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2026年5月9日土曜日

【労働問題・コラム】労働時間の範囲⑦ 研修等への参加

 【事例】八尾自動車興産事件

 株式会社Yは、同社の業務として、60分程度の研修会を所定労働時間外に開催した。研修会に参加した時間は、労働時間に含まれるだろうか。


【解説】

 研修会等への参加は、業務との関連性が薄い会社行事等であっても、事実上の強制に基づく場合は、労働時間に当たることがある。



【発展】※専門職向け


【判例・裁判例】

■最高裁判所

■高等裁判所

■地方裁判所

①大阪地判昭和58年2月14日・労判405号64頁(事例)


【参考文献】

■調査官解説

■条解・コンメンタール等

■裁判官・元裁判官

①岡口基一『要件事実マニュアル第4巻 消費者保護・過払金・行政・労働(第7版)』(2024、ぎょうせい)708頁

■立案担当者見解

■学説

■弁護士・その他

①渡辺輝人『最新テーマ別[実践]労働法実務5 残業代の法律実務』(2024、旬報社)74頁


富永

2026年5月6日水曜日

【労働問題・コラム】労働時間の範囲⑥ 移動時間

 【事例】日本工業検査事件

 株式会社Yに勤務するXは、川崎市内の本社から鹿児島県まで検査作業のため出張し、移動時間が生じた。この移動時間は、労働時間に含まれるだろうか。


【解説】

 就労場所への出勤のための時間は労働時間ではない。出張のための休日中の移動時間についても労働時間性は否定されている(昭和23年3月17日基発461号、昭和33年2月13日基発90号)。

 【事例】で、裁判例①は、「出張の際の往復に要する時間は、労働者が日常の出勤に費やす時間と同一性質であると考えられるから、右所要時間は労働時間に算入されず、したがつてまた時間外労働の問題は起こり得ないと解するのが相当である。」と判示した。




【発展】※専門職向け


【判例・裁判例】

■最高裁判所

■高等裁判所

■地方裁判所

①横浜地川崎支決昭和49年1月26日・労判194号37頁


【参考文献】

■調査官解説

■条解・コンメンタール等

■裁判官・元裁判官

①岡口基一『要件事実マニュアル第4巻 消費者保護・過払金・行政・労働(第7版)』(2024、ぎょうせい)708頁

■立案担当者見解

■学説

■弁護士・その他

①渡辺輝人『最新テーマ別[実践]労働法実務5 残業代の法律実務』(2024、旬報社)75~76頁


富永

2026年5月2日土曜日

【労働問題・コラム】労働時間の範囲⑤ 仮眠時間等の不活動時間

  【事例】大星ビル管理事件

 ビル管理会社である株式会社Yでは、いわゆる泊り勤務の間に設定されている連続7時間ないし9時間の仮眠時間があり、仮眠室における待機と警報や電話等に対して直ちに相当の対応をすることが義務付けられている。このような泊り勤務は、労働時間に含まれるといえるのだろうか。


【解説】

 労働者が実作業に従事していない不活動時間であっても、労働契約上の役務の提供が義務付けられていると評価される場合には、労働からの解放が保障されているとはいえず、労働者は使用者の指揮命令下に置かれているものであって、労働時間に当たる。

 【事例】では、仮眠室における待機と警報や電話等に対して直ちに相当の対応をすることが義務付けられていたと認定され、株式会社Yの指揮命令下に置かれているものとして、不活動仮眠時間も労基法上の労働時間に当たると判断された。

 なお、「監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの」については、労働時間等に関する規定の適用が除外されている(労基法41条3号)。




【発展】※専門職向け


【判例・裁判例】

■最高裁判所

①最小判平成14年2月28日・民集56巻2号361頁

■高等裁判所

■地方裁判所


【参考文献】

■調査官解説

■条解・コンメンタール等

■裁判官・元裁判官

①岡口基一『要件事実マニュアル第4巻 消費者保護・過払金・行政・労働(第7版)』(2024、ぎょうせい)707~708頁

■立案担当者見解

■学説

①菅野和夫『労働法(第12版)』(2019、弘文堂)498~500頁

■弁護士・その他

①渡辺輝人『最新テーマ別[実践]労働法実務5 残業代の法律実務』(2024、旬報社)71~72頁


富永

2026年4月28日火曜日

【労働問題・コラム】労働時間の範囲④ 手待時間

 【事例】田口運送事件

 運送会社である株式会社Yに雇用されるトラック運転手Xは、出荷場や配送先での待機時間が生じることがあり、トイレに行ったり、コンビニで買い物に行く等してトラックから離れていた。Xの手待時間について、労働時間に含まれるだろうか。


【解説】

 作業と作業との間の待機時間である手待時間は、使用者の指示があれば直ちに作業に従事しなければならない時間であり、労働時間に含まれる(昭和33年10月11日基収6286号)。

 【事例】では、Xらトラック運転手の労働実態を詳細に事実認定したうえで、使用者であるYの指揮命令下に置かれていたものと評価し、実労働時間と認定された。




【発展】※専門職向け


【判例・裁判例】

■最高裁判所

■高等裁判所

■地方裁判所

①横浜地相模原支判平成26年4月24日・判時2233号141頁(事例)


【参考文献】

■調査官解説

■条解・コンメンタール等

■裁判官・元裁判官

①岡口基一『要件事実マニュアル第4巻 消費者保護・過払金・行政・労働(第7版)』(2024、ぎょうせい)707頁

■立案担当者見解

■学説

■弁護士・その他


富永

2026年4月24日金曜日

【労働問題・コラム】労働時間の範囲③ 居残り残業

 【事例】昭和観光事件

 株式会社Yの就業規則には、事前に所属長の承認を得て就労した場合のみを時間外勤務として認める旨の規定があるところ、Xは所属長の承認を得ずに居残り残業を行った。Xの居残り残業について、残業代は請求できるだろうか。


【解説】

 残業について承認制をとり、実施には届出をさせない(あるいは恒常的に残業が発生するので届出する暇がない)事業所の例がしばしばある。しかしながら、労働時間制は客観的に定まるものであり、届出がないことは残業の存在を否定することに必ずしもならない。




【発展】※専門職向け


【判例・裁判例】

■最高裁判所

■高等裁判所

■地方裁判所

①大阪地判平成18年10月6日・労判930号43頁(事例)


【参考文献】

■調査官解説

■条解・コンメンタール等

■裁判官・元裁判官

■立案担当者見解

■学説

■弁護士・その他

①渡辺輝人『最新テーマ別[実践]労働法実務5 残業代の法律実務』(2024、旬報社)82~84頁


富永

2026年4月20日月曜日

【労働問題・コラム】労働時間の範囲② 早出残業

 【事例】福星堂事件

 和洋菓子の製造・加工並びに販売等を目的とする株式会社Yでは、所定終業時刻が午前8時30分とされていたが、Xは、午前4時台に出勤して早出残業することもあった。


【解説】

 単に遅刻しないために早めに出勤してタイムカードを打刻していただけの場合、早出残業とは認められない。また、そのような時間帯に多少の準備行為を行っていた場合でも、始業時刻前に行う必要のない作業である場合、早出残業とは認めない事例がある。




【発展】※専門職向け


【判例・裁判例】

■最高裁判所

■高等裁判所

■地方裁判所

①神戸地姫路支判平成28年9月29日・労経速2303号3頁(事例)


【参考文献】

■調査官解説

■条解・コンメンタール等

■裁判官・元裁判官

■立案担当者見解

■学説

■弁護士・その他

①渡辺輝人『最新テーマ別[実践]労働法実務5 残業代の法律実務』(2024、旬報社)77~78頁


富永

2026年4月16日木曜日

【労働問題・コラム】労働時間の範囲① 始業前・終業後の時間

 【事例】三菱重工業[会社側上告]事件

 株式会社Yでは、所定労働時間を午前8時から正午まで、午後1時から午後5時までとし、従業員であるXらは、①午前の始業時刻前に更衣所等において作業服及び保護具等を装着して準備体操場まで移動し、②午前ないし午後の始業時刻前に副資材や消耗品等の受出しをし、また、午前の始業時刻前に散水を行い、③午後の終業時刻後に作業場から更衣所等まで移動して作業服及び保護具等の離脱を行っていた。①ないし③の時間は、労働時間として認められるだろうか。


【解説】

 労働者が、就業を命じられた業務の準備行為等を事務所内で行うことを使用者から義務付けられ、又はこれを余儀なくされたときは、当該行為を所定労働時間外で行うものとされている場合であっても、当該行為は、特段の事情のない限り、使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができ、当該行為に要した時間は、それが社会通念上必要と認められるものである限り、労基法上の労働時間に該当する。

 【事例】では、①作業服及び保護具等の装着、②副資材や消耗品等の受出しや散水、③作業服及び保護具等の離脱が所定労働時間外で行うこととされていたが、判例①は、作業服のほか所定の保護具、工具等の装着を義務付けられ、これを怠ると懲戒処分を受けたり就業を拒否されたりし、また、成績考課に反映され賃金の減収にもつながる場合があること等を指摘して、①ないし③のいずれも労働時間に該当すると判断した。

 朝礼、体操、終礼も出席が義務付けられ、明示又は黙示の業務上の指示によるものであれば同様である。




【発展】※専門職向け


【判例・裁判例】

■最高裁判所

①最小判平成12年3月9日・民集54巻3号801頁(事例)

■高等裁判所

②大阪高判平成13年6月28日・労判811号5頁(京都銀行事件)

■地方裁判所

③東京地判平成24年8月28日・労判1058号5頁(アクティリンク事件)

④横浜地判令和2年6月25日・判時2491号83頁(アートコーポレーションほか事件)


【参考文献】

■調査官解説

■条解・コンメンタール等

■裁判官・元裁判官

①岡口基一『要件事実マニュアル第4巻 消費者保護・過払金・行政・労働(第7版)』(2024、ぎょうせい)707頁

■立案担当者見解

■学説

■弁護士・その他

①渡辺輝人『最新テーマ別[実践]労働法実務5 残業代の法律実務』(2024、旬報社)73~74頁


富永

2026年4月4日土曜日

【労働問題・コラム】労基法等の規範的効力

 【事例1】橘屋事件

 Xらと株式会社Yとの間の労働契約では、休憩時間を1時間とし、夏場は午前6時から午後5時までの10時間、冬場は午前6時から午後7時までの12時間の労働時間となっていた。Xらが就労すべき労働時間は何時間だろうか。

【事例2】

 株式会社Yは、就業規則に、「時間外労働に対する割増賃金は支給しない。」と規定している。従業員Xは、時間外労働に対する割増賃金を請求できないのだろうか。


【解説】

 労基法は、その設定する基準が労働契約内容に対し強行的な効力をもち(労基法13条前段)、かつ、契約内容を直接規律する効力をもつ(同後段)。前者を強行的効力、後者を直律的効力といい、あわせて規範的効力と呼ぶことがある。

 【事例1】では、1日8時間を超える部分が、労基法32条2項に違反している。そのため、労働時間に関する合意のうち、1日8時間を超える部分が労基法13条前段によって無効となり、1日8時間の労働契約となる。

 【事例2】では、割増賃金を支給しない旨の就業規則の規定が、労基法37条1項に違反している。そのため、当該規定が労基法13条前段によって無効となり、労基法37条1項で定める基準が労基法13条後段によって労働契約の内容となる。



【発展】※専門職向け


【判例・裁判例】

■最高裁判所

■高等裁判所

■地方裁判所

①大阪地判昭和40年5月22日・労民16巻3号371頁(事例1)


【参考文献】

■調査官解説

■条解・コンメンタール等

■裁判官・元裁判官

■立案担当者見解

■学説

①菅野和夫『労働法(第12版)』(2019、弘文堂)190~191頁

■弁護士・その他


富永