路が時速○○キロメートル規制
ということは知らんかったので・・・」という弁解は許されないということです。


あまり論じられませんが,この問題は刑事法の分野だけでなく
民事法,行政法の分野でも問題になりえます。

膨大な六法全書,弁護士や検察官,裁判官でさえ
おそらく全部知っているということはないでしょう。

お客さんから,すごいですねぇ~と持ちあげられますが
実はぜんぶは知りません。

とくに近時,社会が複雑になり,かつ,変動速度を速めているので
法律も日々制定・改正されていきます。

法律だけでなく,下位の政令・省令や通達まで含めると
とうてい手に負えるものではありません。

社会生活を律するルールはこれら制定法だけでなく
判例法もあります。

裁判所も日々判決を言い渡し
それらが積み重なって判例法を形成しています。

英米法などは
判例法を基本としているぐらいです。


われわれが日ごろ接する例で多いのは
相続・遺産分割や時効に関するルールです。

きょうは相続に関するルールについて紹介し
時効などについてはまたの機会に。


相続に関して,民法の相続編は
2とおりの制度を定めています。

ひとつは法定相続制度
ひとつは遺言制度です。

洋服でいえば,前者はレディメイド
後者はオーダーメイド

食事でいえば,前者は定食(シェフのお薦め)
後者はアラカルトです。

相続発生のきっかけとなる亡くなった人のことを
被相続人といいます。

相続のしかたについて,被相続人があれこれと
指示をするのが,遺言制度です。

それに対して,民法がこのように分けなさいと
指示をするのが,法定相続制度です。

遺言があればこれが優先し
なければ法定相続によることになります。


ただし,遺言があるにせよ,ないにせよ
相続人どうしで,どのように分けるかは決められます。

相続人どうしの仲が悪く,話がつかないのであれば
遺言や法定相続がその解決指針となります。

相続人どうしで話がつかないときには
家裁の裁判官が分け方を決めることになります(審判)。

その際に準拠する解決指針が
遺言や法定相続になります。

配偶者がいて,子ども2人,家庭円満であれば
じぶんたちで話し合って決めればよいです。

法定相続では,夫が亡くなったばあい
妻2分の1,子どもたち4分の1ずつです。

ですが,遺族で話し合い
母親がぜんぶ相続することにすることも多いです。

このような家族であれば
遺言をつくらなければならない必要性も低いです。


逆に,遺言をつくったほうがよい場合があります。
でも往々にしてあまり作られていません。

法定相続制度は,100件の相続が発生したときに
だいたい70~80件くらいはうまくいくように作られています。

しかし,残りの20~30件については
どうかなという感じになります。

たとえば,子の1人が両親と同居して
親の介護を長らくしてきたような場合です。

3人兄弟であれば
他の兄弟と平等に3分の1となります。

介護をしてきたのが長男の嫁であれば
まったく相続分がありません。

寄与分や特別受益という調整規定があるものの
うまく機能していないと思います。

寄与分は,親の商売を長男が手伝って遺産の形成に寄与したような場合
多めに相続できるという制度です。

家裁での遺産分割調停や審判も裁判所でおこなうことなので
争いのある事実を主張するときは証拠の裏付けが必要になります。

親の介護を長年おこなってきたことはともかく
それによって遺産が増加,もしくは減少しなかったことの証明は困難です。

特別受益は,逆に,生前に贈与を受け取っている場合
遺産の先渡しとして勘定されるという制度です。

農家で長男が農業を手伝っているようなとき
田畑を生前贈与している場合があります。

親の意思としては長男に多く相続させるつもりだったと思われますが
特別受益制度によると,遺産をもらえなくなったりします。

このように法定相続をそのまま適用したのでは
不公平感が残る,そのようなケースでは遺言をつくる必要があります。


しかし,被相続人が亡くなってから相談にきたのでは遅すぎる
いまさら,どうもなりません。

その際,ついつい「生前に遺言書をつくってもらっておけば
よかったですねぇ」と言わずもがなのことを言ってしまいます。

その場合,よくある反応が
「そんなことになるとは知りませんでした。」です。

むろん,遺言制度じたいを知らないことはないでしょうが
親の介護を長らくしても報われないことを知らなかったということでしょう。

そんなときに頭をよぎるのが
「法の不知はこれを許さず」,「法の不知は害する」です。

日々変化する膨大な法令をぜんぶ知っていることは不可能でしょうが
相続など基本的なところはセミナーなどで押さえておいたほうがいいでしょうね。