2018年10月24日水曜日
2つの離婚事件
(建仁寺,双龍図)
2つの離婚事件について,ひとつは判決があり,ひとつは和解が成立しました。
いちどは好きで一緒になった男女だけれど,うまくいかなくなると愛情は容易に憎悪に転化してしまいます。
「法律は家庭に入らず」の原則から,離婚事件はいきなり裁判をすることができません。まず家庭裁判所で調停という話合いをする必要があります。
調停で話がつかないときにはじめて裁判になります。裁判になっても,途中なんどか和解という話合いによる解決の試みがなされます。それでも解決できないときに判決の言い渡しがなされます。
このたび,一件については和解が成立し,一件は判決の言い渡しとなりました。どちらも夫側で関与することなりました(別に夫側専門ではなく,たまたま相談・依頼されたのが男性側だっただけです。もちろん女性側で離婚事件をすることもたくさんあります)。
一件は,新婚数か月の夫婦で,結婚式の準備をめぐって夫婦げんかが絶えず破局しました。離婚原因は夫側にあるとして慰謝料請求にこだわり,調停,裁判にいたったものです。双方の言い分と証拠をだしつくしたところで,裁判所が和解案を打診しました。慰謝料は認めず,婚姻費用の分担について,妻の離婚後の生活費を負担するとしてやや増額するという内容です。この理由なら問題ないので,当方も和解に応じることにしました。
もう一件は,夫にDVがあったかどうか,財産分与の対象となる財産にはどのようなものがあるかについて厳しく争われました。調停段階から何度か話合いによる解決が模索されましたが,双方の見解のひらきが大きく妥結にはいたりませんでした。今般,判決がなされ,概ね当方の言い分が認められました。しかし,妻側は納得せず,控訴となりました。さらに高等裁判所で裁判がつづくことになります。
双方が納得できる妥協点が早期に見つかることを願ってやみません。
2018年3月1日木曜日
財産分与
(上福根山。ところどころ雪が残っていた。)
いまようやく起案が終了しました。
起案とは,裁判所に提出する文書案等を作成することです。
離婚事件で,財産分与がおおきな争点になっています。
財産分与。遺産分割のことを財産分与と呼ぶ人もいるけれど,離婚に際し,潜在的な夫婦の共有財産を清算することです。
民法768条はこう定めています。
1 離婚をし者の一方は,相手方に対して財産の分与を請求することができる。
2 前項の規定による財産の分与について,当事者間に協議が調わないとき,又は協議をすることができないときは,当事者は,家庭裁判所に対して協議に代わる請求をすることができる。ただし,離婚の時から2年を経過したときは,この限りでない。
3 前項の場合には,家庭裁判所は,当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して,分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定める。
潜在的な夫婦の共有財産というと分かりにくい。けれども,たとえば,夫が働きに出て,妻が専業主婦の家庭などで,家や預貯金の名義が夫になっていることはよくあります。このような場合,たとえ夫名義ではあっても,いわゆる妻の内助の功により形成・維持されてきた財産なので,離婚に際し清算する必要があります。
清算の対象は,あくまで夫婦で形成・維持してきた財産です。なので,婚姻前からの定期預金や,婚姻中の相続財産は,特有財産として,財産分与の対象とはなりません(民法762条1項)。
ただし,夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は,その共有に属するものと推定されます(同2項)。なので,特有財産を主張する者は,この推定を破る立証が求められます。
起案が終わった夫婦の場合,たくさんの不動産,金融資産をおもちです。そのような財産を形成できた原因としては実家の援助も大きい。なので,特有財産の主張が多くなされることになっています。
そうなると,銀行取引の履歴を過去にさかのぼってお金の流れを主張・立証していくことにならざるをえない。それを文章で表現するので,なかなかにたいへんなのです。ふう。
2017年11月20日月曜日
最近の離婚裁判における財産分与事情(福岡家裁)
(傾山三つ尾にむかう尾根上の紅葉)
ある離婚事件裁判の期日が福岡家庭裁判所で開かれました。当職は夫側の事件です(もちろん妻側につくこともあります。妻側のほうが実際に現金を手にする解決になることが多いので,当事者の満足が得られやすいです。)。
本件では,離婚すること,未成年の子どもの親権者をどちらにするのか,養育費の額についてはほぼ争いはなく,離婚慰謝料と財産分与について激しく争っています。
慰謝料については,夫婦間に暴力,暴言があったのかどうか,あったとしてその頻度や程度が問題になっています。これらの問題は,どちらに,どれだけの証拠があるかによって決着がつくことになります。
財産分与は,夫婦で協力して形成した実質的な共有財産を清算する制度です。離婚をした者の一方は,相手方に対して財産の分与を請求することができ,当事者間に協議が調わないとき,又は協議をすることができないときは,家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができます。ただし,離婚後2年間の期間制限があります(民法768条1項,2項)。
家庭裁判所は,双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して,分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定めます(民法768条3項)。そのため,われわれも一切の事情を主張し,立証しなければなりません。
夫婦がその協力によって得た財産が対象ですから,どちらかの特有財産は,この対象から外されます。なぜなら,夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産は,その特有財産(夫婦の一方が単独で有する財産をいう。)とするからです(民法762条1項)。したがって,たとえば,婚姻前からもっている定期預金や,婚姻中に相続した土地などは,夫婦で協力して形成した財産ではありませんので,財産分与の対象財産ではありません。
しかしながら,そのようなものも含め,夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は,その共有に属するものと推定されています(民法762条2項)。民法の建前としては,夫婦別産制といって夫婦はそれぞれ別の財産を有していて,夫婦関係を維持するのに必要な限度で協力しあうことを予定していたようです。が,日本の現状では,そのような関係は水臭いものとされ,あいまいなまま夫婦関係を続け,離婚の際にあわてることが多いようです。たとえ水臭くとも,漫然と相手まかせにしないで,きちんと取り決めをし,できれば年次報告をしあうぐらいが,いざというときに安心です。
夫婦の収入を漫然と妻,もしくは夫まかせにしていると,離婚の際に財産分与の対象財産がどこに,いくらあるのか,さっぱり分からないということになります。この場合,相手方に対し,求釈明といって情報の開示をまず求めます。
そのような任意の開示でなかなか納得のいくようなものが示されなかった場合,次に,調査嘱託という制度があります。すなわち,裁判所は,必要な調査を官庁若しくは公署,外国の官庁若しくは公署又は学校,商工会議所,取引所その他の団体に嘱託することができるとされています(民事訴訟法186条。なお,離婚訴訟は,人事訴訟法であり,人事訴訟法というのがあります。しかし,人事訴訟法は,民事訴訟の特例等を定めているだけなので,基本的には民事訴訟法によることになります)。これにより,相手方の金融資産が所在する金融機関に対し,調査を行うことができます。しかし,これも全国すべての金融機関に対する,いわゆる探索的な調査はできませんので,調査をすることについての一定程度の根拠は必要になります。
このような調査の結果,対象財産の全貌(と思われるもの。当事者がなお納得されないこともありますが,証拠裁判主義の立場からやむを得ません。)が判明すれば,あとはその分与の程度ですが,2分の1ずつ分けることが一般的です。
そうなれば,訴訟も一区切りを迎え,裁判所が和解案をだすこともありますし,和解解決が難しければ,人証の取調べ(証人や本人たちの尋問)をおこなっていくことになります。
その結果に基づき,ふたたび和解の勧試がなされ和解が成立することもありますし,当事者が納得されなければ判決という運びとなります。
H.U.
2016年2月11日木曜日
離婚の財産分与 ~ 将来の退職金
離婚のご相談で、盲点となりやすいのが、将来の退職金です。
例えば、夫が57歳で、職場の定年が60歳。主婦の妻と離婚の協議をしている。
というご相談であれば、退職金は盲点になりません。
将来の退職金について妻への分与は認められるでしょう。
あとは、貯蓄などがあって、離婚時に、退職金の分与を清算できるのか?
それとも、退職金が支払われた後に清算ことにするのか?
状況に応じた交渉をしていくことになります。
では、夫が57歳ではなくて、もっと年齢が低かったら??
私が経験した事例では、夫が52歳(中小企業の会社員)だったのですが、家庭裁判所の調停委員は
「うーん、分与を認めるべきかどうか、、、微妙・・・」
という顔をしていました。
最終的には夫婦の合意がうまく整いましたので、裁判所が結論を出すまでには至りませんでした。
実際の調停の現場での将来の退職金の取り扱いというのは、こんな感じなのです。
また、少し事例を変えてみましょう。
夫が52歳というところは同じでも、妻が不倫をして慰謝料の支払義務が認められそうだったら?
このときに、例えば、妻の側から、
「将来の退職金は精算しなくてもよいので、
その代わりに慰謝料の支払を免除(又は減額)してほしい」
と切り出すのは、かなり有効な手段だろうと思います。
調停委員も、話に乗ってくることが多いのではないでしょうか。
将来の退職金を現実に分与させるまでのハードルと、
分与の話を切り口に慰謝料を免除(又は減額)させるまでのハードルは、
違う(後者のハードルが低い)ということなのです。
離婚にまつわる法的な処理の実際というのは、本当にいろいろな糸が絡み合っています。
書籍やネット記事の知識だけで実際の現場にのぞむと、「えっ」と思うことも多いと思います。
そうならないようにするのが、私たちの仕事なのです。
弁護士田中謙二
2013年10月28日月曜日
財産分与のお話 其の参
「答えは,明日以降のお楽しみ」
などと発言しておきながら,
ご無沙汰していました。
申し訳ありません。
問題をおさらいしましょう。
夫名義の自宅がオーバーローン
(住宅ローンが自宅の価値より大きいこと)
になっている場合に
妻が財産分与を求めた場合どうなるか。
① 借金も半分ずつなので,
女性が男性にお金を支払うことになる
② 住宅を離婚後も使う方が支払う
③ 女性は全く支払わなくてよい
さて,
早速ですがお答えを。
実は,
①も②も③も正解です。
…というより,こうしなければならない
という決まりはないのです。
もっとも,実際には,
どちらもその住宅を使わないような場合,
③となるケースが多いようです。
オーバーローンなので,
「分与する財産がない」
という考え方ですね。
妻が継続して使用するような場合,
②となることもあります。
最も可能性として低いのは①でしょうか。
いちばんわかりやすいように見える
①がとられない背景には,
様々な事情があるようです。
…とお答えしてみましたが,
どうしても法律問題は,
QとAだけで明確にお答えできない場合が
多いんです。
ですから,
何をおいても
皆さんお一人お一人のお悩みを
直接ご相談いただくのがよいでしょう。
2013年10月20日日曜日
財産分与のお話 其の弐
結婚生活は,
夫婦で助け合う共同生活です。
ですから,
離婚することとなってしまった場合,
夫婦で共同して形成した資産を
どのように清算するのか決める必要があります。
基本的には当事者のお二人で
話をして,納得できる解決をしていきます。
ただ,どうしても話し合いにならない…
そんなときのために,
民法では一方が他方に
財産の分与を請求できることとされています。
(詳しくは先日の記事で)
分かりやすいケースでは,
専業主婦であった女性が
仕事をされていた男性名義の自宅や貯金の
分与を求めるものでしょうか。
この場合,
夫婦の実質的な共同財産を計算して,
もし負債があるなら差し引き,
残ったものを50:50で
分けるのがほぼ定まったルールです。
では,皆さんに問題です。
さきほどのケースで,
まだ男性名義の住宅ローンを返済中で
その残額が住宅の価値を上回る場合,
いわゆる「オーバーローン」の状態ですね
財産分与はどうなされるのでしょうか。
① 借金も半分ずつなので,
女性が男性にお金を支払うことになる
② 住宅を離婚後も使う方が支払う
③ 女性は全く支払わなくてよい
皆さんはどう思われますか?
答えは,,,
明日以降のお楽しみということで。
※ ブログのネタに困り,
話題を引っ張っているわけではありません。
2013年10月17日木曜日
法律がすべてを解決してくれ…る?
法律の条文ですべて決まるんでしょ。
だから弁護士さんは全部の法律を
覚えているんでしょ。
…そんなことは決してありません。
「法律」の定義の仕方にもよりますが,
平成25年9月現在で
日本には1900弱ほどの法律があります。
関係する政令,省令等も入れると,
7000以上にのぼります。
さすがにこれを全て覚えていたら,
脳みそがもちません。
皆さんが思っている以上に
法律の決まりごとは柔らかいものです。
(もちろん厳しく決まりごとが
定められている法律もあります。)
たとえば,
民法768条は,
離婚の際の財産分与についての規定ですが,
「協議上の離婚をした者の一方は,
相手方に対して財産の分与を請求することができる。」
と書かれているだけです。
「一方」とはどちらからでもいいのか。
どんな割合で分けるのか。
いわゆる借金も半分になるのか。
土地や建物はどう分けるのか。
将来もらえる予定の退職金はどう分けるのか。
……
疑問点は尽きませんね。
こういった点について,
学者の方々が全く違った結論を主張していたり,
裁判例ですら結論が分かれたりします。
だから,
弁護士が「100%●●です」
と言えないことも多いんです。
次回は,
さきほど触れた「財産分与」について,
少しお話していきます。
2011年10月20日木曜日
離婚にいたる難路
さいきん離婚事件が2件解決しました。
どちらも子どもが2人いるケースです。
1件はまだ小・中学生
1件はもう成人されています。
離婚事件では、離婚するかどうかのほか
親権、面接交渉の決め方がむずかしい。
それまでの共同体をできるだけ動揺させないよう
わかれるのが子どものためになります。
でも最愛の伴侶を離婚により失うという事態は
自己のアイデンティティを根本から動揺させる悲劇。
心のなか、頭のなかでは、正負の感情がたえず渦巻き
子どもたちの運命も小舟のごとく翻弄されます。
こんかいは両親とも子どものことを最優先させ
円満な妥結をはかってくれました。
あとは財産分与、慰謝料、養育費などお金の問題
これらは子どもの問題とちがって調整がしやすい。
もちろん、配偶者の職業、地位、性格などによっては
もめることもあります。
子どもの問題で譲歩したことが
思わずお金の問題となって噴出することもあります。
そのような難路をとおって
なんとか目的地に着くことができました。
弁護士としてできることはここまで。
あらたな幸せを是非つかんでほしいと願っています。
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