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2024年3月26日火曜日

弁護士の使命(1)

 

 ことし、わが事務所に新進気鋭の岡田弁護士が参画した。これで8人の弁護士、うち3人が女性という構成(37.5%)になった。まだまだというご意見もあろうが、社会一般、弁護士会全体の女性参画割合に比しまずまずの達成だろうと思う。

いまいろんな研修を受けてもらっている。思えばむかしは荒っぽかった。新人弁護士の研修制度など存在しなかった。「事件に飛び込んで自分で覚えろ」という感じ。

時代状況もある。ある先輩など、初めての仕事が2,000人の人々に対して演説をすることだったらしい。

自分が入ったころ、唯ひとりの先輩弁護士である稲村弁護士は事務所にいなかった。長崎じん肺訴訟をはじめとする数々の困難訴訟に取り組み、全国各地を飛び回っていたからである。

当職がはじめて手がけた事件は、近所の工務店の社長さんから依頼を受けた動産執行事件だった。動産執行とは建築資材等の差押えだ。

ご多分にもれず稲村弁護士は事務所にいない。事件処理の方法ほか、費用をいくらにするのかなどまったく五里霧中であった。弁護士費用を告げたときには、声がふるえた気がした。

それに比し、いまは研修制度が手厚く存在する。まずもって弁護士会が新人弁護士に対して多くの講座を用意している。わが事務所としても、多数のメニューを用意している。

まずすべての事件について、先輩弁護士と共同受任する。そして相談の仕方、受任の仕方、職務の遂行の仕方について、個別具体的な事件を通じて学ぶことになっている。On the Job Training(OJT)だ。そして少しずつ自立・自律をはかることになる。

あわせて座学も用意している。7人の先輩弁護士からのマンツーマン教育だ。4人の若い弁護士からは、交通事故事件や離婚事件のノウハウの話がなされる。こうして秘伝の必殺技も伝授される(かもしれない)。

残る3人の先輩弁護士からなされるのは、もうすこし高尚な話だ(いや、そのはずだ)。当職に振られた話題は「大規模集団訴訟について」。このことはすなわち「弁護士の使命」について話すということだ。

                                  つづく

2023年11月9日木曜日

福岡公証役場訪問記

 

 福岡公証役場を訪問してきた。養育費請求権について公正証書を作成するためである。夫側の依頼であるので、正確には、作成させられるためである。

離婚に伴い、夫婦どちらかを親権者と定める。親権者とならなかった他方は、相手方に対し養育費の支払いを約束することになる。

未成年の子が成年に達するまでであるから10年以上の期間におよぶことが多い。本来的には、約束が守られなかった時点で、調停か裁判を行って、調停調書や審判・判決などの債務名義を得ることなる。

債務名義というのは、それに基づいて強制執行できる文書のことである。調停や裁判には時間と手間とお金がかかる。これをバイパスするための制度が公正証書を作成する方法である。

公正証書は遺言が知られているが、もちろん養育費請求権についても作成することができる。末尾に強制執行を認諾する文言をつけくわえれば、調停・裁判を経ずして強制執行をすることができる。

強制執行というのは、任意の支払いがないときに、相手方の給料や預貯金を差し押さえることができる制度である。むやみに認めると差し押さえられたほうの被害が大きいのであるが、養育費について認諾文言があるのであればやむをえない。

公証役場はおおむね法務局ごとに存在する。わが事務所の近くには筑紫公証役場が存在する。いつもはそこのお世話になっているのであるが、今回は相手側の弁護士の最寄りの役場を利用することになった。

その際、必要書類がいろいろある。そして通例、IDを証するものが必要である。ところが、今回は不要であるという。なぜかと問うと、公証人が知り合いだからだという。なんと司法研修所で同期の元裁判官であった。

地下鉄赤坂駅で降り、長浜方面へ向かう。右側に大きなテニスコートがある。むかし検察庁があったところだ。そこを左折すると、間もなく福岡公証役場だ。はじめてきた。

表札をみると、6人も公証人がいらっしゃる。そのうち半分は知っているお名前だ。中に入ると、送達、確定日付、認証、公正証書などに窓口が分かれている。筑紫公証役場のばあい、公証人は1人なので、窓口もシンプルである。いかにも役場という感じである。

しばらくして相手の弁護士もいらっしゃったので、中の部屋に入った。途中で、もう一人の知り合いの公証人の顔が見えたので、挨拶することができた。

そして公正証書を作成した。お隣の先生の声も大きく喧噪のため、朗読の声も聞き取りつらい。

公証人はさすがに司法研修時代と同じというわけにはいかないが、いまも毎日水泳に通ったいるとかで若々しい。つかの間の同窓会であった。

2023年3月30日木曜日

トランプ前大統領を起訴 不倫口止め料巡る疑惑

 

  今朝出勤まえにNHKのニュースをみていたら、トランプ前大統領を起訴したと速報していた。容疑は、前大統領が不倫相手(ポルノ女優)に口止め料を支払ったというもの。日本ではちょっと考えられない容疑だ。

https://www.asahi.com/articles/ASR3N6CRDR3MUHBI00Q.html

大陪審による起訴というのだから刑事事件である。日本の刑法にも関係しそうな条文はある。証拠隠滅罪(104条)や偽証罪(169条)、それらの教唆罪(61条)である。しかし、どうだろう。

まず証拠隠滅罪の「証拠」は刑事事件のものにかぎられる。戦前はともかく、戦後、不倫(不貞)は犯罪ではなくなった。民事上の離婚原因もしくは慰謝料賠償原因にとどまる。したがって、不倫相手に口止め料を払っても、証拠隠滅罪にはならない。

偽証教唆には理論的にはなりそう。しかし、100%捜査の対象とはならないだろう。一般的には、捜査機関は「忙しい」のだ。

偽証罪が問題にされるのは、捜査機関に敵対的もしくは不利な証言をしたときだけだろう。捜査段階で犯人はAだと供述していた証人が法廷で、じつは警察に誘導されてそう供述したけれども真実は違うなどと証言したような場合など。

英米の法廷小説を読んでいると、法廷侮辱や司法妨害という言葉にぶつかる。しかし、日本の裁判所はこうした事象に対して寛容もしくは鈍感である。

日本は仏・独など大陸系の法制度といわれている。これに対するのは英米法である。大きくは制定法か判例法かの違いである。さらに英米法は適正手続の尊重がうたわれる。日本国憲法も適正手続を要求している(31条)。しかし、日本の裁判所はこれを軽んじてきた。Aが犯人であれば、捜査機関が少々手続を無視してもよいではないかというのである。

民事事件の証拠が改ざんされていたり、明らかに偽証がなされている事案に時々ぶつかる。しかし、裁判所はやはり寛容である。いわゆる証拠をどう評価するかの問題としか考えていない。

本件で起訴されたのは、前大統領である。次期大統領選への立候補を表明し、公然たる影響力を行使している。日本では考えられない。

アメリカという国家や人々のやり方にはついていけないことが多々ある。しかし、このような是々非々(むろん政治的思惑が背景にあるだろうけれど)という行動に接すると、うらやましくも思う。

2022年6月6日月曜日

今度生まれてきたら


  NHK-BSでやっている内館牧子原作のドラマ『今度生まれてきたら』にはまってしまった。毎週欠かさず楽しみにみている(リアルタイムではなく録画でだが)。

主役は松坂慶子、風間杜夫の70代夫婦。その他、松坂の姉である藤田弓子と平田満の夫婦など。若者とちがう、あけすけな会話が小気味よい。内館牧子の筆力なのか、ベテラン俳優陣の演技力なのか、妙なリアリティを感じる。

70代にもなると、過去の選択に対する後悔はたくさんあるけれど、将来の選択肢はすくない。なにをするにも「先が見えている」。どのセリフのあとにも、「と言ったって、先は知れているけどね。」とか、「と言ったものの、どこかで聞いたセリフね。」みたいな感慨が漂う。

そうした枠組みのなかでなされる主人公たちの「最後の」あがきの滑稽さが笑わせるけれども、人間存在の素晴らしさをおしえてもくれる。

同窓会に参加した平田満が学生時代のマドンナと再婚しようと、藤田弓子と離婚を言い出す。マドンナはジュディオングで、学生時代は自分のことをバンビちゃんと呼び、「わたし、日本食食べらんない~」などと甘え言葉で言い、男子には超人気があったけれど、女子には嫌われていた存在。あはは。いたね、そういう子。

離婚を切り出された藤田弓子のふてくされた演技が秀逸。それを他人事として感想を述べる松坂慶子の「人生って、いろいろね~」みたいなセリフが笑わせる。番組のはじめのほうで、藤田弓子が別の文脈でおなじセリフを言っている伏線がとても効いている。あはは。

松坂慶子は「今度生まれてきたら、この人とは結婚しない」とつぶやいたけれど、みなさんはどうでせう?

2022年2月6日日曜日

ある医療過誤事件


  ある医療過誤事件が結審した。体調を考慮せず、無理なリハビリ訓練をつづけたために筋筋膜性疼痛症候群に罹患させ、発病後も診断・治療を怠り、より重症化させたのではないかという事案である。

先にトミーが「あちらにおられましたよ」で紹介した案件。その日は原告本人、相手方病院の理学療法士と主治医の証人尋問がおこなった。トミーは剣道の気合いもかくやという迫力で証人を追及し、おおくのポイントを獲得した。

結果がでたら(勝訴したら)、またお知らせしたい。判決予測についてはいろいろ書きたいことがあるが、相手方弁護士をはじめとする病院関係者や裁判官が本ブログを読んでいる可能性がゼロではないので、いまは自粛しておく。

きょう書きたいのは夫婦愛。原告は女性。複数の疾患をわずらい、目はほとんど見えず、特殊な車椅子がなければ移動もできず、全介助が必要な状態である。それを夫が献身的に介護している。

毎年約70万組が結婚、その3分の1が離婚し、残る夫婦の半分は仲がいまひとつという。そうしたなか、病気で目が見えず全介助が必要となったときに、配偶者をささえる連れ合いがどれだけいるだろう。週一回は離婚相談に応じる職業柄、悲観的にならざるをえない。

そうしたなか、本事件における夫婦愛は感動的。相手方病院入院中も医師が診断をつけられなかったときに、インターネットで検索して正確な診断名にたどりついたのだからすごい。

われわれ医療過誤をおおく取り扱っている弁護士であっても、自分で診断するとなるとそう簡単ではない。

(ただしK弁護士を除く。S病院を受診したものの、単なる腹痛だからと返されそうになった。でもブルンベルグ兆候(腹部を押したときではなく、離したときに痛みがある)があるから盲腸だと訴えて、念のため入院することになった。するとやはり盲腸だったらしい。)

日常的な介護だけでもたいへんだろう。治療は大分の専門医まで連れて行かれている。裁判の打合せは当事務所でおこなう。夫は車椅子を押して来られる。妻の状態に配慮しつつ、集めてきた文献を紹介しつつ、相手方書面への反論を協議する。

証人尋問の際も制約が多かった。しかし、夫がいろいろと世話をしてくれたため、大過なく終えることができた。

やはり暗闇でしか見えぬものがある。暗闇でしか聞こえぬ歌がある。

2021年10月25日月曜日

コロナ禍のなかで


 コロナ禍によるスティ・ホームの影響か、事件の傾向も異なってきているように思う。

 離婚についていえば、原因がはっきりしないものが増えている。いままでであれば、不貞、暴力など明瞭なものが多かった。さいきんは性格の不一致的なはっきりしないものが増えている。スティ・ホームのなか、顔をつきあわす機会が増え、夫婦としての存在意義が試された結果だろう。

また長らく別居状態にあった人たちも、きちんと清算しようと動いている。3年以上の別居を離婚原因としようとの考えもあるが、いまのところ明文化はされていない。しかし時間が解決するということもある。別居当時は痴情怨恨が渦巻いていて到底理性的な思考、話合いができなかった。それが長い時の経過により脱色されて意外と簡単に話がつく印象だ。

時間が解決するといえば、相続もそうだ。相続にはいくつかもめやすいパターンがある。夫が亡くなり、後妻と前妻の子どもたちが相続人となった場合がその一つだ。

前妻の子たちは、幼いころ、父母が離婚し、後妻に父をとられたと思っている人が多い。しかし、最近経験したケースでは意外とすんなりと遺産分割協議がととのった。電話でいちど話したが、育ちのよさを感じさせる口調だった。幼いころ父母が離婚すると、こういうふうに成長するのは簡単ではない。インターネットで検索すると、社会的に評価される仕事についておられる。

いままでとコロナ禍のなかの人生の違いはなんだろう。いままではあまり考えなくても、流されるようにして人生をおくれたのではあるまいか。すくなくともわれわれが成長した昭和30年代から平成にかけてはそんな感じか。

コロナ禍となり、人生とはなにか、いかに生きるべきかを考えさせられる機会が増えたように思う。暇なときに、映画を観にいったり、天神で買い物をして時間をつぶせないのだから。その結果、先が見えなくて自死を選ぶ人が増えているというのは残念だ。こういうときこそ、ほんとうの人生、悔いのない人生を模索すべきように思う。そうすれば、日はまた昇るはずだ。

2021年9月12日日曜日

歩き方が悪いですね


 20年前ころ、ハンセン病問題を解決するため、全国にある療養所をめぐって被害者らと交流していた。群馬県には栗生楽泉園という療養所があった。

その療養所から帰る際、重い荷物を遠心力を利用して担ぎあげた際、腰をグリッとやってしまった。それから3年ほど腰痛を患ってしまった。

評判をきいて高宮駅東にあるN外科に何度か通った。そこは外科を標榜しているものの、そうとうご高齢のドクターが背中をみただけで何番と何番の脊椎がズレていると診断した。そしてカイロプラクティックのような治療をされた。

その後、山登りをはじめると、腰の軟部組織が強化されたためか、腰痛からは解放された。山登りをすると、風邪もほとんどひかなくなった。1回の風邪で数日、年数回風邪をひくとすれば、その時間を山で過ごすほうがよほど気持ちいいと思う。

40肩、50肩にも悩まされ、整骨院にもいったが、それは半年もすれば不思議と治ってしまった。

3年ほど前から肩の痛みに悩まされるようになった。これも評判をきいてしばらく福岡市内のA整骨院にいっていた。ここも腕は悪くない。

50肩の痛みがひどいとき、たまたま仕事できていた糸島の整骨院に飛び込みで入ったことがあった。すると、いきなり肩の治療をはじめた。これはいただけない。

だいたい骨や筋肉、軟部組織は相互につながっていて全身がなにがしか関連している。肩を治すとこんどは首にきたりする。なので、肩が痛いからといって、いきなり肩を治療するのはいかがなものか。手や足先から徐々にほぐしはじめて、最後に体幹に至るのがよいのではなかろうか。

肩の痛みに繰り返し悩まされるようになったので、ある人の紹介で南のほうの整体院に2度行った。そこは手や足先からはじめて体幹に至る信頼できる施療だった。ちがうのは最後のところである。

最初に行ったときはこう言われた。肩こりの原因は、顎の腱が固くなっているせいだ。(えっ、そうなのか。)志村けんのアイーンのような口をして、下顎をガクッと下に落とすようにする、それを一日に3回ほどするとよい。(へーっ、そうなんだ。)

1年ほどして、また肩が痛くなった。こんどは、院内をすこし歩かされて、歩き方が悪いといわれた。そして正しい歩き方を教示された。なるほど。歩き方が悪いために、腰かどこかに負担がかかり、それをかばうために肩が痛くなるという理屈だ。さいきんは正しい歩き方を心がけているせいか、肩の調子はよいようだ。

マッサージで全身をほぐすのは対症療法だろう。顎が固くなっているのをほぐしたり、歩き方を矯正するのは原因療法だろう。市販薬の風邪薬などは、鼻水や咳を止めるだけの対症療法である。本来は、風邪の原因となるウィルスをやっつけないといけないが、そこはなかなか難しい。

われわれ弁護士の仕事はやはり対症療法だ。離婚、相続、債務整理、どれをとっても当面の問題を解決しているにすぎない。離婚や債務の原因はいろいろある。そこにはメスを入れることまではできていない。

法律事務所に離婚の相談に行ったら、歩き方が悪いですね、このように歩きましょうとアドバイスしたらどうだろう。みなさん目がテンになるでしょうね。そんな法律事務所は流行らないような気がする(笑)。

2018年12月25日火曜日

養育費がゼロに


(西穂独標から見たジャンダルムと奥穂)

 離婚する際,未成年者の子がいる場合,その親権者を父母どちらにするのか,養育費をいくらにするのかを決めます。

 未成年の子の親権者をだれにするのかは,子どもの幸せになるのはどちらかという観点から決められます。子どもが小学校の高学年になり,自分の意見をもつことができるようになれば,子どもの意見もきいて尊重されるようになります。

 養育費のほうは,いろいろ批判や見直しの動きもあるところですが,一般的には裁判所のホームページにアップされている算定表によることになります。

 子どもが成長するにつれ,当初は決めようがなかった高等教育にかかる費用や子どもの病気や交通事故の治療費など特別の出費の加算について,事後的・追加的に,話しあわれることもあります。

 親権者を母(妻)として養育費を支払っている場合に,妻が再婚したのでもう支払いをつづけなくてよいのではないかという相談を受けることがあります。

 気持ちはわかります。が,妻が再婚しただけでは養育費の支払いは免れません。妻が再婚しても,親子関係が切れるわけではないからです。

 さらに,養子縁組まで結べば,養育費を支払わなくてもよくなります。ただし,離婚の際の調停調書があるのなら,あらためて調停を申し立て,支払義務のないことを確認する必要があります。さもないと,給料の差押え等を受けるおそれがあるからです。

 以前から相談にこられた方は,調停を申し立てられましたが話がつかず,今般,審判で支払義務の取り消しがなされました。これは予想された結論なのですが,妻が話し合いに応じないため審判までなされました。
 
 もう5年ほど前の離婚なのですが,なかなか理性的にはふるまえないようですね。

2018年10月24日水曜日

2つの離婚事件


          (建仁寺,双龍図)

 2つの離婚事件について,ひとつは判決があり,ひとつは和解が成立しました。

 いちどは好きで一緒になった男女だけれど,うまくいかなくなると愛情は容易に憎悪に転化してしまいます。

 「法律は家庭に入らず」の原則から,離婚事件はいきなり裁判をすることができません。まず家庭裁判所で調停という話合いをする必要があります。

 調停で話がつかないときにはじめて裁判になります。裁判になっても,途中なんどか和解という話合いによる解決の試みがなされます。それでも解決できないときに判決の言い渡しがなされます。

 このたび,一件については和解が成立し,一件は判決の言い渡しとなりました。どちらも夫側で関与することなりました(別に夫側専門ではなく,たまたま相談・依頼されたのが男性側だっただけです。もちろん女性側で離婚事件をすることもたくさんあります)。

 一件は,新婚数か月の夫婦で,結婚式の準備をめぐって夫婦げんかが絶えず破局しました。離婚原因は夫側にあるとして慰謝料請求にこだわり,調停,裁判にいたったものです。双方の言い分と証拠をだしつくしたところで,裁判所が和解案を打診しました。慰謝料は認めず,婚姻費用の分担について,妻の離婚後の生活費を負担するとしてやや増額するという内容です。この理由なら問題ないので,当方も和解に応じることにしました。

 もう一件は,夫にDVがあったかどうか,財産分与の対象となる財産にはどのようなものがあるかについて厳しく争われました。調停段階から何度か話合いによる解決が模索されましたが,双方の見解のひらきが大きく妥結にはいたりませんでした。今般,判決がなされ,概ね当方の言い分が認められました。しかし,妻側は納得せず,控訴となりました。さらに高等裁判所で裁判がつづくことになります。

 双方が納得できる妥協点が早期に見つかることを願ってやみません。

2018年3月14日水曜日

離婚調停が不調に終わりました。



 きのうは離婚調停が不調に終わりました。
 入籍して2か月くらいの破局です。
 当方は夫側です。

 離婚については双方に争いはなく,争点は慰謝料の支払義務があるかどうかだけです。
 世によくある誤解ですが,離婚にともない当然に慰謝料が発生するわけではありません。

 慰謝料は,損害賠償の一部で,精神的な苦痛に関するものです。
 損害賠償請求権は,不法行為あるいは債務不履行といった違法行為の効果として発生するものです。
 不法行為がなければ,慰謝料も発生しません。
 たとえ離婚に至ったとしても,その原因が性格の不一致であれば,慰謝料は発生しないわけです。

 週刊誌などで慰謝料いくらと書かれていても,よく読むと厳密な意味での慰謝料ではなく,手切れ金,解決金,和解金の趣旨であることも少なくありません。
 これらは,一方当事者が不法行為をしたから支払うという性質のものではなく,紛争を早期・穏便に解決したいので,そのために支払うというものです。

 本件ではこれといった不法行為が存在しないけれども,相手方が慰謝料にこだわれたために不成立に終わったものです。
 調停が不調に終わったために,離婚訴訟をおこなうことになります。

2018年3月1日木曜日

財産分与



     (上福根山。ところどころ雪が残っていた。)

 いまようやく起案が終了しました。
 起案とは,裁判所に提出する文書案等を作成することです。
 離婚事件で,財産分与がおおきな争点になっています。

 財産分与。遺産分割のことを財産分与と呼ぶ人もいるけれど,離婚に際し,潜在的な夫婦の共有財産を清算することです。

 民法768条はこう定めています。
1 離婚をし者の一方は,相手方に対して財産の分与を請求することができる。
2 前項の規定による財産の分与について,当事者間に協議が調わないとき,又は協議をすることができないときは,当事者は,家庭裁判所に対して協議に代わる請求をすることができる。ただし,離婚の時から2年を経過したときは,この限りでない。
3 前項の場合には,家庭裁判所は,当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して,分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定める。 

 潜在的な夫婦の共有財産というと分かりにくい。けれども,たとえば,夫が働きに出て,妻が専業主婦の家庭などで,家や預貯金の名義が夫になっていることはよくあります。このような場合,たとえ夫名義ではあっても,いわゆる妻の内助の功により形成・維持されてきた財産なので,離婚に際し清算する必要があります。

 清算の対象は,あくまで夫婦で形成・維持してきた財産です。なので,婚姻前からの定期預金や,婚姻中の相続財産は,特有財産として,財産分与の対象とはなりません(民法762条1項)。

 ただし,夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は,その共有に属するものと推定されます(同2項)。なので,特有財産を主張する者は,この推定を破る立証が求められます。

 起案が終わった夫婦の場合,たくさんの不動産,金融資産をおもちです。そのような財産を形成できた原因としては実家の援助も大きい。なので,特有財産の主張が多くなされることになっています。
 そうなると,銀行取引の履歴を過去にさかのぼってお金の流れを主張・立証していくことにならざるをえない。それを文章で表現するので,なかなかにたいへんなのです。ふう。

2016年2月11日木曜日

離婚の財産分与 ~ 将来の退職金


離婚のご相談で、盲点となりやすいのが、将来の退職金です。

例えば、夫が57歳で、職場の定年が60歳。主婦の妻と離婚の協議をしている。
というご相談であれば、退職金は盲点になりません。
将来の退職金について妻への分与は認められるでしょう。
あとは、貯蓄などがあって、離婚時に、退職金の分与を清算できるのか?
それとも、退職金が支払われた後に清算ことにするのか?
状況に応じた交渉をしていくことになります。

では、夫が57歳ではなくて、もっと年齢が低かったら??
私が経験した事例では、夫が52歳(中小企業の会社員)だったのですが、家庭裁判所の調停委員は
  「うーん、分与を認めるべきかどうか、、、微妙・・・」
という顔をしていました。
最終的には夫婦の合意がうまく整いましたので、裁判所が結論を出すまでには至りませんでした。
実際の調停の現場での将来の退職金の取り扱いというのは、こんな感じなのです。

また、少し事例を変えてみましょう。
夫が52歳というところは同じでも、妻が不倫をして慰謝料の支払義務が認められそうだったら?
このときに、例えば、妻の側から、
  「将来の退職金は精算しなくてもよいので、
   その代わりに慰謝料の支払を免除(又は減額)してほしい」
と切り出すのは、かなり有効な手段だろうと思います。
調停委員も、話に乗ってくることが多いのではないでしょうか。
将来の退職金を現実に分与させるまでのハードルと、
分与の話を切り口に慰謝料を免除(又は減額)させるまでのハードルは、
違う(後者のハードルが低い)ということなのです。

離婚にまつわる法的な処理の実際というのは、本当にいろいろな糸が絡み合っています。
書籍やネット記事の知識だけで実際の現場にのぞむと、「えっ」と思うことも多いと思います。
そうならないようにするのが、私たちの仕事なのです。

弁護士田中謙二

2015年12月9日水曜日

離婚事件イロハ



 離婚事件の相談に親御さんがこられること
 これけっこうあります。

 親御さんの年齢はどうも
 60歳は越えているかな。

 子どもの年齢をおききすると
 案の定,40歳過ぎ。

 たとえ20歳前でも
 結婚すれば成人とみなされます(民法753条)。

 さて,どうしたものか・・・

 夫婦3組に1組は離婚しているので
 離婚相談はすくなくない。

 3人で酒を飲みにいけば
 1人は離婚経験者です。

 それでも家庭裁判所の手を経た離婚は
 1割にみたないらしい(司法統計)。

 9割の夫婦はじぶんたちで協議して,つまり
 裁判所の手をかりないで離婚しているわけです。

 じぶんたちの手におえないときに
 他者に相談したり,手をかしてもらうことになる。

 その際,親に相談する人とそうでない人にわかれ
 前者のなかから,親が相談にこられるわけです。

 そもそも調停や裁判は手術のようなもの
 本人の了解なしにはおこなえません。

 人を介した相談は事実とアドバイスの両面で
 行き違いを生じがちです。

 前提となる事実が異なれば
 解決方針も異なります。

 法的なアドバイスはいくつかの前提をおいています
 前提をすっとばすと,違う話になってしまいます。

 ふつうの会話でも生じがちなこうした齟齬は
 法律相談ではさらにリスクがたかまります。

 どっちみち家裁の調停には
 親ははいれないことになっています。

 もめごとの解決は本人の決断にかかっているので
 関係者がおおくなると,いつまでも解決しないからです。

 それに親がつきそっていると
 どうしても自立を疑われてしまいます(離婚原因とも関係)。

 そういう理由で,とりあえず親御さんの不安や悩みの相談にのるものの
 あらためて本人に来てもらうことになります。

 離婚することじたいが高度のストレスです
 法律事務所のたかい敷居をまたぎたくない気持ちもわかります。

 でも離婚も人生の一部なら
 その解決も人生の一部です。

 じぶんの人生ですから,じぶんで切り開くしかありません
 やはりまず,じぶんで相談にこられてください。勇気をだして。

2013年10月28日月曜日

財産分与のお話 其の参


「答えは,明日以降のお楽しみ」
などと発言しておきながら,
ご無沙汰していました。
申し訳ありません。


問題をおさらいしましょう。


夫名義の自宅がオーバーローン

(住宅ローンが自宅の価値より大きいこと)

になっている場合に
妻が財産分与を求めた場合どうなるか。


① 借金も半分ずつなので,
  女性が男性にお金を支払うことになる

② 住宅を離婚後も使う方が支払う

③ 女性は全く支払わなくてよい



さて,
早速ですがお答えを。
























実は,
①も②も③も正解です。
…というより,こうしなければならない
という決まりはないのです。

もっとも,実際には,
どちらもその住宅を使わないような場合,
③となるケースが多いようです。

オーバーローンなので,
「分与する財産がない」
という考え方ですね。


妻が継続して使用するような場合,
②となることもあります。

最も可能性として低いのは①でしょうか。


いちばんわかりやすいように見える
①がとられない背景には,
様々な事情があるようです。



…とお答えしてみましたが,
どうしても法律問題は,
QとAだけで明確にお答えできない場合が
多いんです。


ですから,
何をおいても
皆さんお一人お一人のお悩みを
直接ご相談いただくのがよいでしょう。



2013年10月17日木曜日

法律がすべてを解決してくれ…る?


法律の条文ですべて決まるんでしょ。
だから弁護士さんは全部の法律を
覚えているんでしょ。


…そんなことは決してありません。

「法律」の定義の仕方にもよりますが,
平成25年9月現在で
日本には1900弱ほどの法律があります。
関係する政令,省令等も入れると,
7000以上にのぼります。

さすがにこれを全て覚えていたら,
脳みそがもちません。



皆さんが思っている以上に
法律の決まりごとは柔らかいものです。

(もちろん厳しく決まりごとが
定められている法律もあります。)




たとえば,
民法768条は,
離婚の際の財産分与についての規定ですが,

「協議上の離婚をした者の一方は,
相手方に対して財産の分与を請求することができる。」

と書かれているだけです。


「一方」とはどちらからでもいいのか。
どんな割合で分けるのか。
いわゆる借金も半分になるのか。
土地や建物はどう分けるのか。
将来もらえる予定の退職金はどう分けるのか。
……

疑問点は尽きませんね。


こういった点について,
学者の方々が全く違った結論を主張していたり,
裁判例ですら結論が分かれたりします。


だから,
弁護士が「100%●●です」
と言えないことも多いんです。



次回は,
さきほど触れた「財産分与」について,
少しお話していきます。

2011年10月20日木曜日

 離婚にいたる難路 



 さいきん離婚事件が2件解決しました。
 どちらも子どもが2人いるケースです。

 1件はまだ小・中学生
 1件はもう成人されています。

 離婚事件では、離婚するかどうかのほか
 親権、面接交渉の決め方がむずかしい。

 それまでの共同体をできるだけ動揺させないよう
 わかれるのが子どものためになります。

 でも最愛の伴侶を離婚により失うという事態は
 自己のアイデンティティを根本から動揺させる悲劇。

 心のなか、頭のなかでは、正負の感情がたえず渦巻き
 子どもたちの運命も小舟のごとく翻弄されます。

 こんかいは両親とも子どものことを最優先させ
 円満な妥結をはかってくれました。

 あとは財産分与、慰謝料、養育費などお金の問題
 これらは子どもの問題とちがって調整がしやすい。

 もちろん、配偶者の職業、地位、性格などによっては
 もめることもあります。

 子どもの問題で譲歩したことが
 思わずお金の問題となって噴出することもあります。

 そのような難路をとおって
 なんとか目的地に着くことができました。

 弁護士としてできることはここまで。
 あらたな幸せを是非つかんでほしいと願っています。
 

2011年2月1日火曜日

 今さらジロー(2)



 「おまえとは父でもなければ子でもない。」
 ドラマで親子喧嘩のさいによくあるセリフです。

 実際、不良の息子と縁を切りたいとの相談は
 少なくありません。

 しかしむかしのような勘当という制度は現行法にはなく
 実親子関係を破棄することはできません。

 実親子関係をどうしても否定したければ
 嫡出否認か親子関係不存在確認訴訟によるほかありません。

 むやみに訴えを許すと子の立場が不安定になってしまうので
 嫡出否認の訴えは子の出生を知ってから1年内という期間制限があります
 (民法777条)。

 婚姻中又は離婚後300日以内に生まれた子どもの場合
 嫡出否認の訴えによることが原則です。

 嫡出の推定が働く場合に、親子関係不存在確認訴訟をおこしても
 不適法として却下されます。
 (そうしないと、嫡出否認を限定的に認めた趣旨が没却されるので)

 本件東京高判ケースの場合、婚姻中に生まれているので
 本来であれば、不適法として却下されるべき事案だったようです。

 それではなぜ判決がなされたのか? 

 法律にはかならず例外があります。
 夫の長期海外出張、受刑、別居など

 妻が夫の子を妊娠する可能性がないことが客観的に明白である場合は、例外
 夫の子であるとの推定を受けないことになるからです。

 ただし本件の場合、夫の長期海外出張、受刑、別居などでもなさそう
 産院での取違えとありますが、これを主張・立証したわけでもなさそう。

 それではなぜ??
 
 嫡出否認の訴えの制限は子の立場を守るためのもの。そうだとすると
 関係者が了解しさえすれば裁判を認めてもよいと考えられます。

 本件では兄が了解したために、1審で親子鑑定を実施したもよう
 兄としても真相を知りたかったということでしょう。

 そもそも弟らがなぜ血縁関係がないと考えたのか?
 判旨からは不明です。

 血液型のちがい?それとも外貌が著しくちがったのでしょうか?
 性格や能力などのちがいからはいえないと思うのですが…。

 ともあれ遺伝子鑑定の結果、実子でないことが判明しています。
 (産院での取違えというのは、この結果からの推測のようです)
 こうして一審・東京家裁は親子関係を否定し、弟らの勝訴。

 そこで兄は控訴しました。

 (つづきはまた明日)
 

2010年11月15日月曜日

 YESTERDAY



宇治野みさゑ弁護士と離婚したのち3か月ほどして
A信販から150万円を支払えと訴えられました。

離婚の半年ほどまえ
元妻である宇治野弁護士が150万円を借りたとき
私が保証人になったというのです。

提出された借用証の写しをみると
署名は私のもののようでもあり違うようでもあり
ハンコは私の認め印でした。

でもまったく身におぼえがありませんでしたので
全面的に争いました。

証人として宇治野弁護士が出廷し
自宅リビングでテレビをみているときに
保証人になることを私が承諾したと証言しました。

というのは、模擬裁判での話し。

法学部の学生さんに民事裁判の実務を体験してもらおうと
九州大学、裁判所、弁護士会の共催で模擬裁判をおこないました。

シナリオは実際に手がけた事件をもとに
私が書きました。
ただし、結論をファジーにしたほうが面白かろうと
尋問に対しては自由に証言してよいことにしました。

法廷は法学部の大講堂。
裁判官役は現役裁判官3人、弁護士役は現役弁護士6人
夫と妻役は上記のとおりでした。

学生のみなさんにも裁判官の立場で判断してもらいました。
学部の先生がたもたくさん傍聴に来られていました。

おおくの人が誤解しているのですが
契約も約束のひとつですから口約束もあり。

われわれは毎日、契約書なしで売買契約をおこなっています。
契約が成立するのに、実印はおろか自署さえ必要ありません。

電気店でクーラーを購入する際などに
妻が夫名義を代筆することはよくあることです。
コンビニでは一言も発さずレジで商品を差し出すだけでOK。

承諾も契約時に必要なわけではなく
事前了解のみならず、事後承諾でもかまいません。

購入のときには知らなくとも
「ま、いっか。」と考えて使用すれば
事後承諾とみなされることもあります。

本件でも、私に保証人になる意思があったかどうかが決めて。
自宅リビングでテレビをみているときに
「ああ、いいよ。」と言ったとなれば
私の敗けです。

私は被告本人として証言しました。
そのころは家庭内別居で
なにか言ったかどうかもなにも
口もきかない状態でした…と。

判断はわれたものの
からくも勝訴することができました。
(学生のみなさんも裁判官も
私の誠実な人柄をわかってくれたのだと信じます。)

たかが模擬裁判ですが、されど模擬裁判。
心からうれしかったです。

学生のみなさんには事実認定の
難しさと醍醐味を堪能していただきました。