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2024年4月25日木曜日

怪鳥会の春遠征(3)武奈ヶ岳(2)

 

 武奈ヶ岳をくだる。まずは登ってきた御殿山方面が見えている。


 すぐの分岐を南へ。コヤマノ岳、比叡山方面が見えている。
 登りは武奈ヶ岳の背後(西)から登ってきた。帰りは琵琶湖方面(東)へくだる。


 いまの季節、コブシが咲いている。写真ではまったく伝わらないが、街路樹のように登山道沿いに林立していた。ぜいたく。



 武奈ヶ岳というだけあって、ブナ林がひろがる。なかにはこんな樹も。妖怪なのか怪獣なのか。樹に姿を変えられたというかんじ。


 ここかしこで琵琶湖がみえる。残念ながら霞んでいる。だが、きょう宿泊する予定の近江舞子の内湖は見えている。



 イワウチワ。葉がウチワのようであるから。かれん。花言葉は春の使者。


 オオカメノキ。葉がカメの甲羅のようだから。別名ムシカリ。葉が虫の大好物だから。


 クロモジ。和菓子に添えられている楊子でおなじみ。


 コブシもそうだったが、クロモジも群生がすごい。花に酔いそうだ。 


 とか思っていたら、アセビ。馬酔木と書く。馬がこれを食べると酔うから。人が花に酔うなら、馬も花に酔うのか。


 八雲ヶ原の池ではアカハライモリがたくさん。恋の季節。カップルや2匹で彼女を奪い合っている連中もいた。この子はひとり孤独をかこっている。


 シャクナゲ。色が濃い。そういえば登山口の明王院でも咲いていた。ようやくおなじ標高までくだってきたということだ。


 さらにくだるとミツバツツジ。名前どおり葉が三つ。


 登山口ふきんまでくだると、ヤマザクラ。ことしのサクラの見納めだろうか。やはり春山はいい。

2024年3月18日月曜日

九千部山(2)深い森と僧侶の心とリップ・ヴァン・ウィンクル

 




 高速鳥栖ICをおり、佐賀県道31号を西へ。JR肥前麓駅あたりをすぎ、立石バス停の分岐を右へ入る。沼川河川プール駐車場で車をおり、御手洗の滝をめざして歩きはじめる。

ウグイスが鳴いている。とても上手だ。人間とおなじく上手い下手がいる。とくにここは谷間のエコーが効いている。その効果をわかっていて、ここで鳴いているのだろうか。

川沿いに遡上すると、尾根にとりつく。その先は鳥の鳴き声も聞こえず、深い森がひろがっている。

他の登山者とも出会わない。ほんとうに静かな山旅だ。気候もさいてき。登っていても汗をかかず、ときおり涼しい風が吹いている。

深い森の奥に、志半ばで美女の幻に負けた僧侶の心も隠されているだろうか。

石谷山に着いた。ここらあたりはアカガシの森が広がっている。樹齢100~200年とおぼしき大木もちらほらする。アカガシは常緑樹で、緑の葉をしげらせている。

さらに進むと、落葉した高木があらわれる。ブナ、ナラ、リョウブなどの落葉樹。九千部の山頂付近は、ほぼ落葉樹におおわれ、いまはまだ葉を落としたまま。

花の季節も未だ。藪ツバキが咲いているぐらい。あちこちでミヤマシキミが赤い実をつけていた。ある株は実とともに花のつぼみもかかえていた。山の春もそこまで来ている。

帰りにアカガシの大木の根元で休憩した。静か。寝てしまいそうだ。みなに置き去りにされて、目覚めると20年経っていたということになりそう(リップ・ヴァン・ウィンクル)。

2022年12月19日月曜日

雪の宝満山(2)

 





 宝満山に登るといえば、ほとんどのかたは登山口の竈門神社と山頂を往復されるだけ。しかしこれはもったいない。宝満山の魅力はそこから先にあるのだから。

きのも書いたが、竈門神社から山頂まではほぼ常緑樹かスギ・ヒノキの林である。雪がついても、重苦しい感がある。

しかし山頂をすぎると、ブナなど落葉樹やクリスマスツリーであるモミの樹があらわれる。

1枚目の写真はブナの巨木。200年以上は経っているだろう。ブナはクネクネとしているが、折れにくく豪雪に強い。秋田白神山でブナの森がひろがっているのはそのせいである。ただし、建築材には向いていないため、伐採が進んでしまった。

2枚目は雪化粧をした稜線の道。いまにもウサギかなにかの小動物があらわれ、物語がはじまりそうだ。

3枚目は霧氷。これも落葉樹ならでは。葉がなく枝だけなので、霧氷が発達しやすい。福岡市街をバックにそこだけ日が射し輝いた。

4枚目は宝満山の山頂から仏頂山方面をのぞんだもの。おまんじゅうのような白いシルエットが美しい。

5枚目は・・・。

2022年12月18日日曜日

雪の宝満山~雪山事始め~

 



 昨日は雪の宝満山に登った。今季初の雪山。いつもと違う、美しい世界を堪能することができた。

ほぼ終日曇りで、ときどき雪が降りしきった。山頂付近では晴れ間、青空もあった。青空と霧氷という青と白のコントラストが美しい。

竈門神社裏からの登りは基本的に常緑樹やスギ・ヒノキの林である。暗い。

山頂から先はブナ林が点在している。いまは葉を落とし、樹氷をまとっている。枝振りとあいまって、美しい。

こんな日に登っている人いるの?

います。この日、出会った人だけでも50人はくだらない。女性が40%というところか。雪に興奮しているおじさん、おばさんがいっぱいだ。みな雪山が好きなんだな。

2022年4月19日火曜日

傾山遠征(3)ー下山

 





 傾山のセンゲン尾根へ下ること1時間、九折越に。前回とちがい、明るいうちにたどり着くことができた。キャンプ場と無人小屋がある。誰もいない。この日は終日、他の登山者に会うことはなかった。

まずは水場へ向かう。宮﨑方面へくだるくだる。こんなに遠かったかな。ようやく見つけた。ななんと水場は涸れていた。試行錯誤のすえ、わずかな流れにパイプを挿して、なんとか水を確保することができた。煮沸必須である。

小屋に入る。誰もいない。3人で三隅をぜいたくに占拠する。灯りはなく、持参のヘッドランプだけが頼りだ。お湯を沸かし、夕食づくり。荷物軽量化のためレトルトのドライカレーと豚汁、そしてお茶。

食後はなにもすることがないので就寝。エアマットを膨らませ、寝袋に入る。明日の予想気温は2度だったので、着込めるだけ着込む。

前回来たときは、シカの群れが周辺を駆け回り、ひづめの音が響いていた。シカの食害対策が進んでいるせいか、今回、シカの気配はない。

その代わり雨だれの音が大きく響く。夜半、風が強くなり、山を鳴らした。

目が覚めると0時過ぎ。窓からは月明かりが煌々と照らしていた。明日は予報どおり、風は強いものの晴れるようだ。最近の天気の的中度はすごい。

翌朝、祖母山へ向かうかどうか議論する。気温2度、風速18メートル。体感温度はマイナス16度である。稜線上の風と寒さは厳しく、低体温症が心配された。われわれは大事をとって下山することにした。

下りは九折コース。コースタイムは2時間35分。稜線上は風がきつかったが、ほどなくおさまった。右手の尾根上にヤマザクラ、アケボノツツジが咲いている。

さらにオオカメノキも花をつけている。きのうはまったく展望がきかなった。きょうは傾山の坊主頭が望める。ヤマザクラ越しの撮影。ブナの新緑がまばゆい。苔も新芽だろうか、文字どおりモスグリーンに輝いていた。

山が深い、谷も深い。浸食がすすみ、勾配もきつい。油断すると転げ落ちそうだ。右手ふかく谷川の音が響く。下山するにつれ、それが近づいてくる。

この日、登ってくる登山者は3グループ4人だった。彼らの安全を祈る。福岡から遠いし厳しいので、多くの人が登れる山ではない。玄人向きの山である。

山懐の深さに比例して、わが心の奥深くまで沁みた。来年もまた来たいものだ。


2021年11月11日木曜日

九重山黒岳原生林の紅葉狩り(2)

 


 男池から風穴まで片道2時間、往復4時間のコースタイムである。しかし途中、紅葉をめでたり、写真をとったり、休憩や食事をとったりで、1.5倍の6時間くらいの時間をみておきたい。

その週の水曜日、刑事事件の法廷帰りに裁判所のまえで左足首を捻挫してしまっていた。翌日は痛みで革靴がはけず、草履で通勤しなければならなかった。それから4日後のことであり、最後まで歩けるかどうか不安があったが、ツアーガイドでもあるし、無理して参加した。

男池を出発すると、あとはもうずっと原生林がつづく。原生林の極相はブナやミズナラとなるので、基本的な色調は黄色や茶色である。いわゆる黄葉。

赤いのはコミネカエデである。京都嵐山のように植林されたわけではないから、全山真っ赤になることはない。ところどころに赤い点景がある。それが貴重で、慕わしい。

中間地点は、ソババッケである。左に黒岳、右手は手前が平治岳、奥が大船山という、登山道の交差点である。右に登れば大戸越があり、そこからさらに右に登れば平治岳、まっすぐ下れば坊がツル、左に登れば北大船山である。ソババッケをまっすぐすすめば、目的地である風穴がある。黒岳へは風穴から左手の急坂を1時間登らなければならない。

ソババッケはむかしソバ畑だったらしい。それがナマっての名前の由来である。昔の人は、このような山奥にまで畑をつくり、貧しさとたたかっていたのだ。感慨ぶかい。去年の土石流で荒れてしまったものの、いまでも紅葉の絶景ポイントである。

紅葉を愛でるのに、やはり太陽の光はかかせない。くもりでも紅葉狩りはできるだろう。が、日の光をあびて輝く紅葉は格別だ。葉がキラキラ輝くと、心もキラキラする。

太陽の光があるということは、青空もあるということだ。曇天のグレーとでは紅葉がひきたたない。晴天と紅葉のコントラストが美しい。雲の白、空の青、紅葉の赤、黄葉の黄、4色の配合がまことに絶妙で、美しい。

感動で血流がよくなったせいか、左足首の痛みも遠慮して襲ってこなかった。

2021年10月28日木曜日

能郷白山登山記ー猿楽ことはじめ

 







 土曜の朝、大垣の天気は快晴。・・・だったが、天気予報をみていると、福井のほうの山には雨がふると言っている。あれれ。どうしよう。

きょうの目的地である能郷白山(のうごうはくさん)は、1617mの二百名山である。百名山の白山とは別ものだ。

岐阜と福井の県境に位置している。むこう側は福井県の越前大野である。日本百名山の荒島岳や福井恐竜博物館にほどちかい。天気予報どおりであれば、少なくともむこう側は雨だ。

南のほう、御在所岳に目的地を変更する案も頭をかすめたが、当初の計画どおり能郷白山を目指すことにした。

電車の時間まで1時間ほどあったので、朝食後、大垣城まで散歩した。車もすくなく、散歩をするにはよい街だ。散歩をしている人も多い。

目的地までは樽見鉄道を利用する。といっても九州人にはわかるまい。岐阜県は山国だ。山の間を渓谷を削り、大きく3つの川が流れ、それにそって鉄道がはしっている。

東から順に、JR高山本線、長良川鉄道、そして樽見鉄道だ。JR高山本線は飛騨高山を経て富山に至る。詳しくは明日。

長良川鉄道は郡上八幡を経て終点、北濃へ行く。終点の北に、二百名山の大日ヶ岳があり、いちど乗ったことがある。

樽見鉄道は、大垣駅内にホームがあることからもわかるとおり、もとは国鉄で、いまは三セクになっている。かつてはセメント輸送の要だったようだが、トラック輸送に代わられ、存続が危ぶまれている。

そのため、イベント列車などの工夫がこらされ、行も帰りもカラフルな列車だった。車両は一台で、もちろんワンマンカーだ。

大垣駅をでると、さっそく西に伊吹山が美しい姿を現す。他の山が緑におおわれた円錐形であるのに対し、石灰岩がむきだしのカクカクした姿だ。

その北側には山並みが続いている。真北には能郷白山が望めるはずだが、どれかは特定できない。春になれば、最後まで雪が残るらしい。そのころであれば、特定できるだろう。

途中、左手にやはり石灰岩の採掘をしている山があった。かつてセメント輸送をしていたのは、ここからだろうか。

綾部をすぎると、根尾川沿いになる。とても美しい川だ。列車は川をなんども渡って上流をめざす。

神海(こうみ)をすぎると、乗客はぼくだけになった。川幅はせまくなり渓谷になる。鉄橋をわたる間、美しい川が垣間見える。アユ釣りがさかんだそうだ。帰りに、釣りをしている人を見かけた。

終点の樽見に着いた。降りようとすると、運転手がビクっとした。乗客がいるとは思わなかったようだ。廃線が危ぶまれるはずだ。

駅前にタクシーはいない。甘かった。いちおう鉄道の終点駅であるから、タクシーの一台くらいは待っていると思ったのに。電話すると10分ほどお待ちください。が、20分待った。

運転手は若く、以下、運ちゃんと呼ぼう。会話がはずんだ。飛騨だけに林業が盛んなんだそうだが、花粉症に悩まされているそうだ。山頂付近は雪になっているかもしれないと脅された。うひゃ。

困ったことに、登山口まで歩いて1時間ほど手前の地点で降ろされた。林道が荒れて、ロープがはられ、車では入れないそうだ。

しまった。山と渓谷社のガイドブックにしたがい、往復のコースタイム5時間10分でギリギリの計画をたててきた。プラス往復2時間の歩きが入ると、帰りの列車に間にあわない。仕方がない。行けるところまで行って、戻ってこよう。

リサーチ不足だ。100名山のときは、こういうことはなかった。200名山ということで、甘く考えていた。

気もそぞろに歩き出す。雨が降り出した。傘をさす。日が差してきた。暑い。一枚脱ぐ。谷筋にでて、山から北西風が吹きおろしてきた。寒い。一枚着る。この日はずっとこんな感じだった。晴れては曇り、降ってはあがる。天気はめまぐるしく変化した。

かなり近くでシカが鳴く。キュイイイィィィーン。メスを求めるオスの鳴き声だ。とてももの悲しい。奥山に紅葉踏み分け鳴く鹿の声聞くときぞ秋は悲しき。ほんとうにそうだ。

ザックから熊鈴をとりだしてつけた。チリン、チリン。運ちゃんによると、昨日、駅近くの公園でクマが目撃されたそうだ。ニュースでも昨日、窓をあけて車のなかで休憩していたら、クマに襲われたと言っていた。熊鈴をつけると、シカ、カモシカや他の小動物にもあえなくなってしまうが、やむを得ない。

しばらく行くと、林道上に野生のサルが群れていた。熊鈴の効果なし。7,8匹か。親子連れもいる。自然との対峙だ。動物園でお目にかかるのとは違う緊張感がある。連中がその気になって襲ってきたら、大けがは免れまい。

写真を撮っていたら、逃げ出した。ほっ。うち一匹が樹上でこちらを窺っている。さらに近づこうとすると、慌てて逃げ出した。

ギャッ、ギャッ。鳥が鳴いている。ホシガラスのようだ。ホシガラスは高山で見かける。この程度の標高でもいるのか。疑問に思ったが、鳴き声、姿ともそのようだ。

たしかに林道は荒れている。落石がところどころ散らばったままになっている。さらに行くと水流に土をもっていかれて、岩がむき出しになっている。川に削られて、橋が無くなっているところさえある。車が入れないはずだ。

ガイドブックの登山口まで小1時間かかった。ふう。キュイイイィィィーン。またシカが鳴く。人影はない。心細い。

谷川にかけられた心細い橋を渡る。急坂を登る。また急坂を登る。その間、雨が降ったり止んだりする。傘をさしたり閉じたりする。傘にするか、レインウェアにするか、判断が難しい。下手にレインウェアを着ると、内側から汗で濡れてしまう。

急坂を登りきると、小尾根の稜線だ。ようやく1合目。ブナの林が美しい。

さらに登ると、左側からくる本尾根と合流する。2合目だ。標高1000mを超えた。一瞬、前方の峰が白くなる。雪が降ったのであろうか。落ち葉にもよく見ると、白いものがついている。

惜しい。猿がいたあたりで、しぐれていれば、名句を吟じることができたのに。

 初しぐれ猿も小蓑を欲しげなり

老ブナ坂にさしかかると、ブナの幹が太くなる。樹齢をすぎて枯れているのもある。枯れても造形美を感じさせる。しぶい。

登頂はともかく、前山までは行きたかったが、山中で予定していた5時間10分の半分の時間になったので、撤退することとした。リベンジを誓う。

帰り道で、またサルの群れにあった。おなじ群れだろうか。人数というか、サル数がふえている。二匹で遊んでいるのもいる。楽しそうだ。

そういえば、運ちゃんから問題をだされた。なぜ、能郷と呼ばれるのか。

村中に白山神社があり、そこで年1度、能と狂言が奉納される。能が奉納される郷だから、能郷なんだそうだ。4月13日。ちなみに樽見はうすずみ桜も有名。うまくすれば両方みることができる。

能楽のご先祖さまは猿楽だ。能舞台にもそう書いてある。なるほど、お前たちのご先祖さまが、われわれ人間のご先祖さまに、お能を教えてくれたのか。ありがとうよ。

※猿楽ことはじめは、杉田玄白著『蘭学事始』のもじり。言われなくとも分かる?すみません、読者を信じきれなくて。

2021年10月3日日曜日

白神岳登山記

 



 あこがれていた白神岳(1235m)に登った。山の名がとにかくかっこいい。白山やモンブランに比べ神装備である。

青森県と秋田県にまたがる白神山地の盟主。以前、事務所旅行で山麓を散策したことがあり、いつかは登頂したいと思っていた。

世界遺産。南の屋久島とともに日本で初めて登録された。屋久島は麓の亜熱帯から山頂部の高山帯まで植生の豊さが、白神山地はどこまでも広がるブナ林にみられる手つかずの自然が評価された。

ここより北に弘前の岩木山、さらに北には北海道の山々があるが、辺境感という点ではここが一番かもしれない。

最寄りはその名も白神岳登山口という駅。五能線のほぼ中央にある。五能とは青森県の五所川原と秋田県の能代の頭文字。同駅の近くには、手頃な宿泊施設が見当たらない。

能代にルートインがあったので、そこに前泊することにした。夜7時に駅におりたつと、駅前は真っ暗、ホテルまでは歩いて25分もあった。翌日の買い出しのため、コンビニまでさらに10分歩く必要があった。

翌朝4時30分起床、5時43分の始発に乗った。朝夕だけ4便ほどが走るローカル線だ。遅刻するとつぎは7時34分、待ち時間が半端ない。というか、この日の山行を断念せざるを得ない。ドアの開閉はボタン操作が必要、2両編成。なんと他に客はおらず貸切だった。

能代は晴れていたが北のほうがくは雨雲が蝟集していた。北から寒気が南下しているためだ。天気予報ではしだいに回復に向かうとのことだった。

列車が進むにつれ、白神山地が右手から迫ってきて、線路は日本海沿いに押しやられた。日本海の荒波が磯にうちよせ、車内まで潮騒が響いている。再雇用なのか運転手のせなかが小さく見える。

途中、サルに注意などの看板がでている。クマ除けの鈴は持参したが、サルの襲来までは予期していなかった。

白神岳登山口駅で降りる。6時39分。むろんぼくだけだ。やはり磯にちかく、波がうちつけてくる音がときおり聞こえる。とっても風情のある駅だ。標高ほぼ0メートル。

ここから山頂までの往復。標高差1235メートル、コースタイムは8時間35分。帰りの電車は15時19分発の予定。コースタイムどおりに歩いてギリギリの時間だ。これに遅れると、その次は19時58分までない。本日の宿まで行きつくことができなくなる。

線路と国道をわたると、登山口までのびる林道にとりつく。登山口までは40分の林道歩きだ。ツリガネニンジンがところどころに咲いている。

林道の終点、駐車場に着いた。車が5台だけ駐まっている。きょう山に入るのは10名前後か。みなもう出発したようだ。

歩き出すと雨が降ってきた。しばらくは傘でしのぐ。男性1名とすれ違う。さらに激しくふってきたのでレインウェアをはおる。天気予報ははずれた。帰りまでずっと雨はつづいた。

しばらく行くと登山口。ここから本格的な登山道がはじまる。すぐのところに神のごときブナの樹があった。40分で二股分岐だ。夫婦が休んでいた。

文字どおり、右の谷筋と左の尾根筋の2コースにわかれる。谷筋は徒渉が3度あり、木の橋や石を跳んで渡らなければならない。雨に濡れて危険と判断し、尾根筋をピストンすることにした。

しかしきつい。ステイホームのせいか、体力が落ちている。コースタイム8時間35分の道のりを歩ききるこができるか不安になる。雨も降っているし、途中でなんどか断念しようかと思った。

90分ガマンして登ると、マテ山分岐。ようやく尾根上にたどりついた。そこからは道はなだらかとなり、どこまでもブナの原生林がひろがっている。残念ながら、雨々、ガスガスだが。

ブナはスギやヒノキと異なり、曲がりやすく建築材として役にたたない。橅という漢字は役に立たないことからきている。しかし、保水力がたかく森のダムといわれる。雨のブナ林ではそれがよく分かる。

尾根上を90分行くと大峰分岐。山頂から発する稜線だ。左は有名な十二湖方面、右が山頂方面だ。雨はなお降り続く。20分ほどで山頂だ。途中、おじさんとすれ違う。きょう4人目だ。天気予報はずれましたな、おじさんもボヤいている。

山頂付近には避難小屋とトイレがある。避難小屋には3人ほどが雨をしのいでいた。名古屋から来たらしい。これで7人。山頂で証拠写真を撮り、休憩なしで下山を開始する。

最初にすれ違った男性とすぐのところで会う。ぼくが木陰で道をゆずろうと待っていたのに気づかず、ぎょっとされる。猟銃をもっていたら、撃たれたかもしれない。きょうは人が少ないという。地元のかただ。

大峰分岐までに若い男性とすれ違う。これで8人。大峰分岐をくだりはじめると先ほどの夫婦。こちらはカウント済み。あと登山口付近で男性とすれ違った。結局、この日お会いしたのは以上9人だった。

雨のおかげで雄大な景色は観ることができなかったが、静かな山旅を楽しむことができた。むしろ寂しいくらいだ。一部をのぞき、期待したほど紅葉は進んでいなかった。紅葉までもう1、2週間ほどかな。

最後にすれ違った男性は「下のほうにクマがいましたよ。」と注意してくれた。人が少なければ、クマと出会う確率が高くなる。注意しながら下ったが、クマの姿は見えなかった。ほっ。

帰りの車窓、日本海が日を受けてキラキラ輝いていた。なるほど、このあたりは真西に日本海があり、そこへ夕日が沈む。芭蕉も感動するはずだ。