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2021年9月7日火曜日

法律相談はむずかしい


  弁護士の仕事のうちで、弁護士になりたてのころは反対尋問などがむずかしく感じる。しかし、さいきんはほんとうにむずかしいのは法律相談だと思う。

きのう、ある相談があった。おなじ相談者のかた、かつ、おなじ事案で3度目だ。なぜか。まず、紛争内容が不確実で不確定である。

ある土地を複数の人間で共有している事案だ。共有地の処分は全員一致が必要なので、自分だけでは決められない。

なかには亡くなっている人も複数いて、相続関係が整理されていない。さらに、全員が相続放棄をしている当事者もいる。相続財産管理人の選任が必要である。それには手間と費用がかかる。

つぎに土地の価格であるが、ある当事者からある価格が示されている。しかし、インターネットで近隣の価格を調べると、その4倍くらいはしそうである。

またこの土地のうえには解体が必要な建物が建っていて、所有者が別である。そしてこちらも相続が発生している。建物の中には亡くなった方の家財が存在している。どうも水害にも遭ったらしい。建物の解体や家財の処分が必要だが、その費用がはっきりしない。

やむをえず変数は変数として説明するのであるが、変数のままではなかなか理解しづらい。土地の価格も上ものの処分価格も両方とも変数だからなおさらだ。

物件の価格がそれなりであれば、方針選択はそれほどむずかしくない。しかし損得微妙だと、とてもむずかしい。費用を払って弁護士に依頼する事案かどうか、さらに微妙である。

民法は紛争解決のルールを定めている。トランプのルールのようなものである。遺産分割協議などで、主として長男がこのルールに納得されないことがある。しかし、民法は何百人という国会議員が決めたものなので、いち裁判官、いち弁護士が変えられるものではない。

もちろんすべての当事者が納得すれば、そのようなルールにしたがう必要はない。しかし一人でも反対者がいれば、民法のルールどおりに解決することになる。そのアンパイヤが裁判官である。

共有物に関する紛争解決ルールは、共有物分割請求をおこなうか、持分を放棄するかである。持分の放棄は、この紛争から早期に離脱するよい手段である。しかし、損得の勘定がわからなければ決められない。

などなど説明して、すっぱり理解されるかたはすくない。こちらの説明が終わったとたん、いちばん最初の質問をされることがすくなくない。30分の説明が無駄だったということが分かる。

細かな点まで正確で丁寧な説明がよいかどうかはケース・バイ・ケースだ。細かな説明の理解が難しければ、ざっくり説明するしかない。それでざっくり説明してみた。するとやはり、またいちばん最初の質問をされた。う~ん。

法律相談のむすびは対応方針について選択肢を示すことになる。作戦Aと作戦Bだ。作戦Aだと道のりは長いけれども比較的安全。作戦Bだと近道だけれどもデコボコしている。どちらにしますか。

これもなかなか決められない。かくて3度目の法律相談とあいなったのである。しかし、紛争は動かすことだけが対応方針ではない。経過観察する、もっとざっくりいえば放置することにより事態が好転することもある。

本件は放置していたことにより、他の当事者がいろいろと動いてくれ、問題状況が見えやすく改善された。なので、最初の相談のときよりは問題は簡単にわかりやすくなっていた。

しかしやはりきょうも決めきれない。よし、もう少し事態が見えやすく改善されるまで、もうしばらく様子を見ましょう。

2018年2月14日水曜日

ナイスな打ち返し


(燕岳東面)

 きのうは民事裁判の証人尋問だった。
 事案は,遺産預金のなかから故人の生前の治療費を精算したところ,その精算は認めないとして,同金員の返還を求められたもの。つまり,こちら側が被告事件である(よく誤解があるが,民事の被告は訴えられた側という以上の意味はない。刑事事件のような容疑を受けているのとはちがう。)。

 原告2人,被告2人の4人の尋問で計4時間の長丁場だった。
 被告のうち1人はアラ70の女性。
 尋問前から,頭がまっしろになって立ち往生したらどうしようと本人も心配し,当職もあやぶんでいた。

 ところが,フタをあけてみると,案ずるより産むがやすし。当職の主尋問に対してしっかりした供述をされた。

 問題は,つづいておこなわれる相手方弁護士による反対尋問。
 これまたしっかりした受け答え。事前の心配がなんだったのかと思える充実の時間だった。

 原告側の主張の要点は,上記治療費は,故人によってすでに精算されていたのではないかということ。関連して,当方が立て替えた金員の出所も争点となった。

 その出所の一部がタンス預金だという当方の主張・供述に対し,相手方弁護士から追求がおこなわれた。

 相弁:いったいそのタンス預金はどこに保管していたのですか?
 当方:夫にわからないところに保管していました。
 相弁:だから,それは具体的にはどこですか?
 当方:いやです。それは教えられません。
 相弁:いや,答えてください。
 当方:藏です。
 相弁:・・・・。
 当方:冗談です。
 (法廷内,爆笑)

 30年以上弁護士をし,100回以上は証人尋問をしている。けれども,これほどナイスな打ち返しははじめて。
 このような顧客のサポートをすることができて誇りに思った。

 次回までに裁判所から和解案が示される予定である。
 結果はどうあれ,当職の尋問については,顧客さまにはたいそう満足していただいた。
 つかれたけれど,充実の1日であった。

2013年2月7日木曜日

男と女の説明義務





(宝満山よりのぞむ英彦山)


むかしは人生の岐路でまよったら
ラジオや新聞に投書していました。

私は32歳主婦ですが,夫が酒乱で…
どうしたらいいでしょうか?とか。

さいきんは,やはり
ネットが主流でしょうか。

○○質問箱
とかいうやつ。

かれとは結婚紹介所で知りあい
とてもまじめな方です。

でも,最初のデートで連れて行かれたのが
ラーメン屋で,つぎが○クドナルド…。みたいな。

おおくの人が回答者になっているので
専門家による上から回答より現実的。


ちょっと前に本ブログで
「○○弁護士 彼女」の話をしました。

これはやはりはやりのようで
最近,こんな質問がいっぱい。

かれの名前を検索
すると…

元カノのブログにいきあたり
昔の写真がいっぱい。

かれに前科が判明!
どうしたらいいでしょうか?


弁護士をしていると,恋人どうしのほか
夫婦にも重大な隠し事があることにビックリします。

ま,もともと,男女間のことですから
多少のかけひき,隠し事はあるでしょう。

結婚前は目をあけよ,結婚後は目をつぶれ
などというぐらいですから。

(でも,こういう教訓がいわれるということは
ほとんどの人ができていないとういことだけれども)


性格の悪さは,自分からは
いわなくていいでしょう。

これは相手が自己責任で
見破る必要があるでしょうね。

障害や病気となると
どうなんでしょう?

夫婦関係は信頼関係のうえになりたつと思うので
やはり説明しておいたほうが無難な気がします。

重大な病気を隠していた夫を知っていますが
えっ?と思った記憶があります。

切れているんだったら
以前の恋愛関係も説明する必要ないでしょう。

前科は?
ボクだったら説明するような。


いまの時代,ネット検索でわかる話は
しておかねば,という配慮も必要なんでしょうね。

尋問対策でも,反対尋問で叩かれるところは
先に訊いて手当をしておきますから。

2011年11月7日月曜日

 点と線



 『点と線』(新潮文庫)は、ご承知のとおり
 松本清張の長編推理小説。

 わが福岡市香椎の海岸で
 男女の情死とおもわれる死体が発見され

 博多のベテラン刑事・鳥飼重太郎が
 犯人のアリバイを崩していきます。

 「点と線」という表現は
 依頼者への説明でよく利用させてもらいます。

 証拠には2種類あります。
 書証と人証です。

 書証は契約書や登記簿の記載事項など
 人証は証人の証言や原・被告本人の供述などです。

 書証は点
 人証は線です。

 裁判で提出された書証という点を
 人証という線でうまく結べるかどうかが勝敗を決します。

 すべての点がきれいな線で結ばれていれば真実とみなされ
 デコボコな線でしか結ばれていなければ虚偽とみなされます。

 実際はデコボコだったのかもしれません
 往々にして真相はデコボコのことも多いでしょう。

 でも裁判中の証言はどうしても嘘がおおくなるので
 このようにして判断しなければ勝敗を決することができません。

 ま、天動説と地動説どっちが真実か?
 という問題に対する解答の判定と似ているかもしれません。

 証人尋問、とくに反対尋問は
 証人の証言の矛盾を書証によって崩すばあいがほとんどです。

 みなさんも弁解のほころびをおぎなうためにまた弁解し
 その矛盾点をつかれて立ち往生した経験がありませんか?

 それはさておき、『点と線』で犯人が仕掛けたアリバイは
 現在ではテクノロジーの進歩により完全に陳腐化しています。

 われわれが読んでいて
 なんでそんな簡単なアリバイが解けないの!?という感じです。

 『点と線』が書かれたのは、私が生まれる前
 1957~58年のことです。

 時代的な制約ってやつです。
 こういうことってありますよね?