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2023年5月17日水曜日

残雪の槍ヶ岳(4)

 







 3日目。いよいよ槍ヶ岳をめざす。

横尾からは道は3つに分かれる。左に梓川を渡れば穂高方面、右に斜面を登れば蝶ヶ岳、まっすぐ梓川沿いに進めば槍ヶ岳である。

横尾から先、梓川を挟んで、氷河がけずったV字谷となる。槍沢である。槍沢の谷を進むと、ときどき前山越や樹木越に槍の穂先が見える(1枚目の写真)。

さいしょはオオシラビソなどの針葉樹林帯である。が、しばらく進むと森林限界となる。森林限界から先は、寒さに強い針葉樹でさえ生存できない厳しい世界である。

森林限界というもそこから先、樹木がまったく生育できないのかというとそうでもない。ダケカンバ(岳樺)ががんばっている。落葉広葉樹であり、この時期まだ葉を落としている。

雪の影響を受けつつもリズミカルに並んでいたり(2枚目の写真)、青空をバックに美しい樹影をこしらえたりしている(3枚目の写真)。心おどる。

槍沢のキャンプ地あたりになると、梓川は伏流し、残雪の下にかくれてしまう(4枚目の写真)。前を行くのは槍沢ロッジのスタッフ。毎日のように雪面の状況が変化するので、道しるべとなる旗の位置を微調整してくださっている。

他のコースとちがい、V字谷の底を行くので、(少なくとも晴れていれば)大きな道迷いはない。しかし、雪渓を踏み抜いて梓川に落ちてしまったりしたらたいへんだ。また雪崩も危険。両側にデブリ(雪崩の跡)が堆積している。これら危険がもっとも少ないと思われるルートに旗が立てられている。

大曲という谷が大きく湾曲しているところをすぎると、穂先に向かって急登の連続となる。正念場だ。

グリーンバンドをすぎると槍の穂先が見えてくる(5、6枚目の写真)。雪と岩のコントラストはもちろんだが、空の青の深さ、雲の白のまばゆさが美しい(是非、写真をクリックして拡大して見て欲しい。)。ことしも来ることができた。すべのことに感謝、感謝。

2023年5月16日火曜日

残雪の槍ヶ岳(3)蝶ヶ岳からの展望

 




 上高地から3時間歩いて横尾に着いた。きょうはここで宿泊。横尾から振り返ると、前穂とその北尾根が輝いていた(1枚目の写真)。美しい(しかし連休中、3人が滑落し、うち2人が亡くなっている)。

もともとは、まず常念岳に登り、稜線を縦走して蝶ヶ岳に登り、そして横尾に下山する計画だった。しかし、2日目午前中の天気は荒れるとの予報だった。強風と大雨。そこで急遽、常念岳を断念して、上高地から横尾入りすることに計画変更した。

天気予報の精度は格段に向上している。明日は14時から雨が降るというと、ほんとうに14時から雨が降り出すから驚きだ。山の天気が変わりやすいのは変わらない。けれども、天気予報の精度が向上したことにより、登山の安全性が増していることは間違いない。

他方でコロナ禍以降困っているのは、山小屋が完全予約制になったことだ。むかしはどんなに混雑していても、布団1枚に3人寝かしてでも、泊めてくれた。しかしコロナ禍以降、そういうわけにはいかなくなった。

むかしだったら、常念小屋で天気の回復をまって、蝶ヶ岳へ縦走していただろう。しかし山小屋の完全予約制により、そうもいかなくなった。その先の横尾山荘や槍ヶ岳山荘の予約が流れてしまったり、予約できなくなってしまうからだ。そのため、常念岳の登りを断念して、上高地から横尾にショートカットしたというわけだ。

2日目、午前9時まではかなりの雨量だが、それ以降は1ミリ程度と予報されていた。山荘で一日潰すのはもったいない。そこで、9時過ぎに小屋を出て、蝶ヶ岳(2677m)に登ることにした。

上高地の標高は1500mだから、標高差1200m。宝満山の標高が800mであるから、その1.5倍である。5時間半くらいのコースタイムだろうか。

雨のなかを出発したが、1時間程度で雨はあがった。この日、蝶ヶ岳に同じコースで登ったのは4グループ6人(くだりのときにさらに2グループ3人に出会った)だった。

5合目くらいから残雪となった。アイゼンを装着する。先行していたおじさんが先に進むかどうか迷っている。

夏道はみえない。オオシラビソの木につけられた道標やペンキマークを目印に登ることになる。トレースはあったりなかったり。ときどき判断に迷うところもあったが、おおむね地形に沿って登ることができた。

稜線部は雪が溶けて夏道が露出していた。しかし風が強い。夏であれば登山者が行き交っているところ、誰も歩いてはいない。

振り返ると、槍ヶ岳から穂高の稜線をのぞむことができた(2枚目の写真)。空は曇っているが、稜線にガスはかかっていない。

右端が槍ヶ岳。中央やや右に凹んでいる部分が難所として知られる大キレット。その左は穗高連峰である。

穗高連峰を拡大してみる(3枚目の写真)。右から北穗高岳、涸沢岳、奥穗高岳、前穂高岳。涸沢岳から下にエプロンのように白くなっているところが涸沢(左側に岩が点々とみえているのはザイテングラード)である。

さらに左手、南を見ると、木曾の御嶽山をのぞむことができた(4枚目の写真)。神々しい。霊峰と呼ぶにふさわしい。

2023年5月14日日曜日

残雪の槍ヶ岳(1)

 



 ことしも残雪の槍ヶ岳に登った。

名古屋に泊まり、朝一(といっても7時発)のJR特急ながので松本まで。そこからアルピコ交通上高地線に乗り換え、新島々駅へ。新島々駅横には梓川が流れている。

梓川(信濃川となって日本海にそそぐ。)は、槍ヶ岳に発する。なので、新島々から槍ヶ岳直下までは梓川をさかのぼる旅でもある。

新島々からはバスに乗って上高地まで。上高地は環境保全のためマイカーでの乗り入れが規制されている。福岡は雨だったが、上高地はよく晴れていた。

バスセンター横を梓川が流れている。梓川流域は花崗岩でできているため、水がとても澄んでいる。美しい。イワナが泳いでいる。

バスセンターから5分上流へ行くと河童橋がある。芥川龍之介の小説で有名なところ。

河童橋から上流には奥穗高岳を中心に穗高連峰がのぞめる(1枚目の写真)。梓川を前景とし、残雪をかぶった穗高連峰はいつみてもしびれる。

中央やや左手の峰が奥穗高岳。3190m、日本第3位。右上隅が前穂高岳。奥穂と前穂をむすぶ稜線が吊り尾根である。

奥穂から左手にいったん切れ落ちて、次に尖っているのがロバの耳、その次がジャンダルムである(裏側)。西穗高は画面さらに左側に見えている。北穂や涸沢岳は奥穂の向こう側にあり見えない。

中央部(残雪がないところ)が岳沢。夏は岳沢から紀美子平を経て、前穂でも奥穂でも登ることができる。いまの時期はまだまだ難しい。

河童橋から下流方面をふりかえると焼岳がのぞめる(2枚目の写真)。北アルブス唯一の活火山。噴煙をあげている。麓に大正池がある。焼岳の噴火で梓川が堰き止められてできた。きょうは寄っていくヒマがない。

写真右手の川縁にたくさん人が写っている。去年にくらべ3倍以上の人出だ。インバウンドも回復してきていて中国語、韓国語をはじめとする外国語を話す人や、イスラム系と思われる出で立ちの人も多い。

上高地から今日の宿泊地の横尾をめざす。梓川に沿って約3時間。途中、1時間ごとに明神、徳澤園という休憩ポイントがある。

明神あたりからは明神岳を(3枚目の写真)、徳澤あたりからは前穂の北尾根を(4枚目の写真)のぞむことができる。前穂北尾根は井上靖の小説『氷壁』の舞台になっている。

https://www.amazon.co.jp/%E6%B0%B7%E5%A3%81-%E6%96%B0%E6%BD%AE%E6%96%87%E5%BA%AB-%E4%BA%95%E4%B8%8A-%E9%9D%96/dp/4101063109

槍ヶ岳はまだまだ先だが、穂高の名峰たちの美しい姿に胸はたかなるばかりだ。

2021年9月8日水曜日

上高地

 

 夏に上高地に行った旨をSNSに投稿したせいか、上高地のみどころを訊かれることが増えています。今朝質問されたかたは10月河童橋近くに3泊の予定だそうです。いいですね ~(わが家も娘2人と9月に上高地宿泊を予定していたのですが、宣言延長のためキャンセルしようと考えています。残念です。)。

 上高地は槍穂連峰の懐深くにあります。むかしは島々から徳本峠を越えて1泊しないと入れませんでした。いまは山々をいくつものトンネルが貫いていて、バスやタクシーで入ることができます。環境保護のためマイカーで入ることはできません。

 標高1500メートル。1000メートルにつきマイナス6度ですから、地上より10度ほど涼しい。行くだけで涼をたのしむことができます。

 上高地は梓川の両岸に細長く広がっています。梓川は槍ヶ岳に発しています。槍穗高連峰は花崗岩でできているので、濁りのない清流になっています。

 上高地のヘソは河童橋です。芥川龍之介の小説にも出てきます。河童橋から上流をながめると奥穂を中心に穗高の山々、下流をながめると焼岳の姿を見ることができます。すぐ間近なところから3,000m級の山が立ち上がっているので迫力があります。

 河童橋からまず下流に向かいます。田代橋まで数分。左手に入ると帝国ホテルがあります。泊まる予算はないので、お茶とコーヒーで我慢します。そこから梓川沿いに樹林の散策ルートを通り、田代湿原・田代池を経て、焼岳の麓の大正池まで行きます。大正池は、焼岳が大正時代に噴火して梓川を堰き止めてできたものです。片道1時間30分。

 つぎに河童橋から上流に向かいます。数分で岳沢湿原に着きます。穗高の山々に降った雨が岳沢に伏流し、湧き水がこんこんとあふれています。このあたりでは野生の猿の群れに遭遇することが多い。

そこから1時間で明神、明神岳の麓にあります。ウエストンを案内した嘉紋次小屋、明神池があります。池では清流の王様、イワナがたくさん泳いでいます。

 そこからさらに1時間で徳澤園。井上靖の小説『氷壁』の舞台で、氷壁の宿と呼ばれています。ソフトクリームが女性に人気で、一度泊まってみたいのですが、槍・穂に登るには中途半端な位置にあり一度も泊まったことがありません。

 そこからさらに1時間行くと横尾です。山小屋ですが、風呂に入れます。梓川沿いにまっすぐ進めば槍ヶ岳、左に折れて梓川を渡れば涸沢・穗高方面です。横尾までは多少の登りくだりはあってもほぼ平坦です。が、ここから先は本格的な登山となります。

 横尾からさらに1時間30分ほど行くと涸沢に辿り着きます。年によって違いますが、9月末から10月はじめにかけて鮮やかに紅葉します。日本一と評価が高い。みささんも一度どうぞ。