2026年4月16日木曜日

【労働問題・コラム】労働時間の範囲① 始業前・終業後の時間

 【事例】三菱重工業[会社側上告]事件

 株式会社Yでは、所定労働時間を午前8時から正午まで、午後1時から午後5時までとし、従業員であるXらは、①午前の始業時刻前に更衣所等において作業服及び保護具等を装着して準備体操場まで移動し、②午前ないし午後の始業時刻前に副資材や消耗品等の受出しをし、また、午前の始業時刻前に散水を行い、③午後の終業時刻後に作業場から更衣所等まで移動して作業服及び保護具等の離脱を行っていた。①ないし③の時間は、労働時間として認められるだろうか。


【解説】

 労働者が、就業を命じられた業務の準備行為等を事務所内で行うことを使用者から義務付けられ、又はこれを余儀なくされたときは、当該行為を所定労働時間外で行うものとされている場合であっても、当該行為は、特段の事情のない限り、使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができ、当該行為に要した時間は、それが社会通念上必要と認められるものである限り、労基法上の労働時間に該当する。

 【事例】では、①作業服及び保護具等の装着、②副資材や消耗品等の受出しや散水、③作業服及び保護具等の離脱が所定労働時間外で行うこととされていたが、判例①は、作業服のほか所定の保護具、工具等の装着を義務付けられ、これを怠ると懲戒処分を受けたり就業を拒否されたりし、また、成績考課に反映され賃金の減収にもつながる場合があること等を指摘して、①ないし③のいずれも労働時間に該当すると判断した。

 朝礼、体操、終礼も出席が義務付けられ、明示又は黙示の業務上の指示によるものであれば同様である。




【発展】※専門職向け


【判例・裁判例】

■最高裁判所

①最小判平成12年3月9日・民集54巻3号801頁(事例)

■高等裁判所

②大阪高判平成13年6月28日・労判811号5頁(京都銀行事件)

■地方裁判所

③東京地判平成24年8月28日・労判1058号5頁(アクティリンク事件)

④横浜地判令和2年6月25日・判時2491号83頁(アートコーポレーションほか事件)


【参考文献】

■調査官解説

■条解・コンメンタール等

■裁判官・元裁判官

①岡口基一『要件事実マニュアル第4巻 消費者保護・過払金・行政・労働(第7版)』(2024、ぎょうせい)707頁

■立案担当者見解

■学説

■弁護士・その他

①渡辺輝人『最新テーマ別[実践]労働法実務5 残業代の法律実務』(2024、旬報社)73~74頁


富永

0 件のコメント:

コメントを投稿