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2023年11月9日木曜日

福岡公証役場訪問記

 

 福岡公証役場を訪問してきた。養育費請求権について公正証書を作成するためである。夫側の依頼であるので、正確には、作成させられるためである。

離婚に伴い、夫婦どちらかを親権者と定める。親権者とならなかった他方は、相手方に対し養育費の支払いを約束することになる。

未成年の子が成年に達するまでであるから10年以上の期間におよぶことが多い。本来的には、約束が守られなかった時点で、調停か裁判を行って、調停調書や審判・判決などの債務名義を得ることなる。

債務名義というのは、それに基づいて強制執行できる文書のことである。調停や裁判には時間と手間とお金がかかる。これをバイパスするための制度が公正証書を作成する方法である。

公正証書は遺言が知られているが、もちろん養育費請求権についても作成することができる。末尾に強制執行を認諾する文言をつけくわえれば、調停・裁判を経ずして強制執行をすることができる。

強制執行というのは、任意の支払いがないときに、相手方の給料や預貯金を差し押さえることができる制度である。むやみに認めると差し押さえられたほうの被害が大きいのであるが、養育費について認諾文言があるのであればやむをえない。

公証役場はおおむね法務局ごとに存在する。わが事務所の近くには筑紫公証役場が存在する。いつもはそこのお世話になっているのであるが、今回は相手側の弁護士の最寄りの役場を利用することになった。

その際、必要書類がいろいろある。そして通例、IDを証するものが必要である。ところが、今回は不要であるという。なぜかと問うと、公証人が知り合いだからだという。なんと司法研修所で同期の元裁判官であった。

地下鉄赤坂駅で降り、長浜方面へ向かう。右側に大きなテニスコートがある。むかし検察庁があったところだ。そこを左折すると、間もなく福岡公証役場だ。はじめてきた。

表札をみると、6人も公証人がいらっしゃる。そのうち半分は知っているお名前だ。中に入ると、送達、確定日付、認証、公正証書などに窓口が分かれている。筑紫公証役場のばあい、公証人は1人なので、窓口もシンプルである。いかにも役場という感じである。

しばらくして相手の弁護士もいらっしゃったので、中の部屋に入った。途中で、もう一人の知り合いの公証人の顔が見えたので、挨拶することができた。

そして公正証書を作成した。お隣の先生の声も大きく喧噪のため、朗読の声も聞き取りつらい。

公証人はさすがに司法研修時代と同じというわけにはいかないが、いまも毎日水泳に通ったいるとかで若々しい。つかの間の同窓会であった。

2023年9月13日水曜日

ある認知請求事件

 

 ある母から認知請求事件の依頼を受けた。認知とは親子関係があることを役所に届け出ることだ。認知心理学とかいう場合の認知とはすこし違う。

認知請求事件の依頼人は、基本的に未婚の母だ。結婚していれば嫡出の推定が働く(民法772条)。すなわち、妻が婚姻中に懐胎した子は夫の子と推定される。

父のほうは、妻に請求する必要はない。自分で役所に届け出ればよい。かくて認知請求は、未婚の母から父に対する請求という形をとる。

親子関係が確認されれば、養育費の支払義務等が発生するので、任意には応じない父もいる。

その場合、家庭内のことであるから、まず家庭裁判所へ調停を申し立てることになる。いわゆる調停前置である。

父が調停に応じてくれればよいが、父子関係を否認された場合、訴えを起こし、鑑定が必要になる。鑑定とは特別の知識・経験に基づく専門家の判定である。

ぼくが弁護士になったのは1986年だけれども、そのころは血液のABO型や父子が似ているかどうかというアバウトな鑑定だった(ドラマなどでも、父子じゃないという場面の根拠はたいがい血液型の違いだった。)。

しかしそれ以降、親子関係の鑑定技術は急速に発達した。いわゆるDNA鑑定である。それが日常実務レベルで使えるようにまでなったのである。

ワトソンとクリックが遺伝子(DNA)の二重らせん構造を発表したのが1953年。高校の教科書に掲載されたDNAのX線解析写真は2次元の対称的な斑点模様にすぎず、この映像からよく二重らせん構造に思い至ったものだと感心した。

2002年以降薬害肝炎裁判に取り組んだけれども、C型肝炎ウイルスが同定されたのは1989年である。それまで非A非B型肝炎とされていた。A型でもB型でもない肝炎という背理法のような定義であった。それが遺伝子レベルで同定できるようになったのである。

DNA鑑定が刑事事件に導入されたのが1991年。PCR法だ。そのころ以降、民事・家事事件にも順次DNA鑑定が導入された記憶だ。ただ当時は1件50万円くらい費用がかかったのではないかと思う。

ある議員さんから、故人のDNA鑑定ができるかどうか相談されたこともあった。遺髪を探してもらったけれども、DNA鑑定まではできなかった。

いまやドラッグストアの前を歩いていると、新型コロナのウイルス検査が1800円くらいでできるとうたっている。あれも立派な遺伝子検査だ。ただし、ウイルスなので、DNAではなくRNA検査である。安い。隔世の感とはこのことだ。

肝心の親子DNA鑑定の費用はというと、19,800円(ネット情報)。これまた安い。

https://seedna.co.jp/?utm_source=google&utm_medium=cpc&utm_campaign=dnatest&utm_content=cost&network=google_g&placement=&keyword=%E8%A6%AA%E5%AD%90%20%E9%91%91%E5%AE%9A%20%E8%B2%BB%E7%94%A8&device=&gad=1&gclid=CjwKCAjwu4WoBhBkEiwAojNdXote43J0ictQy8elJCR08QSGZ6Qz_u9IB-RucXLxKNkf2D6Ksa8ObhoCuVYQAvD_BwE

近時、婚姻関係でさえも不安定だ。3組に1組は離婚している。残る2組のうち1組も仲が悪い。SNSやマッチングアプリで知りあい、結婚。離婚相談の際、相手の親のことを尋ねると、会ったこともないという。2人の愛以外に結婚を支えるものがなにもない状態だ。

ましてや、婚姻関係のない父子関係を確認することに、どれだけの意味があるのか不安を覚える。でもやるしかない。認知された子どもの将来がすこしでもよいものになることを祈りつつ。

2018年12月25日火曜日

養育費がゼロに


(西穂独標から見たジャンダルムと奥穂)

 離婚する際,未成年者の子がいる場合,その親権者を父母どちらにするのか,養育費をいくらにするのかを決めます。

 未成年の子の親権者をだれにするのかは,子どもの幸せになるのはどちらかという観点から決められます。子どもが小学校の高学年になり,自分の意見をもつことができるようになれば,子どもの意見もきいて尊重されるようになります。

 養育費のほうは,いろいろ批判や見直しの動きもあるところですが,一般的には裁判所のホームページにアップされている算定表によることになります。

 子どもが成長するにつれ,当初は決めようがなかった高等教育にかかる費用や子どもの病気や交通事故の治療費など特別の出費の加算について,事後的・追加的に,話しあわれることもあります。

 親権者を母(妻)として養育費を支払っている場合に,妻が再婚したのでもう支払いをつづけなくてよいのではないかという相談を受けることがあります。

 気持ちはわかります。が,妻が再婚しただけでは養育費の支払いは免れません。妻が再婚しても,親子関係が切れるわけではないからです。

 さらに,養子縁組まで結べば,養育費を支払わなくてもよくなります。ただし,離婚の際の調停調書があるのなら,あらためて調停を申し立て,支払義務のないことを確認する必要があります。さもないと,給料の差押え等を受けるおそれがあるからです。

 以前から相談にこられた方は,調停を申し立てられましたが話がつかず,今般,審判で支払義務の取り消しがなされました。これは予想された結論なのですが,妻が話し合いに応じないため審判までなされました。
 
 もう5年ほど前の離婚なのですが,なかなか理性的にはふるまえないようですね。

2011年12月6日火曜日

「我が敵は我にあり」(2)



 私が弁護士になったころは、暴力団員が一般民事事件に
 介入してくることがよくありました。

 月に一度くらいは暴力団員と「引き合い」になりましたし
 彼らも自分たちのことを「裏の弁護士」と呼んだりしていました。

 とくに弁護士がいない地域における「裏の弁護士」の需要は高く
 そんな地域の紛争では「引き合い」になることが多かったです。

 (この意味でも、地域に弁護士がいることが
 大切なんですね。)

 いったん「引き合い」になると、いわゆる夜討ち朝駆けで
 朝と夕方、必ず脅迫めいた電話がかかってきました。

 そうした心理的負担から
 事件数が倍増したような気持ちになりました。

 あるとき、養育費の請求について、妻が暴力団員に取立てを依頼
 夫からその交渉を頼まれたことがありました。

 まずは暴力団事務所へ来い!といわれるところ
 そこまではよう行きませんと正直に対応します。

 そのうえで、市内の老舗ホテルのロビーで
 交渉することになりました。

 行ってみると、白いエナメルの靴を履いたいかにもという方々が
 ずらりとソファに並んでいます。

 喫茶室に行き、コーヒーを注文しますが
 手もとが震えるといけないので、飲めません。

 店員のひとたちも
 気の毒そうな目で見ています。

 相手方の要求は、養育費月3万円、年間36万円、20年弱分700万円
 を一括で支払えというもの。

 依頼者にそのようなお金はありませんし、養育費は子どもの権利なので
 一括して支払っても後に子どもからの請求を拒絶できません。

 それで、月々3万円の支払いしかできない
 と頑張ります。

 しばらく押し問答がつづいたのち
 しゃあないなぁと分割払いで話がつきました。

 2,3か月してから、また先方から電話
 元依頼者(夫)が支払いを怠っているとのこと…。

 やむなく先方に代わり、元依頼者にたいし
 ちゃんと支払うようにと厳しく注意する電話をしました。

 なんか暴力団員の手先となって
 取立てをしている気分に。

 こうしてそれから2年くらい、滞るたびに
 元依頼者に電話をしたのでした。

 2年たって暴力団員の電話はなくなりましたが
 元依頼者がきちんと支払いを続けたわけではなさそう。

 そのころ、有名な広域暴力団どうしの抗争があって
 自分の身が危なくなり、取立てどころではなくなったのでしょう。

 その後、暴力団対策法が制定されたこともあり
 暴力団員が一般民事事件に介入してくることは激減しました。
 
 それでも時々はあります。
 最近は、いわゆるヤミ金(闇金融)事件がおおいですね。

 違法な金融業、違法な高金利、いずれも犯罪
 でもそんなところから借りてしまう人にもスキがあります。

 交渉で解決することがほとんどですが
 ときにいつまでも引きずることがあります。

 交渉で解決しないときは
 刑事事件として対応するしかないです。

 いちばんは、このような人たちと一切関わらないことですね。
 (あまりにまっとうなまとめですみません。)

2011年10月20日木曜日

 離婚にいたる難路 



 さいきん離婚事件が2件解決しました。
 どちらも子どもが2人いるケースです。

 1件はまだ小・中学生
 1件はもう成人されています。

 離婚事件では、離婚するかどうかのほか
 親権、面接交渉の決め方がむずかしい。

 それまでの共同体をできるだけ動揺させないよう
 わかれるのが子どものためになります。

 でも最愛の伴侶を離婚により失うという事態は
 自己のアイデンティティを根本から動揺させる悲劇。

 心のなか、頭のなかでは、正負の感情がたえず渦巻き
 子どもたちの運命も小舟のごとく翻弄されます。

 こんかいは両親とも子どものことを最優先させ
 円満な妥結をはかってくれました。

 あとは財産分与、慰謝料、養育費などお金の問題
 これらは子どもの問題とちがって調整がしやすい。

 もちろん、配偶者の職業、地位、性格などによっては
 もめることもあります。

 子どもの問題で譲歩したことが
 思わずお金の問題となって噴出することもあります。

 そのような難路をとおって
 なんとか目的地に着くことができました。

 弁護士としてできることはここまで。
 あらたな幸せを是非つかんでほしいと願っています。