2011年12月11日日曜日

『ヒア・カムズ・ザ・サン』



 昨年末は映画の封切りということもあって
 『ノルウエィの森』のことをいろいろと書いてました。

 だからというわけでもなく
 本年末は『ヒア・カムズ・ザ・サン』。
 やはりビートルズ(J・ハリスン)のナンバーですが
 若い人は知らないか?

 村上春樹さんの『ノルウェイの森』は四季のもつ「喪失と再生」力
 をベースに書かれていました。

 『ヒア・カムズ・ザ・サン』も、長かった冬に別れを告げ
 春が来たことを歓迎するという歌。

 ま、「冬来たりなば春遠からじ」(シェリー)
 年末の話題として春の到来を期待する話は許されるでしょう。

 同名のタイトルで、有川浩さんが
 小説を書かれました(新潮社)。
 文芸の世界は、無から作品を生じさせるというより
 誰かの注文に応じて制作されることが多かったのではないでしょうか。

 王朝の歌会の歌題から
 『笑点』の『大喜利』の出題まで…といえば飛躍があるでしょうか。

 人間のやることですから
 そのほうが自然です。

 『ヒア・カムズ・ザ・サン』の注文は
 以下の卵(着想)を雛(小説)に孵すというもの。

  「真也は30歳。
  出版社で編集の仕事をしている。

  彼は幼いことから、品物や場所に残された、人間の記憶が見えた。
  強い記憶は鮮やかに。何年経っても、鮮やかに。

  ある日、真也は会社の同僚のカオルとともに成田空港へ行く。
  カオルの父が、アメリカから20年ぶりに帰国したのだ。

  父は、ハリウッドで映画の仕事をしていると言う。
  しかし、真也の目には、全く違う景色が見えた…。」

 有川浩さんは、この卵から2とおりの雛を孵してます。
 『ヒア・カムズ・ザ・サン』と『ヒア・カムズ・ザ・サンParallel』。

 表題どおり
 後者はパラレルワールド。

 そうであれば、まだまだ幾通りものアナザー・ストーリーがあるはず。
 みなさまもひとつ孵されてはいかが?

 そうすれば
 オリジナルな輝かしい世界がつかめるかも?(カバー参照)。

2011年12月8日木曜日

『平成猿蟹合戦図』



 吉田修一さんを知ったのは
 どちらの作品だったか?

 仲間由紀恵さん主演でテレビドラマになった
 『東京湾景』(新潮社2003)だったか?

 そのころ薬害肝炎訴訟を提起。
 東京での会議の際、モノレールのなかで読んだ記憶が。

 それとも芥川賞を受賞した『パークライフ』(文藝春秋2002)
 だったか?
 
 これも東京・弁護士会館での会議がはじまる前の時間
 日比谷公園で読んだ記憶が。

 それから、『最後の息子』(文藝春秋1999)
 『熱帯魚』(文藝春秋2001)

 『パレード』(幻冬舎2002)
 『日曜日たち』(講談社2003)

 『ランドマーク』(講談社2004)
 『7月24日通り』(新潮社2004)

 『初恋温泉』(集英社2006)
 『悪人』(朝日新聞社2007)
 
 『静かな爆弾』(中央公論社2008)
 『元職員』(講談社2008)

 『さよなら渓谷』(新潮社2008)
 『横道世之介』(毎日新聞社2009)

 こうして並べてみると、伊坂幸太郎さんや奥田英朗さんほど
 意識的には追いかけていないけど、そうとう読んでますね。

 『7月24日通り』は大沢たかおさんと中谷美紀さん主演の
 映画(2006)もステキでした。

 妻夫木聡さんと深津絵里さんで映画になった
 『悪人』も記憶に新しい。このブログにも書きました。

 さていま書店に平積みされているのが
 『平成猿蟹合戦図』(朝日新聞出版)。

 タイトルから明らかなとおり
 有名な昔話を下敷きに。

 読む前はこのタイトルはよくないと思っていました。
 話の展開がみえみえな気がして、読む気を削ぐので。

 ところが途中これがなんで猿蟹?と安易な臆断を心地よく裏切られ
 最後はぴしゃっと猿蟹で着地を決めるという見事さ。

 たくみな話運びと
 しっかりとした構築性を堪能させられました。

 長崎、東京、秋田を結んで
 若者たちが政治の世界に挑戦する話。

 近年話題になった虎退治やクマ退治が
 ベースになっているのでしょうか?

 長崎出身の吉田さんの関心からすれば
 やはり「エリのクマ退治」のほうでしょうか?

 そうだとすると、きょうの話
 薬害肝炎提訴からはじまり、うまく着地なのですが。 

 (政治のリアルにもとづいているのでしょうが
 裏勢力との関係が無批判に書かれているのが唯一難点でしょうか)

2011年12月7日水曜日

「我が敵は我にあり」(3)



 というわけで、ふつうの暴力団関係事件は
 暴力団が暴行・脅迫など違法行為をしています。

 しかし今回はちがいます。
 暴力団員が借主だというだけです。

 家賃はきちんと支払っていますし、その他
 借主としての一般の義務に違反しているわけではありません。

 福岡県の条例に定めがあり、県警のホームページに名前が出ている
 それだけで物件から出て行ってもらえるのか?

 契約書を確認すると、借主が暴力団員と判明したときなど
 契約を解除することができるとあります。

 判例を調べてみると
 同種事案で契約の解除を認めたものがありました。

 なんとかいけそうなので
 お引き受けすることにしました。

 まずは先の契約条項にもとづき契約を解除するので
 建物を明け渡して欲しい旨の手紙を出しました。

 自分が脅されるのはイヤですが
 家主さんに矛先が向くのはもっと困ります。
 
 家主さんには自分で対応しないよう、なにかあったら
 すぐに警察を呼び、こちらにも連絡するよう指導します。

 しばらくして相手から電話がありました。
 おおむね退去するとの意向でした。

 なんどかやり取りし、なかなか退去の念書が来ませんでしたが
 ようやく条件もととのい、退去してくれることになりました。

 漱石の『門』じゃないですが、衝突は回避され
 一件落着です。

 正直、暴力団員を相手とする事案は
 気がすすみません。

 でも一般の方が自分で話をするのはどのような危害を
 くわえられるかわかりませんので、やむを得ません。

 みなさんが地域から暴力をなくそうとするかぎり
 お手伝いしていきたいと思います。

2011年12月6日火曜日

「我が敵は我にあり」(2)



 私が弁護士になったころは、暴力団員が一般民事事件に
 介入してくることがよくありました。

 月に一度くらいは暴力団員と「引き合い」になりましたし
 彼らも自分たちのことを「裏の弁護士」と呼んだりしていました。

 とくに弁護士がいない地域における「裏の弁護士」の需要は高く
 そんな地域の紛争では「引き合い」になることが多かったです。

 (この意味でも、地域に弁護士がいることが
 大切なんですね。)

 いったん「引き合い」になると、いわゆる夜討ち朝駆けで
 朝と夕方、必ず脅迫めいた電話がかかってきました。

 そうした心理的負担から
 事件数が倍増したような気持ちになりました。

 あるとき、養育費の請求について、妻が暴力団員に取立てを依頼
 夫からその交渉を頼まれたことがありました。

 まずは暴力団事務所へ来い!といわれるところ
 そこまではよう行きませんと正直に対応します。

 そのうえで、市内の老舗ホテルのロビーで
 交渉することになりました。

 行ってみると、白いエナメルの靴を履いたいかにもという方々が
 ずらりとソファに並んでいます。

 喫茶室に行き、コーヒーを注文しますが
 手もとが震えるといけないので、飲めません。

 店員のひとたちも
 気の毒そうな目で見ています。

 相手方の要求は、養育費月3万円、年間36万円、20年弱分700万円
 を一括で支払えというもの。

 依頼者にそのようなお金はありませんし、養育費は子どもの権利なので
 一括して支払っても後に子どもからの請求を拒絶できません。

 それで、月々3万円の支払いしかできない
 と頑張ります。

 しばらく押し問答がつづいたのち
 しゃあないなぁと分割払いで話がつきました。

 2,3か月してから、また先方から電話
 元依頼者(夫)が支払いを怠っているとのこと…。

 やむなく先方に代わり、元依頼者にたいし
 ちゃんと支払うようにと厳しく注意する電話をしました。

 なんか暴力団員の手先となって
 取立てをしている気分に。

 こうしてそれから2年くらい、滞るたびに
 元依頼者に電話をしたのでした。

 2年たって暴力団員の電話はなくなりましたが
 元依頼者がきちんと支払いを続けたわけではなさそう。

 そのころ、有名な広域暴力団どうしの抗争があって
 自分の身が危なくなり、取立てどころではなくなったのでしょう。

 その後、暴力団対策法が制定されたこともあり
 暴力団員が一般民事事件に介入してくることは激減しました。
 
 それでも時々はあります。
 最近は、いわゆるヤミ金(闇金融)事件がおおいですね。

 違法な金融業、違法な高金利、いずれも犯罪
 でもそんなところから借りてしまう人にもスキがあります。

 交渉で解決することがほとんどですが
 ときにいつまでも引きずることがあります。

 交渉で解決しないときは
 刑事事件として対応するしかないです。

 いちばんは、このような人たちと一切関わらないことですね。
 (あまりにまっとうなまとめですみません。)

2011年12月5日月曜日

「我が敵は我にあり」



島田紳助さんが暴力団との交際を報じられて
芸能界を引退しました。

別に引退までしなくていいんじゃないの?という意見の人は
これまで暴力団に脅された経験のない幸せな人生だったのでしょう。

やはり一度でも暴力団に暴力をふるわれたり脅されたりした人は
当然のことと受け止めたことでしょう。

芸能界や放送業界が暴力団との関係を断ち切るということは
避けられないことだと思います。

よくある手法ですが、あるキャンペーンをおこなう際に
象徴的な事例をとりあげることがおこなわれます。

(そのようなキャンペーンをおこなって世論操作をすることの
是非はここではおきます。)

島田紳助さんの事件も、誰かが一罰百戒的な効果をねらって
演出したのかもしれません。

紅白出場に当たり、芦田愛菜ちゃんに、暴力団とは関係ないと
誓約書を書いてもらうのも、ま、そういうことでしょう。

と、対岸の彼女の対岸の火事と思ってブラウン管をながめていたら
此岸まで火の粉がとんできました。

2件の貸家オーナーさんから、自分の店子が暴力団関係者なので
貸家から立ち退きを求めたいと相談があったのです。

オーナーさんたちがそう考えられた経緯は
こうです。

福岡県でも暴力団排除条例を制定し(平成22年4月施行)
1 暴力団の排除に関する基本施策

2 青少年の健全な育成を図るための措置
3 事業活動における禁止行為

4 不動産の譲渡等に関する遵守事項
を定めています。

これにより、暴力団排除協定・措置として、暴力団構成員が
事業経営に参画していることを自治体に通報、HPに公表。

これをマスコミが報道しますから
事実を知った大家さんがビックリして相談に来られます。

不動産の譲渡等に関する遵守事項のなかに
暴力団事務所としての使用が判明したときは解除に努める、とも。

大家さんとしては
自分の物件から暴力団を「排除」せざるを得なくなるわけです。

(すみません。始業時間になりました。続きはまた)

※本稿の表題は島田紳助さん作詞曲のタイトルより

2011年12月4日日曜日

レスレス? by.離婚事件にも取り組む福岡の弁護士



 先日の「セックスレス?」の記事に対し
 たくさんのレスをいただきました。

 ありがとうございます。おかがさまで
 「レスレス」にならずにすみました。

 でもま、反応するしないにかかわらず
 夫婦とはなにか?考えさせられますよね?

 パリAFP時事の記者をはじめ、これを援用した日本の時事通信や
 ヤフーニュースの【こぼれ話】の担当者もそう感じたはず。 
 
 わがブログただ1人にして最強のコメンテーター
 シドニー小林さんからもレスをいただきました。

 おひさしぶりです。いつもありがとうございます。
 人生の年輪を感じさせるコメントです(上記記事のコメント欄参照)。

 匿名希望の主婦のかたからもいただきました。
 これまたひさしぶり。

 こんな記事に反応したら、自分とこがセックスレスと疑われるのでは?
 などという懸念を乗りこえての勇気あるレスに感謝します。

 なかには、ヤフーニュースが流れた時点でこの記事を読み
 私がブログに書くだろうと読んでいたというレスもありました。

 あはは。
 わかりやすくてすみません。

 これもまた広い意味でもコミュニケーションですかね?
 話す前から話す内容が判っているのだから、かなり高度です。

 これくらい互いのことが分かりあっていれば
 セックスレスにはならないのでしょうが…。

 コミュニケーションとセックスは
 深い関係にあるようです。
 
 村上春樹さんの『おおきなかぶ、むずかしいアボガド』のなかにも
 そんなエピソードがあったとおもいますが。

 逆にそんだけコミュニケーションがしっかりしていれば
 べつにセックスレスでも問題にならないということもあります。

 そういう意味では
 「コミュレス」「レスレス」こそが問題なのかも?

                ちくし法律事務所 弁護士 浦田秀徳

2011年12月1日木曜日

セックスレス? by.離婚事件にも取り組む福岡の弁護士



 ヤフーニュースの【こぼれ話】に
 フランスの離婚事情に関する記事がでていました。

 「セックスしなかったと夫に妻への賠償金支払いを命令」
 という記事。

 時事通信 11月30日(水)14時36分配信によるもの。
 もとはパリ29日AFP時事。

 数年間、妻とセックスをしなかった夫に対して
 結婚生活の義務を果たさず、妻の欲求不満に対して賠償責任がある

 として、1万ユーロ(約104万円)の支払いを命じた。
 「結婚した2人の間の性的な交渉は互いの愛情の表現であり

 かつ結婚によって生じる義務の一部であるという意味において
 妻の期待は正当である」。

 妻にはセックスのない結婚生活で被った苦しみ
 に対する賠償を受ける権利があると認めています。

 この夫婦はともに51歳。1986年に結婚して子供を2人もうけ
 2009年1月に離婚。

 夫の側の反論は、健康問題と長時間の労働によって
 セックスをする機会を奪われたというもの。

 これには、妻と親密な関係を持つことを完全に不可能にするほどの
 健康上の問題が証明されていないとして退けられています。

 なるほどね~やっぱフランスやね~。
 などと思ってはいけません。

 日本にもあります、こんな判決。たとえば
 京都地裁の平成2年6月14日判決(判時1372・123)。

 昭和62年6月に見合いをして、昭和63年4月に結婚。
 結婚当時、妻は35歳、夫は44歳で、いずれも初婚。

 夫は、新婚旅行中も、同居中も妻に指1本触れず
 性交渉を求めたこともなかった。夫婦の会話もなし。

 これに対し、裁判所は、婚姻生活が短期間で解消したのはもっぱら夫のみに
 原因があるとして500万円の慰謝料の支払いを命じています。

 セックスレスの「真の理由については
 「判然としない」とされています。

 なお、この慰謝料はわれわれの感覚としてやや高額ですが
 家具等の購入費が約450万円がムダになったことなどが考慮されたよう。

 時事通信やヤフーニュースがわざわざフランスの離婚事情を報じたのは
 「日本とちがう。フランスのほうが進んでいる」とおもったからでしょう。

 でも日本の裁判所のほうがずっと進んでいます。
 (そんなとこ自慢してどうする?って感じですが)

 民法には、「配偶者に不貞な行為があったとき」は裁判上の離婚原因
 となると明記されています(770条)。

 でもセックスレスが離婚原因になる、あるいは、不法行為になるとは
 明記されていません。

 でも、ま、「常識」の範囲内のことなんでしょう。あるいは、「夫婦は
 同居し互いに協力し扶助しなければならない」(752条)の一部か?

 わたくしも2,3度手がけたことがあります。
 原因はいろいろですが

 実は夫がゲイで
 そのカモフラージュのため異性と婚姻という悲劇もありました。

 草食系男子が増殖するなか、この種の紛争が増えていくのでしょうか
 それか、先の「常識」のほうが変容して

 「セックスレス?それがなにか?」
 ーなんてなったりして?

                  ちくし法律事務所 弁護士 浦田秀徳