2026年4月10日金曜日

【不動産・かわら版】転貸OKなら民泊もOK?

 


★ 民泊利用で大迷惑? ★


 所有する戸建て住宅をサブリースのような形で転貸借。使用目的は「住居」。転貸は承諾する契約だった。


 しばらくして、近隣住民から騒音やゴミ出し方法などの苦情が殺到。どうやら転借人が勝手に民泊をしているよう。


 「転貸OKなんだから、民泊もOKでしょ?」と開き直る賃借人。

 契約解除して退去を求めることはできますか?


 いわゆる民泊法上、「生活」の本拠を宿泊「事業」に使うのが民泊。転貸OK、つまり居住用の又貸しがOKならば、民泊もOKだ、という言い分はとおるのでしょうか。


 裁判例(東京地判平成31年4月25日)は、特定人の住居使用と不特定人の宿泊使用とでは、使う人の意識等の面から、使い方に差異が生じるのは避けがたいなどと判示。


 「転貸OKなら民泊OK」という主張は認めませんでした。


 とはいえ、薄氷は踏みたくない。転貸をあらかじめ承諾する契約をするなら、「居住」使用目的を明確に定義する、民泊使用を禁止事項にあげておくなどの対策が可能です。


 お困りの際は、お気軽にご相談ください。


富永

2026年4月9日木曜日

【相続・コラム】相続放棄は認められるか -法定単純承認① 相続財産の処分(民法921条1号)

 【事例】

 被相続人Aは、平成10年4月27日に死亡した。相続人である妻B、長男C、二男Dのうち、AとはB及びCが同居していた。Aは生前、勤務先が倒産した際に保証債務の返還を求められていたことがあるが、昭和62年頃に返済したのを最後に請求はきておらず、Aの債務は完済したと考えていた。

 Aが死亡し、Bらが葬儀を行い、香典として144万円を受領した。また、A名義で預入金額300万円の郵便貯金があった。Bは、平成10年5月27日にその郵便貯金を解約したが、その解約金は302万4825円であった(香典とあわせると446万4825円)。

 Bらは、これらから、Aの葬儀費用等として273万5045円を支出したほか、同年6月に仏壇を92万7150円で購入したうえ、Bの希望で墓石を127万0500円で購入した。これらの合計が493万2695円となるところ、香典とAの郵便貯金の解約金を充て、不足分46万円余りはBらが負担した。

 その後、平成13年10月になって、信用保証協会から、被相続人A宛てに求償金合計5941万8010円の請求書が届き、A名義の多額の債務が残っていたことを知った。

 Bらは、Aの相続放棄をすることができるだろうか。


【解説】

 相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する(民法896条本文)。つまり、被相続人の資産(プラス)だけでなく、負債(マイナス)も承継してしまう。

 そのため、被相続人について負債超過が見込まれる場合等は、家庭裁判所で相続放棄の申述(民法938条)を行うのが通常である。

 もっとも、亡くなった直後は、死亡届、通夜・葬儀の準備・実施、その他各種手続等に追われ、被相続人の負債に気付かないまま、被相続人の預貯金を解約する等、相続財産を処分してしまうことは少なくない。

 民法は、「相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき」(民法921条1号本文)を法定単純承認の事由とする。つまり、相続財産を処分してしまうと、相続の単純承認をしたとみなされてしまい、相続放棄ができなくなる。

 民法921条1号の「処分」とは、財産の現状・性質を変える行為をいい、法律上の行為のみならず、事実上の行為を含む(家屋の取壊し等)。

 単純承認とみなされる法律上の処分には、貯金の解約、債権の取立て、不動産・動産・その他財産権の譲渡等が含まれる。

 他方、葬儀費用については、被相続人の貯金を解約し、葬儀費用にした場合に、単純承認とみなされる処分に当たらないとした裁判例がある(裁判例①、事例)。



【発展】※専門職向け

 上記裁判例は、相続放棄申述を却下した原審を取り消した即時抗告審の判断である。「相続放棄の申述の受理は、家庭裁判所が後見的立場から行う公証的性質を有する準裁判行為であって、申述を受理したとしても、相続放棄が有効であることを確定するものではない。相続放棄等の効力は、後に訴訟において当事者の主張を尽くし証拠調べによって決せられるのが相当である。」とも判示しており、葬儀費用に充てさえすれば許されると安易に考えることには注意が必要である。


【判例・裁判例】

■最高裁判所

■高等裁判所

①大阪高決平成14年7月3日・家月55巻1号82頁(事例)

■地方裁判所


【参考文献】

■調査官解説

■条解・コンメンタール等

①潮見佳男『新注釈民法⒆ 相続⑴(第2版)』(2023、有斐閣)615~624頁

②能見善久、加藤新太郎『論点体系 判例民法11 相続(第4版)』(2024、第一法規)234~239頁

■裁判官・元裁判官

■立案担当者見解

■学説

■弁護士・その他


富永

2026年4月8日水曜日

太宰府万葉歌碑めぐり

 

 太宰府ロータリークラブは来年、50周年を迎える。記念事業や記念式典をおこなわなければならない。その実行委員長をおおせつかった。現在、実行委員のみなさんのご意見をまとめつつ、企画をねっている。

 記念講演は『万葉集講義』(中公新書)などの著書がある上野誠先生にお願いしているところである。あわせて、太宰府にある歌碑めぐりを企画している。

 わがクラブは創立10周年記念事業として、万葉歌碑を建立している。50周年の節目にそれらをあらためて、めぐってみようというのである。

 都府楼政庁跡前には、大宰府(むかしの役所は大宰府、いまの役所は太宰府)の長官であり筑紫歌壇の主である大伴旅人の歌碑がある。

 やすみしし我が大君の食す国は 大和もここも同じとそ思う

 律令官人である大宰師としてのたてまえの歌とされる。たてまえだけではつまらない。


 政庁跡の反対側には梅花の宴の巻頭歌がある。大伴旅人は山上憶良とともに筑紫歌壇を形成した。自邸に歌人官人を招いて梅花の宴をもよおした。巻頭は大弐紀卿の歌である。

 正月立ち春の来らばかくしこそ 梅を招きつつ楽しきを経め

 正月すぎて春が来たなら梅をみながら楽しく飲もうぜ 


 政庁の東、学業院跡には教科書で有名な山上憶良の子らを思う歌。

 瓜食めば子ども思ほゆ粟食めばまして偲はゆいづくより来りしものそまなかひにもとなかかりて安眠しなさぬ

 反歌

 銀も金も玉も何せむに 優れる宝子にしかめやも

 学業院跡にふさわしい親子愛。


 政庁の背後には四王寺山。かっては大野山とも呼ばれた。大伴旅人が妻を亡くした悲しみを山上憶良が詠んだ歌もある。

 大野山霧立ちわたる我が嘆く 息その風に霧立ちわたる

 夫婦愛の絶唱。ただし代作。大伴旅人も大歌人であるから自分でも詠めたはずだが、悲しみのあまり酔いつぶれていたのか。

【労働問題・コラム】就業規則の規範的効力① 最低基準効

 【事例1】朝日火災海上保険事件

 株式会社Yの就業規則には、退職時の本俸月額に支給率を乗じた額を退職金として支給する規定がある。Xらは、労使交渉の末、本俸引上額を退職金算定に入れないことを条件に、株式会社Yとの間で、賃上げに口頭で合意した。なお、就業規則は改定されていない。この場合、Xらは、賃上げ後の退職時本俸月額を基準とした退職金の請求ができるだろうか。

【事例2】野本商店事件

 株式会社Yの就業規則には、定期昇給は年2回定められた昇給率、賞与は年2回それぞれ基本給の半月分、1か月分と規定されている。あるときから業績が悪化し、就業規則とおりの定期昇給と賞与支給が行われなくなっている。従業員Xは、就業規則とおりの定期昇給を前提とした賃金請求や賞与請求ができるだろうか。


【解説】

 就業規則が定める労働条件は、法令または労働協約に反しない限り(労基法92条1項)、事業場の労働条件の最低基準として労働契約の内容を強行的・直律的に規律する(労契法12条前段・後段)。就業規則の「最低基準効」と称される。

 【事例1】において、Xが賃上げ後の退職時の本俸月額を退職金算定の基礎として計算した退職金の支払を請求した場合、請求は認められるだろうか。本俸引上額を退職金算定の基礎に入れないことを条件に賃上げの合意をしているのだから、請求は認められないようにも思える(実際、判例①は、退職金請求を認めた原審に対し、退職金算定の基礎に算入しない旨の黙示の合意が成立するとの主張の当否を原審が判断していないとして、破棄差戻しにしている。)。しかしながら、就業規則が改定されていない以上、最低基準効はなお有効なものとして存在している。そのため、就業規則の規定に基づくXの請求は認められる。

 【事例2】において、就業規則の最低基準効から、昇給した場合の差額賃金及び賞与の支払請求が認められることは、分かりやすい。ところが、裁判例②は、「昇給の実施をしないこと及び賞与の支給をしないことを暗黙のうちに承認していた、すなわち、黙示の承諾をしていた」として、請求を棄却するという判断をしており、学説(①)から批判されている。




【発展】※専門職向け


【判例・裁判例】

■最高裁判所

①最小判平成6年1月31日・労判648号12頁(事例1)

■高等裁判所

■地方裁判所

②東京地判平成9年3月25日・労判718号44頁(事例2)


【参考文献】

■調査官解説

■条解・コンメンタール等

■裁判官・元裁判官

■立案担当者見解

■学説

①水町勇一郎『詳解 労働法(初版)』(2019、東京大学出版会)179~180頁

②菅野和夫『労働法(第12版)』(2019、弘文堂)218~219頁

■弁護士・その他


富永

2026年4月7日火曜日

【刑事事件・コラム】量刑の傾向② 「建造物侵入又は住居侵入、及び窃盗既遂1件、前科なし」

 【相談例】

 大学生の息子が、SNSで闇バイトに手を出し、店舗に侵入して売上金を盗み、逮捕されてしまいました。刑務所に行くことになるのでしょうか。


【解説】

 集積された裁判例によって示される犯罪類型ごとの一定の量刑傾向は、直ちに法規範性を帯びるものではないが、量刑を決定するに当たって、その目安とされるという意義をもっている(最小判平成26年7月24日・刑集68巻6号925頁)。

 【相談例】は、建造物侵入、窃盗既遂1件という事案である。第一東京弁護士会発行の「量刑調査報告集Ⅳ」及び「量刑調査報告集Ⅴ」で、「建造物侵入又は住居侵入、及び窃盗既遂1件、前科なし」を条件として得られる量刑分布は、令和4年法律第67号による改正前の刑法下での懲役刑で、懲役1年から2年10月に分布し、ピークは懲役1年6月というものである。そのうち、懲役2年10月の1件を除き、懲役1年の2件、懲役1年4月の3件、懲役1年6月の19件、懲役2年6月の1件のすべてで執行猶予となっている。



※現在は、拘禁刑に改正されている。


富永

2026年4月6日月曜日

薬害肝炎原告団総会からの由布岳登山(2)

 

 由布岳登山はふつう東峰(1580m)に登って終わりである。が、この先、双耳峰のもう一方である西峰(1583m)まで火口縁を周回するルートがある。お鉢めぐりという。ときどき死者もでる危険なコースである。

 もちろん、われわれはこれに挑戦した。時計回りが一般的とされるが、反時計回りに行く。東峰山頂からいきなり急な岩場を下る。


 火口縁の稜線を東へ向かう。登山道には雪が残っていて滑りやすい。前方に小ピークが2つ見えている。

 手前の小ピークの左肩に一枚岩がみえている。このあとあれを乗り越さなければならない。その後、奥の小ピークに登り、左側の急斜面を降りることになる。


 振り返ると東峰。こちらからはドーム状になっている。


 火口を隔てて向こう側は西峰。屏風のようである。


 手前の小ピークの左肩、一枚岩をよじ登る。


 一枚岩を乗っ越す。高度感がある。滑り落ちれば大怪我を免れないだろう。


 東端の小ピークから下降縁を急降下。手前の登山者の右肩に最大の難所であるゴジラの背が見えている。


 ロープを使い、垂直に下降する。
 

 いよいよお鉢めぐりのハイライト、ゴジラの背と呼ばれる難所である。両側が切れ落ちている。危険。滑落すればただではすまない。

 ここまで来て、どうしても怖ければ、右側に迂回ルートがつけられている。どうしますか?と訊かれている。ここでももちろん、ゴジラの背を行くこととする。


 たしかに危険であるが、三点確保を守りさえすれば落ちることはない。三点確保とは両手両足のうち、一点だけをうごかし、他の三点はしっかり岩を確保しながら移動することをいう。


 左側に迂回しようとしているが、間違い。いかに高度感があるとしても、正面の岩の背を乗り越していかなければならない。


 ようやくゴジラの背を乗りきることができた。ふう。

【不動産・かわら版】雨漏り歴の説明義務は?

 


★ そんな話、聞いてない!? ★


 中古マンションの仲介。買主とともに複数回物件を内覧し、無事、売買契約が成立。


 ところが、引渡し1か月後に雨漏りが発生。どうやら、過去に雨漏り歴があったことを売主が隠して、物件報告書に「現在まで雨漏りを発見していない。」と記載していたよう。


 「虚偽説明だ!賠償しろ!」と息巻く買主。


 そんな話、聞いてない!?

 仲介業者の責任やいかに...


 不動産売買にあたって物件の情報収集は各当事者の自己責任といえど、信義則上の義務として、取引相手に対する説明義務が課される場合があります。


 物件報告書に雨漏り歴の虚偽記載をした売主の責任は当然。問題は仲介業者の責任です。売主の虚偽説明を知らなかったとしても、一応の調査すら尽くしていない場合には、仲介契約上の債務不履行責任を負う場合があります。


 裁判例(東京地判令和2年2月26日)では、マンションの管理組合に対して、修繕履歴や管理組合の総会議事録の開示を求める等の一応の調査を尽くした点を評価して、仲介業者を免責しています。


 では、どの程度の調査を尽くせばよいのか?

 漏れなく説明しますので、お気軽にご相談くださいませ。


富永